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おはようございます。英語の歴史を研究しています、慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしてきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる素朴な疑問は、なぜ Y はワイと読むの?、という疑問です。
Y、英語のアルファベットの25文字目ということになりますが、この文字をワイというふうに読むんですね。
私たちはこれに慣れています。ABCの歌から始まってですね、これをワイと読むことに全く慣れていますし、日本語にもなっています。ワイシャツということですね。
ところがですね、これがなぜ英語でも日本語でもそうですが、ワイというふうに発音されるのか、なぜこの文字がワイなのかということについては、実は定説と言えるものがまだないんですね。
他の言語では色々な呼び方があるんですけれども、英語ではワイというふうに呼ぶことになっています。ではこれはなぜなのかと。
発音の問題に行く前に、まずこのワイという文字ですね。この由来を探りたいと思うんですけれども、これは実はですね、起源としてはローマ字の F、U、V、W と同起源なんです。
いずれも、今でご承知はだいぶ違いますけれども、F、U、V、W、Yですね。この5つの文字はですね、全て姉妹文字と言っていいと思うんですね。
もともとのセムアルファベットのワウと発音された文字、これに起源を持つものなんですね。それが少しずつ変形するなりしてですね、異なる文字というふうに今は認識されているんですけれども、
もともとはルーツが一つ。そこから派生して様々な形になったのが、F、U、V、W、Yということです。
実際、英語で考えてもですね、このFとVっていうのは、フっていう音、あるいはウという音で近いですよね。
さらに、U、Wっていうのは、かなり近いウっていう音ですね。完全な母音か、あるいは半母音かということで使い分けているぐらいですね。
そしてこのYというのも、これは現代の英語でこそですね、実はIと結びつけられるイという音ですね。
IとYが仲間だっていうふうにグルーピングされる、そのように理解されると思うんですが、起源的には実はですね、UとかVとかW、Fですね。
この辺のものと実は関係が深いっていうことなんですね。
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YがUと実は非常に近い関係にあるっていうことはですね、ギリシャアルファベット、これを考えるとわかるんですね。
これ第20文字目がこのユプシロンと呼ばれている文字なんですけれども、これ大文字はですね、実はYの形なんですね。Yの大文字の形なんです。
そして小文字はあくまでUなんですね。
つまり大文字と小文字ということで、YとUが使われているっていうことは、起源的にこれが近い関係にあるというか同じものだということをですね、示すっていうことになります。
このギリシャ文字としての名前、ユプシロンっていうことなんですが、これはUプシロンということで、プシロンっていうのはスレンダーぐらいの意味なんですね。
細身のっていうことで、細身のUという、そんな意味を表すんですね。
実際このアルファベットのこのYに相当するものですが、ドイツ語ではこれをユプシロンと呼び名をしていますね、いまだに。
それからイタリア語でもユプシロンなんていうことが、イプシロンっていう発音ですが、言われることがありますね。
一方で、英語のようにこのYがですね、Uと関連付けられるというよりも、むしろIと関連付けられるということもありまして、これまさに英語ではそうなんですけれども、他に例えばフランス語ではイグレークって言いますね、イグレーク。
このYの文字の名前をイグレークと言いますが、これはイグレークということで、グリークアイ、ギリシャの、ギリシャ文字のアイみたいな、ギリシャ語のアイというぐらいの言い方ですね。
スペイン語でもイグリエーガと言いますし、イタリア語でもですね、先ほどイプシロンと言いましたが、もう一つ読み方としてイグレーコですね。
こちらの方が普通かもしれません。イグレーコという読み方をするわけですね。つまり、アイと関連付けられているという証拠になると思うんですね。
英語では間違いなくYとアイというのが、時に入れ替え可能なぐらいにですね、同義と言いますか、同じ機能を果たしている、同じ役割を果たしているというふうに考えられています。
例えばセティの続きを考えてみますと、CITYということですよね。このセティという場合、2つの音節でイに相当する発音が表れているわけですね。
日本語ではイに相当するというふうに、同じ音のように感じられますが、実際には英語ではですね、セティのまず第一音節の方は、少し開いたイと言いますかね、エに近いセ、セ、セということです。
それに対してティ、語尾の方のですね、第二音節のものはティ、ティというふうに、少し狭い、引き締まった発音になりますね。
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それぞれ抑止母音、開放母音になっていってますが、広い意味で言えばですね、やはりイの音に違いありません、両方とも。
ですが本来的には、例えば小英語ではですね、やはりYの文字は、Iと結びつくというよりも、そのギリシャ語の起源通りと言いますかね、Uと結びつくことの方が多かったんですね。
実際にウーという音ですね、これまあ典型的にUの文字で綴られるわけですが、ウーという音がウムラウトとかアイミューテーションと言いますが、ちょっとした音の変化によって、ユーという音になるんですね。
例えばムース、これマウスのことなんですけれども、小英語ではムースと言いました。
これに対して複数形はですね、ミュースと言ったんですね、ミュース。
今のマイスに相当するわけなんですが、ムース、ミュース。
つまりムーとのウーの音をですね、少し変形させてイーにしたと。
これがミュースということで、それぞれMUS、MYSのように書かれたんですね、ムース、ミュース。
やはりウーのちょっとした変形版ということで、ユーの音を表す。
これがYで担当されたということなんですね。
やはりウーとの関連付けの方がYにとっては強かったということです。
ところが後にですね、このユーという音、Yで典型的に綴られたユーという音が非遠心化という変化を経まして、簡単に言えばイーになったんですね。
ウーに対してイー、つまりムースに対してミース。
これがマウス、マイスという現代の形に遠く繋がるんですけれども、イーと関連付けられるようになってしまった。
つまり英語では発音の変化によってですね、Yは本来的にはユーと結びついていたのに、アイと結びつけられる、そういう契機が生じたということなんですね。
これはすでに小英語の話です。
その後ですね、中英語期以降、そして現代に至るまでも、Yというのは基本的にアイの仲間なんだという認識になっているかと思うんですね。
さあ問題の発音の方なんですけれども、これ定かなことが分かっていません。
ですから一番古いこの文字ですね、Y、25文字目、アルファベット25文字目のこの文字が英語でどういう発音だったのかということを知るヒントとしての最古のもの、最初のものはオーミュラムという作品なんですけれども、これは1200年ぐらいに書かれたものです。
ここにですね、このYという文字があって、その上にちょっとしたメモ書きみたいな形でWIみたいな暗直語があるんですね。
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これウィーと読んだんだろうということを示している、だろうと解釈されていますね。
そうすると当時のウィーというのは後に大文推移によってYになりますので、なぜYと読むのかというと、当時ウィーと読んでいたからであるというふうに説明することができるんですね。
ただじゃあなんで当時ウィーと読んでいたのかというと、なかなか分かりません。
一つの考え方といいますか説としては、Yというのは上にまずVみたいな又があって、その下に棒ですよね。
これは一種の、上半分はUなんであると。Uの尖ったバージョンのVなわけです。下半分はIである。
つまり、ウとイが合わさったウィーというのが本来の発音なのである。これが大文推移によってY。こんな説があります。
ではまた。