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2024-11-16 09:50

heldio #119. アメリカ語法は英語を堕落させている!?

#英語史 #英語学習 #英語教育 #アメリカ英語 #社会言語学 #英語変種 #英米差
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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶應義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも、辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題は、アメリカ語法は英語を堕落させている、というものです。
この議論はですね、Controversy of Americanisms、アメリカ語法をめぐる論争として知られていまして、実はこれ自体、歴史が長い論争なんですね。
少なく見積もっても、250年くらいあります。
もともとですね、アメリカ語法、これをAmericanismと呼んでいますね。
このアメリカ特有の語であるとか、語句の使い方ですね。
これは、本家であるイギリス英語と比較した時にですね、アメリカ語法の方が、帝族、貴族である、というような、だいたいそういう議論なんですね。
21世紀ではですね、アメリカ英語というのが、世界でも標準的に言いますが、イギリス英語よりもですね、勢力がある、影響力があるということなので、堕落しているという言い方も、比較的少なくなっているかと思いますが、
例えば、イギリス英語を喋る人々ですね、からすると、やはり未だにですね、アメリカ英語は、英語を堕落させている、なんていう考える保守的な人々はいますし、
例えば若者のですね、言葉の乱れなんかを指して、これアメリカ化してるって言い方をして、非難したりすることがあるんですが、
これよくよくその語法の歴史を調べてみるとですね、決してアメリカから入ってきたものではなく、つまりアメリカナイズされた英語表現ではなく、最初からイギリスにあったものだったりするっていうことで、
つまり事実とは別にですね、非難するときに、これアメリカ語法である、アメリカかぶれした言い方だというような言い方でですね、言葉遣いになっとらんというような非難、これが聞かれるわけなので、
実体とは別にですね、イメージとして、イデオロギーとして、アメリカ語法っていうのは、どこか劣っている、低俗なものだっていう意識を持っている人っていうのは、一定数いるわけですね。
歴史的にですね、これ古くからありまして、少なく見積もっても250年ぐらいはあると思うんですね。18世紀半ば、当時のイギリスの大文豪でありますが、サミュエル・ジョンソンですね、ドクター・ジョンソン、ジョンソン博士と呼ばれている人で、辞書を作ったということで有名ですが、
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このイギリス人はですね、当時のアメリカで使われている語法を指してですね、やはり英語を堕落させている、悪い英語だというような非難を加えています。
もう一つ、この議論で有名なのは、アメリカ合衆国の第3代大統領ですね、トマス・ジェファーソンなんですけれども、このジェファーソンがですね、造語した単語でbe littleっていうのがあるんですね。
be littleにbeという接頭字をつけて、この動詞化すると、下げすむとか下に見る、見くびるというような言い方なんですけれども、これがですね、笑い者のされど、こんな言葉遣いあるかと、be littleなんていうとんでもない単語をですね、アメリカ人のジェファーソンは作った、なんていう非難が聞かれたぐらいですね。
ですから、18世紀、あるいは19世紀ですね、アメリカが独立した前後の時代にはですね、まだこのコントローバーシーはかなり続いていて、アメリカ人ですらですね、アメリカ英語を喋るアメリカ人ですら、そのアメリカニズムですね、アメリカ語法に対して、必ずしもポジティブな態度を取らずにネガティブだったという人も少なくなかったんですよね。
さあ、このアメリカ語法を表すアメリカニズムという、この単語自体の話なんですけれども、これを作り出した、造語したのはですね、スコットランド出身で、初期のプリンストン大学の学長ですね、ジョン・ウィザースプーンという人です。
この人はアメリカで聖職者、教育者として活躍したわけなんですが、それよりも何よりも独立宣言の署名者の一人でもあるという、そういう存在ですね。この人がアメリカニズムという言い方、用語をですね、初めて用いたということですね。
彼の定義によるとですね、こういうことです。
An use of phrases or terms or a construction of sentences, even among persons of rank and education, different from the use of the same terms of phrases or the construction of similar sentences in Great Britain.
ということですね。
造語をする際のインスピレーションとしては、もうすでにスコッティシズムという言い方があったと。
これがスコットランド語法ということで、すでにあったので、このイズムをつけて何々語法とする、そのやり方を借りたんだということを述べていますね。
面白いのは、このウィザースプーンはですね、このアメリカニズム、アメリカ語法という語を最初に用いたときに、癒しというネガティブなイメージを含めて作り出したわけではなかったんですね。
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実際、今の定義の中でも触れたように、その地位がある人、あるいは教育がある人の中で、それら見られるアメリカ特有の語法なんだということなので、それを使ったからといってですね、癒しくなるものではない。
ちゃんと教養ある人、地位のある人も使っているんだぞという意味合いで、必ずしも癒しい語法というのは下げてないんですね。
中立的なイメージで使っているということです。
ポイントとしては、イギリス英語とは違うよっていう、違う使い方だよっていうことにポイントがあって、そこに上下関係みたいなものを持ち込む意図はどうもなかったということですね。
これ、イギリス英語に対して決して卑下しない独立宣言の署名者らしい、ある種の独立心みたいなものを感じることができる定義なんじゃないかと思います。
このようなアメリカ語法ですね、アメリカニズムを集めた辞書ですね、語彙集みたいなものが作られることになったんですが、最初のアメリカ語法辞書といえるものはですね、
ジョン・ピッカリングという編参者による、a vocabulary collection of words and phrases which have been supposed to be peculiar to the United States of Americaということで、このタイトルにこそこのアメリカニズムという表現は使っていないんですが、まさにアメリカニズムを集めた最初の辞書ということ、これが1816年にできたんですね。
ただですね、このピッカリングという辞書編参者はですね、どちらかといってイギリス寄りの立場を取っておいて、アメリカ語法が正当なイギリス英語から逸脱してるよっていうニュアンスで書いてるんですね。やや指定的な方向に偏っていると。
この1816年に出たのちにですね、その後の1828年なんですが、この年に今度は同じアメリカ人のノア・ウェブスターがですね、辞書を出したと。
ウェブスターはピッカリングとは違って、実際ピッカリングのこのちょっとネガティブな態度にゴーニアしていたようで、むしろウェブスターはアメリカニズムを称賛するといいますか、積極的に捉えるという立場なんですね。
つまり19世紀になってもですね、アメリカが独立していわゆるアメリカ人というものも存在し、アメリカ英語というものも認知されるようになってからも、このコントローバーシー論争というのはアメリカ側でも続いていたということですね。
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一方、最初の方に述べましたが、イギリスの方では今に至るまでですね、みんながそうではありませんが、アメリカ英語は崩れているというある種のステレオタイプ的なアメリカ英語感、アメリカニズム感みたいのが生まれたということなんですね。
今、多くの日本人の英語学習者はアメリカ英語ですね、ベースに勉強しているという人が多いと思いますので、こんな議論があるのかと思うかもしれませんが、2世紀、3世紀の間続いてきたある種の伝統的な議論、論争ということになりますね。アメリカニズム、これ覚えておいてください。
それではまた。
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