wの文字の由来
英語に関する素朴な疑問。 なぜwの文字はvが2つなのにwなのですか。
これはしばしば寄せられる疑問なんですけれども、 確かにwの文字というのはvを2つ重ね合わせた文字です。
ですのでwvということであればわかるんですが、正式名称はwです。
フランス語ではdouble-vといってwvという言い方しますね。 イタリア語でもdoppio-vuという風にv系列を使う言語というのはロマンス系の言語で多いわけです。
しかし英語ではw-uと呼び習わせています。
確かにwはvが2つではあるんですけれども、 例えば筆記体のような手書き文字を考えますと、下が丸っこくなってuが2つに見えないことはないわけですね。
なのでwだと説明することもできるかもしれませんが、 歴史的にはとある事情があるんです。
英語のアルファベットはラテン語のアルファベットを借りたものです。 これは6世紀に英語がラテン語から借り入れたものなんですが、ラテン語にはそもそもwの文字が存在していないんです。
当時のアルファベット意識にはですね。 したがってそれを借りた英語の方でもwなんという文字は知らなかったわけです。
ところが英語にとってはちょっと問題で、英語にはw音、和行音というのが古英語から現代語に至るまでずっと存在しています。
とても重要な音素、発音なんですね。 なのでどうしてもw音を何とかして表したい。
しかしラテン語にはwに相当する文字がないわけですから、自分で考えなければいけないということですね。
そこで英語は一つ文字を考案したわけです。 これはuという文字がありましたのでこれを重ねてやろうと。
u一つだとうという母音に過ぎませんので、これを重ねてw音を表すという決まりにしようということで考案したわけです。
ちなみにこの当時、アルファベット意識にwがないと言いましたが、実はvも存在していないんです。
uはありましたがvは存在していないんですね。 したがって英語としては使える素材としてはuあたりを使うしかないだろうということでこれを重ねたということです。
したがってw、uということになります。 この英語で考案されたuを2つ並べたwというのが初期、後英語では使われていたのですが、だんだんと使われなくなるんですね。
これなぜかというと、もう一つ別のw音を表す文字を考案したからです。 考案したというよりも、これは実は英語ではローマンアルファベットが入ってくる前から使われていたルー文字、ここにあったw音に相当するウィンという別の文字を後英語で使おうということになり、
一番最初に考案したuが2つのwというのはだんだん廃れていったんです。 廃れてなくなったかというとそうではなくて、英語では廃れていったわけなんですが、隣のフランス語、ノルマンフランス語には大陸に駆け出した形になります。
vの誕生とその影響
英語の中では一度途絶えるわけなんですが、それが11世紀頃にノルマンディに行っていたものが英語にまた帰ってきます。 そして帰ってきたこのwが、さっきのルー文字に由来するウィンというのを置き換えていくという形なんですね。
変な動きをします。wの文字は英語で生まれておきながら、その後ウィンというルー文字由来のものにとって変わられ、そして11世紀にまたノルマンディに亡命していたwが英語に戻ってきたという感じなんですね。
そしてその後中英語期に、実はuから派生する形でvが生まれました。uの丸みを帯びたものが、尖ったのがvというに考えればいいわけですね。という順なんです。つまりwが11世紀に戻ってきた、英語に戻ってきた時にはまだ英語にはvという文字はなくて、その直後ぐらいにようやくvが入ってきたと。
ちなみにどこから入ってきたかというと、vはフランス語からなんですね。フランス語ではuとvが早くから分かれていました。そしてそのフランス、ノルマンディに亡命していた元々の例のwですね。
あれはフランス語流にwvと命名され、フランス語ではuが2つあるというよりもvが2つあるというふうに解釈されたというような事情があります。非常に複雑な形ですが、ポイントはuとvが英語では分かれていなかった。
そして中英語期にvが新しく生まれた、入ってきたと言いましたが、これも入ってきたとはいえですね、やはりuとvの区別はいつまでも曖昧でですね。実は近代英語になるまでずっと曖昧なままでした。現在でははっきりとアルファベットの中でuとvは違う文字というふうになっていますが、この完全に違う文字なんだという発想は実は非常に近代の、最近のものであるということになります。
話題につきましては、ヘログの2411番、それから373番の記事をご覧ください。