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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶應義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題は、「ユー」の発音が、「ユー」になるまでの長い道のり、という話題です。
英語の二人称代名詞、「you」、「y-o-u」ですね。 これは非常に日常的で頻度の高い単語であることは、言うまでもないことなんですけれども、
これでなぜ、「ユー」と読むのか、なぜこれが「ユー」という発音なのかという、普通誰も考えないような疑問についてですね、今日考えてみたいと思うんですね。
発音の問題に入る前に、実はスペリングもこの単語は非常に珍しくてですね、当たり前になっているので、ほとんど気づいたことがないと思うんですけれども、
y-o-uですよね。 これで、「ユー」と読むわけなんですが、何か変じゃないですかね。
英語の通常の単語ですよ。よく使う日常的な単語で、「ユー」で終わる単語っていうのは、実はほとんどないんです。
よく考えてみてください。ないんですよ。 で、「ユー」を使いたいなぁと思うところでは、だいたいwになっています。
カウとかハウとかロウとか、「ユー」でも良さそうなんですが、これはwになっているということで、普通じゃないんですよ。
このユーのy-o-uという綴りはですね。 他に、「ユー」で終わる単語ですね、日常的に使う単語ということで言うと、ほとんど思い浮かばないんじゃないかと思うんですね。
この点で興味深いのは、現代、普通ではありませんが、実は、「あなたを意味する単語」っていうのはかつてはもう1個あってですね。
今では、古語的に何字っていう風に、聖書なんかで使われたりするんですが、「thou」です。
これ、「ユー」とは違って、「thou」という発音ですね。
アウという母音を持っているので、だいぶ違うんですが、t-h-o-uという風になっています。
これも当然かつてはですね、当たり前のように使われた日常的な単語なわけですが、要するにこの「thou」と「ユー」だけがですね、二人称大名詞だけが
「ユー」で終わるという特別な振る舞いをするっていうことなんですね。 これ自身非常に面白い問題なんですけれども、今回は発音の問題に集中したいと思うんですね。
さあ、この二人称大名詞なんですが、古英語に遡ります。語源はですね。
古英語での形は実は主格、つまりあなたはっていう時とあなたをという時とで形が違っていてですね、あなたはっていう主語の形、主格の形は
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イエーイという風に発音されたんですね。イエーイ。 これは実はずっと中英語から近代語にまでですね、生き残りまして
イエーイ、つまりYou areと今では言ってますが、イエーアーとかイエーアーのような形で使われるのがむしろ普通だったんですね。
これ現代にもフレーズの中で残っていまして、例えばHow do you do?
はじめましてという表現ですが、How do you do?と言わずにHow did you?
Howの後にThe apostrophe yeみたいに書いて、このyeがイエーイという、本来のあなたはという主語の形ですね。
How did you?って言ってます。これはHow do you do?のちょっとした短縮形、簡略化した形かと思っていた人がいるかもしれませんが、
そうではなくてですね、これは本来のyeという、youの本来の主格の形ですね。これが使われている例がフレーズの中で化石化して残っているってことなんです。
How did you?とかですね。他にはですね、これも古かったりフレーズ的なんですが、Look it!ってのがありますね。
これ見よ!っていうつまりLook you!ですね。このyouはLookの後に来てますけれども、これ決して目的語ではなくて、
あくまで主語のyouをあなたが見なさいっていうふうに、主語のyouとしてのyeなんですね。
これがyouではなく、本来のyeという形で、これが縮まったイということでLook it!ぐらいの発音になっちゃいますが、このイっていう部分が、
実は本来の主格のyeの末裔ということであって、youの弱化した形というわけでは、これは実はないんです。
こんな表現にいくつか残っているんですけれども、本来主語の形はyeという形だったんです。
そして目的語の形ですね。これがaouという形でした。つまり主格yeに対して目的格aouという感じです。
ちょうど主格heに対して目的格himっていうのと同じような関係でyeに対してaouっていうことだったんです。
つまりaouというのは決して主語には使われなかったんですね。
ですが、このaouこそが現在のyouに遠く連なる形なんです。
このaouが、じゃあどうしてyouっていう発音になってきた。これこそが今日の問題なわけですね。
これが英語史上なかなか難問なんです。
まずですね、aouというのが小英語にありました。aouという形ですね。これはあなたをという形だったんです。
aというのが強い音説。これで始まってouというふうに弱い音説になっていくってことなんですが、この強い弱いの音説の強さが逆転するんですね。
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aouになるんです。aou。
もともとのaouからアクセントが移動してaouになったと考えられます。
そしてこのaouの最初のaの部分がiに変わるんですね。iouになります。
これがyouになりますね。youっていうことです。
そしてこの長い二重母音なんですが、これが長母音化してyouからyouとなった。
これが中英語記の話なんですね。youとなった。
ではこれでめでたしめでたしと考えられるかというと、そうもならないんですね。
中英語記にyouになってから、まだ500年、600年ぐらい現代までに間があるわけですよ。
この間にいろいろ変化しているんですね。
この中英語記にyouにまで一旦なって、そのまま現代に来るかと思いきや、これがまた変わるんですよ。
youというのは16世紀半ばぐらいからさらなる変化を遂げてyouとかyouという形になるんです。
youあるいはyouという形ですね。
このような形を発達させてきたんですが、これが17世紀には消失してしまうんです。
つまりyouから出たyouとかyouというのが、一回立ち切れるんですね、そこで17世紀ぐらいで。
じゃあどうなっていくかって言うんですが、元の中英語のyouにもう一回戻りたいと思うんですね。
ここから弱形として、代名詞というのは弱く読まれることも非常に多いので、ここから弱形というのが生まれます。
もともとのyouという中英語記の形から弱まってyouとかyouっていう形が生まれます。
つまり長母音のyouを持っていたものが、単母音化してyouとか、さらに弱まってyouぐらいになります。
これが現在のyouの弱形ですね、yourという時ですね。
youにアポストロフィーREなんて書くときのyourという時は、この弱形に由来します。
このyouという弱形が生まれたんですね。
ところがこの弱形からもう一回再強化されてっていうんですかね、強い発音が復活し、それがyouとなったわけです。
つまり変な話ですね、中英語記に一回youになって、そのまま現代語に連なるかと思いきや、そうではなく一回弱化してyouとなって、それがさらに再強化されてyouとなったという直形じゃないんですね。
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一回弱まって、さらに強まって、結果として中英語記と同じ形になりましたけれども、こういううを曲折を経てyouという形になったってことです。
つまりですね、これだけ当たり前の単語でも、なかなか複雑な音の変化を遂げてきてるってことなんですね。
で、改めてまとめますと、後英語記のyouに相当する二に初代名詞の目的格の形がaouっていうのがあって、これが現在のyouに繋がるんですが、その道のりはなかなか長かった。
aouからアクセントの位置変換を経て、aouになった。それがyouとなり、youとなる。そしてyouとなった。
一旦なったんですが、それが弱まってyouとなり、もう一回強まってyouとなったと。やーややこしいですね。それではまた。