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おはようございます。英語の歴史を研究しています、慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題は、アメリカ英語の歴史と時代区分、です。
私は大学などで、英語の歴史、英語史の概論を担当して講義することが多いわけなんですけれども、
一般に英語といえばアメリカ英語であるという発想が非常に日本では広がっているわけですよね。
アメリカ人が話すアメリカ英語こそが英語である。もちろん知識としては、歴史的にはイギリスが発祥だということはわかっていても、
やはりメジャーなのはアメリカ英語であって、そのサブとして、歴史的には古いかもしれませんが、イギリス英語というのが元にある。
そういうふうに捉えている人の方が、今の日本では圧倒的に多いと思うんですね。
ただ、英語の歴史という言い方をしますと、当然イギリスの英語から始まって、
それが派生的にイギリスの植民地としてのアメリカに移植されて、少し変容してアメリカ英語になってという、
この流れ自体は歴史としてよく知られていることかと思うんですけれども、
やはり現代の感覚として、英語といえばアメリカ英語がアッパーハンドを握っているという意識が、
少なくとも世界中そうなんですけれども、日本ではその意識がとりわけ強いということがわかると思うんですね。
こうすると、英語の歴史という授業を設けますと、1年間通し、英語の始まりから現代まで描くとなると、
舞台は7、8割がイギリスなんですよね。最後の方になってアメリカ英語、アメリカが出てくるということなんですが、
受講する側の多くの人、日本人にとっては、
なんでこんなアメリカがメジャーだと思っているのに、こんな遅くに出てくるのかよというツッコミが入るわけですよね。
どうしても歴史が遅いので、英語史通しということで言うと、当然後半の最後のに出てくるというのは、
致し方がないことではあるんですけれども、どうもずいぶん待たされたということになるんですね。
時代で言うと、イギリス英語、いわゆる英語の歴史のスタートなんですけれども、イギリス英語に当然なるわけなんですが、
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これは449年というのが伝統的な英語史で言われていまして、ざっと1500年以上、1570年ぐらいになりますかね、実際には。
これぐらいの長さがあるのに対して、アメリカ英語の歴史というのは、通常1607年に始まるとされています。
この時に初めてイギリス人が、今のバージニア、ジェームスタウンです、具体的に言うと。
当時の国王の名にちなんで、ジェームスタウンと名付けられた植民地が初めて北米大陸にできたということで、この年をもって1607年なんですが、
英語史的にはアメリカ英語の始まり、つまりアメリカ英語の歴史の始まりということになりますので、これ高々400年ちょっとということになりますね。
1500年、1600年に近いものと比べてアメリカ英語の歴史は400数年ですから、4分の1の歴史ということで、英語史の通しを描こうとするとどうしても最後の方になるというのは仕方ないんですけれども、
今の現代としてはアメリカ英語の方が重要でしょうという社会的な地位とか重要性というのはもちろんよくわかりますね。
イギリス英語から始まる、449年から始まる伝統的な長い英語史と別個に1607年から始まるアメリカ英語の歴史というものも一つのジャンルとしてあっても良いのではないかというのは当然の流れですよね。
ここでアメリカ英語の歴史というのがありますし、アメリカ英語の400年ではありますが、この中での時代区分というのももちろん策定されるというか考えられるということになりますね。
時代区分の常としていろいろな区分の仕方があるんですけれども、一般的に非常に広く利用されているというか認知されているアメリカ英語、この400年余りの歴史には3区分があります。
この歴史ってだいたい3区分が大好きなんですよ。古代、中世、近代とかこういうのが多いんですけれども、このアメリカ英語の短い歴史、イギリス英語に比べれば4分の1しかない400年の歴史でもやっぱり3期に分かれるんですね。
この3っていうのがどうもバランスが良いということか、あるいは西洋のいわゆるキリスト教文化圏なので3に一体という発想もあるんだと思うんですが、3っていうのが非常に収まりがいいんですね。
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そこでアメリカ英語も一般的に3期に分かれる、こういうことが普通なんですね。
第1期、1607年のこのジェームズタウン設立ですね。初めてのイギリス北米植民地ということですが、この設立から1790年、つまり1607年から1790年というこの時期が第1期とされています。
この1790年って何の年かと言いますと言語的というよりは社会的政治的です。ご存知の通り1776年に独立宣言が出されたんですが、これが最終的にアメリカ全州によって批准された年が1790年ということで、ある意味では象徴的な年としてですね。
ここから真の意味でアメリカ合衆国の始まりと。それ以前はイギリスの植民地ということで、この1607年から1790年、これが第1期ということになります。
英語的には、英語そのものとしてはですね、この時期第1期はイギリス英語とほとんど変わりないと言っていいですね。
イギリス英語はそのままアメリカに移植されたと。もちろん完璧100%というわけではなく、そのアメリカに移った後に多少の変化はあったとしても、事実上と言いますかね、大きく国としてはイギリス英語とイコールであると考えても差し支えないぐらいアメリカ植がまだほとんど出ていない時代。
これを第1期と言います。早々期ですね、アメリカ英語。そして第2期、ここで初めてですね、アメリカ英語っぽさが出てくるという時期になりまして、この第2期は1790年から始まって1920年という年でくくることが多いです。
この130年ぐらいの時間ですね。ただこの時期のちょうど真ん中ぐらいに劇的な事件が起こります。1860年代前半の南北戦争ですよね。もちろんです。この間にアメリカは独立したわけですから独立意識が高まったり領土が拡大したり、西部開拓の時代でもあります。
そして大量の移民がどんどん流入してきたっていう特徴がありますね。これによってアメリカ英語が以前よりも明確に独自路線を歩み出した。つまりイギリス英語から独立していくって言いますかね。言語が離れていくということになりますね。
この時期、南北戦争という重要な契機を挟みますけれども、1790年から1920年が第2期ということになります。そして第3期が1920年から現在ということですが、この1920年ってそもそも何なのかというと、いわゆる第一次世界大戦後っていうことですね。
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この後アメリカはイギリスに代わって世界の覇権を握ることになります。そして英語そのものもですね。それまではイギリス英語が基本、世界の基本だったというところから、どんどんアメリカ英語こそが世界の英語の命運を握ると言いますかね。方向性を左右するという時代になってきます。
アメリカ英語のいわば拡大機、世界に拡大していく時代ですね。イギリスに代わってバトンタッチしたアメリカがどんどん強くなっていく。英語的にも強くなっていくっていう時代です。この3つの区分がアメリカ英語のホップ、ステップ、ジャンプということになります。ではまた。