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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる素朴な疑問は、i, j の上の点は何、という疑問です。
これは先日ですね、学期の始めということで、大学のある授業、最初の授業でですね、素朴な疑問を募ったところ、出てきた疑問の一つなんですね。
確かに、i と j だけですよね。上にポチッとあって、一画では書けないわけですね。筆記体なんかでも、点を打たなきゃいけないっていうことなんですが、あの点は一体何なんだろうか、という疑問でした。
この問題を考えるにあたってですね、先にこの点であるとか、ちょんであるとかですね、
ちょっとしたこの小さな部品ですね、スゼリジー文字を書く上での部品っていうのがあってですね、これをまあ総称して、発音区別符なんて呼んだりすることがありますね。英語だと diacritical mark と言うんですけれども、まあちょっとしたあの符号だっていうことですね。
これ、実は古い英語であるとか、アルファベットで文字を書く文化圏にはですね、いろいろあったし、今もあるところが多いんですね。例えばフランス語のアクサン記号とかセディーユなんてもそうですね、ちょっとした印符号っていう感じで、例えば e の上にアクサン記号をつけることによって、ちょっと音を変えるであるとかですね、あるいは少なくとも昔は違う音だったっていうことを匂わす。
スゼリジー上の規則があったりしますよね。ドイツ語ではウムラウト記号をなんて言って、ちょんちょんと、母音の上に点を2つですね、つけるっていうのがありますね。
英語ではそういうごちゃごちゃしたことをあまり好まないんですかね。
実はアクサンをつけようとかウムラウトのようなですね、ちょっとした記号をいろいろつけようという試みですね、改革みたいなものが16世紀中を中心に出たには出たんですけれども、全く受けなくて定着しなかったということで、結果的にはあまり文字の上とか下にですね、いろいろごちゃごちゃつけるのを好まないような、そんな言語、書き言葉に英語についてはなっていったですね。
それでもですね、このダイアクリティカルマークは3種類ほど、今もですね、残っているといえば残っているんですね。
1つはこれアポストロフィーです。これ見かけますね。ちょんと文字の右肩につけて省略を表したり、さらにアポストロフィー、Sで所有格を表したりということで、これは現役です。
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もう1つはですね、死に絶えつつあるんですけれども、文音記号といいますね、英語ではダイアレシスといいますが、これもちょんちょんと、ウムラと似たようなものなんですが、例えばですね、ナイーヴという単語がありますね、N-A-I-V-Eと綴るわけですが、この際にこのN-Aと次のIですね、
この2つがA-Iという2つの合わさった母音字ではなくて、あくまで離れているよと、Iの部分はちゃんと独立しているよという意味で、Iの上に点々とつける。
これでネイーヴと読むことなく、ナイーヴと1回ナで区切るんだよということで、これは文音記号ですね、音を分けるということで、ナイーヴのIの上にちょんちょんとつけることがあります。
古風な通りではよくあったんですが、最近はこんなのも書かなくなってきていますね。
そして3つ目が、IJの上のドットです。
これはですね、この発音区別符、diacritical markが起源ではありますが、もうそのIという固有の文字の一部を成す点として、何かオプショナルでつけたり、何かのためにつけるというよりは、逆にあの点を打たないとIにはならないという意味では、オプションの符号ではなくて、埋め込まれたね、本質的なIの一部というふうに見なされていると思うんですね。
Jも同じですけれども、ということで、これをdiacritical markと呼ぶのはいかがなものかという考え方ももちろんあると思うんですね。
ですが、ポイントはですね、歴史的にこの上の点はなかったんです。
その意味ではオプショナルだったので、その意味ではちょっと符号っぽいですね、起源としては符号っぽいということになります。
さあ、もともと英語が書かれるアルファベットですね。
正式にはローマンアルファベットとかラテンアルファベットと呼ばれるわけですが、あのローマ字ですね、このウミノーヤはさらに昔のギリシア文字なんですね。
例のαβγっていうあれですね。
あのギリシア文字によりますと、αβγδと続いていて、iの部分がですね、イヨウタという文字になりますね。
これはですね、棒一本なんですね。ちょっとフックはありますが、点付けないんです、イヨウタは。
つまり、もともとこれがiの起源なわけで、このようにギリシア語ぐらい古い段階では、イヨウタのように点付かなかったわけですね。
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点付かなかったわけです。
さあ、これがローマ字につながるわけなんですが、このローマ字、ラテン語ですね。
ラテン語においても、このiの上の点というのは結構後になってから付けられたんですね。
これは12世紀の神奇軸であるということで、ローマ字発生の当初からこの点が頭についていたわけではないんですね。
むしろ神奇軸だっていうことです。
これはですね、一本の短い縦棒ですよね。
これだけだと目立たないんですね。周りの文字に囲まれて埋没してしまうということがあって、
これはiを意味するあの一本棒なんですよということを明示するために、上に点を付けて他と混ざらないようにしたというようなプラクティカルな要因があってですね、点をオプショナルに付けることにしたということです。
ただ、これが便利だったということがあったのかですね、どんどん流行ってきたと。
古い英語の写本なんかを見てみますと、点というよりはちょっと払いと言いますかね、ような形で、点であったわけでは必ずしもないんですが、
上にちょっとしたマーキングを付けるというのは確かによく見られるようになってくるわけです。
こうしてもともとはオプショナルな記号に過ぎなかったものが、今やですね、iの一部とみなされるようになって、義務的に点を付けることになっていますが、
全く同じ話がですね、jに当てはまるわけなんですが、jというのは実は非常に遅咲きの文字なんです。
ローマ時代から実はiの異形としてjが使われていたことは普通にありました。
なのであくまでiの一つの違った書き方に過ぎなかったんですね。
主に5末なんかには下にフックがありますね、jというのは。
これが目立つので、5と5の境界であることを示したりするのに都合が良かったので、
例えばローマ数字で3なんていうのはi、i、iと、iをこの1ですが、これを3本並べますよね。
この3つ目が例えばjになってたわけです。小文字で書く場合ですが。
こうしてちょっと目立たせてたということで、あくまでiの異形に過ぎなかったんですね。
この状況が実はずっと続きます。
ラテン語のみならず、そこから派生した言語であるとか、あるいは直接は関係のない英語もそうなんですけれども、
iとjがあくまで一つiという文字の異形に過ぎないということで独立していなかったんですね。
iの仲間っていうことです。
この状況は中世を通じて続きまして、15世紀くらいになってスペインにおいてiとjは違う文字として区別しようよという雰囲気になってきた。
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後に他の言語にも広がっていったんですね。
英語でも概ねiとjは区別されるという雰囲気になってきたんですが、
それでも伝統はずっと生き延びて、つまりiとjはあくまで一つの文字の二つの異なる形という意識が伝統的に残って、
1755年のジョンソンの辞書という非常に有名な辞書があるんですが、
ここでも辞書の中でiとjは混ざっています。
つまり一つの文字として扱われているということです。
ジョンソンもiとjはすでに違う文字であると。
iは基本的に母音として、jは子音としてということで明らかに分かれているので分けた方がいいって考えはあったんでしょうが、
その辞書を作ったジョンソンですら、自分の作る辞書の中ではiとjをごっちゃんしていた。