00:01
おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応技術大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生も、ネイティブスピーカーも、辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
ことわざの真逆の教訓
今回の話題は、英語のことわざ 真逆の教訓はやめて欲しい
という話題です。 これ何かと言いますと、これ本当は英語のことわざに全く限らないんですけれども、ことわざって
真逆の教訓と言いますかね。 反対することを言ってる。全く教訓になっていないっていうことがよくあるんですよ。
反対の意味のことわざっていうことですね。 例えば日本語で言いますと、急がば回れと言われには、善は急げっていうのもあるんですよね。
要するに急げと言ってるのか、それとも急ぐなと言ってるのかよくわからない。
2つともよく知られていることわざなだけに、特定のある悩ましい機会に出くわしたときに、急げばいいのか、急がない方がいいのか、
全く参考にならないということですね。両方あると。 他には、2度あることは3度あると言いますね。
だから3度目の正直とも言うわけですよ。 これはどっちなんだと。
さらに、終わり良ければ全て良し。 これはシェイクスピアからあったわけですが、日本でも非常に広く通用してますね。
一方ですね、始め良ければ終わり良しなんていう言い方もありますね。 それから、福水盆に帰らず。
怒ってしまったことは、もうしょうがないんだということですが、一方で、明日は明日の風が吹くなんていうわけですよね。
全く反対のことわざが同居していてですね、どっちが本当なのか。 これは古来から伝わる教訓、人生の知恵と言われますが、
その割にはですね、どっちを選べば良いのかということまでは支難してくれない。 これじゃ使えないじゃないかということですね。
英語のことわざの考察
これ私もずっと思ってたんですね。 ことわざって、だから使えないんだよなぁということですね。
これ、英語のことわざ、私好きなんですけれども、 いろいろ見るとですね、やっぱり同じことがあるんですよね。
しかも結構ひどいですね、言い方が。 英語のだけにと言いますかね。
ちょっといくつか挙げてみたいと思います。 今までいくつか述べた日本語のものと、きれいにパラレルですね。近いものもありますね。
例えば、All is well that ends well. 先ほど、シェイクスピアって言いましたが、これが転挙ですね。
終わり良ければ全て良し。 あるかと思えば、こんなことわざもあるんですね。
A good beginning makes a good ending. 最初が良いと終わりも良いんですよということですね。
これどっちなのということになります。
次、A little learning is a dangerous thing.
っていうことですね。 これは日本語では、生病法は大けがの元なんて言いますね。
少しばかり兵法を知っているが未熟である。
転じて物事に関する知識についてもらって、 ちょっと知っているって一番危ないんだって言い方ですね。
一方で逆のことわざもあるんです。
全然知らないよりは、ちょっとでも知っている方が、 やっぱり良いんだっていうことですね。
どっちなのよと、突っ込みたくなるわけですね。
次、An occasion lost cannot be redeemed.
これ、複数文に変えらずに近いと思うんですね。
一方で、Tomorrow is another dayというような、 楽観的な、明日は明日の風が吹くよというような、
まさに先ほど述べた日本語に対応するような、 対義のことわざですよね。
次、One is never too old to learn.
年は関係ない。学ぶのに年は関係ないっていうことなんですが、
一方で、You can't teach an old dog new tricks.
これ厳しいですね。かなりきついことを言ってますけれどもね。
反対のことわざです。
次、The tailor makes the man.
つまり、形が中身を作るんだということを 言いたいんだと思うんですね。
一方で、The cow does not make the monk.
というふうに、形があるからといって、 中身がそのまま伴うものではないよということで、
またこれ逆なわけです。
次です。Experience is a good teacher.
これ非常にわかりやすいことわざですよね。
これ人生の教訓として最ものねような気がするんですが、 一方でひねくれた逆のことわざもあります。
Experience is the teacher of fools.
ということですね。
まあ、経験だけじゃダメなんだ。
やっぱりちゃんと学ばないと、 ということを言いたいんでしょうかね。
なかなかこれ辛辣ですよね。
次。Love is a flower which turns into fruit at marriage.
恋、愛、恋愛ですね。
これは結婚においてゴールする、 成就するというようなことで、
非常にポジティブなんですが、
一方でMarriage is a tomb of love.
結婚というのは人生の墓場といいますかね。
大人の解釈の重要性
恋、愛の墓場ということなんですが、 人生の墓場という言い方もよくしますよね。
これ非常にネガティブですけれどもね。
両方のことわざがあります。
最後です。
Many hands make light work.
手がたくさんあれば仕事簡単になるよ、 ということなんですが、
一方でToo many cooks spoil the broth.
なんて言い方がありますね。
これあまり多いとダメになる、 という仕事もうまくいかないというような、
じゃあどっちなのよというふうに、
これ突っ込みがいがあるという、
対義ことわざの例をいくつか挙げてみました。
私もこれは日本語でも英語でも見るたびにですね、
じゃあどっちなんだよと。
ことわざというのはこれだから使えないんだと、
いうふうに思ってたんですね。
ところがですね、
このことわざから探る 英米人の知恵と考え方という本がありまして、
安藤邦夫氏による本で、
開拓者から2018年に出てるんですね。
これを読み進めて、
英語の対義のことわざみたいなものを見て、
なんだことわざ使えないな、 みたいな感じで読んでたんですね。
ところがですね、あるところで、
そのような考え方、
私もずっとそういう考え方できたんですが、
それは非常に野暮な考え方だという記述にあったんですね。
なんだなんだと思ったんですけれども、
ちょっと読み上げたいと思います。
さて、このように意味の正反対のことわざに出会うと、
割り切ることの好きな人は、
どちらかはっきりせよと言って不満に思うかもしれません。
あるいはことわざは昔の人が思いつきで言ったことだから、
非科学的で矛盾していて当たり前。
だからあまり意味がないと思うかもしれません。
しかしそれはことわざの何たるかをわきまえないものと言うべきでしょう。
確かにこれらは一見矛盾しているように思われます。
しかし何かを成し遂げようとする場合のことを考えてください。
はじめの段階では私たちは、
はじめが大事と言って覚悟を新たにしなければなりませんが、
終わりの段階になればその時にまた、
終わりが大事と言って気持ちを引き締めなければならないのです。
ことわざはそれぞれの状況のそれぞれの段階における知恵ですから、
決して矛盾しているわけではありません。
それぞれの段階に応じて重点の置き方が違っているだけであって、
どちらも真実なのです。
この部分を読みまして、私は何て今まで子供の発想をしていたんだ。
要するに大人の解釈が必要なんですね。
ことわざ感がこれで変えられました。
反対があって結構、それがまさに人生。
段階によってどっちを採用するかというのを自分で決めればいい。
ことわざに従うというよりもことわざを選ぶということなんだというふうに思ったんですね。
これは日本語の対比のことわざを学んだ時には分からないことでした。
そして同じように英語の対比のことわざもあるんだ。
結構同じだなと思って学んだ時も考え方は変わらなかったんですね。
ところがこの日本語と英語のことわざを比較して、
そこから違うところ、似ているところを抽象するような、
いわゆる対照言語学的な見方が必要だったということですね。
結論としましては、ことわざ、反義も含めてことわざを理解するには大人にならなければいけない。
逆に大人にならなければことわざは理解できないということかと思いました。
ではまた。