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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしています。
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今回取り上げる話題は、danger のもともとの意味は「権力」
danger それからその形容詞形である dangerous というのは非常に日常的な単語ですね。
危険、危険なということなんですが、これ原理をたどりますと、危険という意味ではなくて、権力とか支配力、支配権というような意味なんですね。
それがどういう具合に危険、危険なという意味になったのかという意味の変化の話題であるとともに、語源も遡ってみたいと思うんですね。
英語においてこの単語は、1200年くらいに、実は当時のフランス語、古いフランス語ということで古フランス語と言っていますが、
この古フランス語のdangerであるとかdangerという形ですね。これから来たものなんです。
当時はフランス語でも、そして入ってきた当初は英語でも、もともとのフランス語の意味で支配力、支配、支配権というような権力ですね。
これを意味した、主に領主の持っている支配権のことですね。
その最初に1200年頃に入ってきたと言うんですが、これが当時の英語の修道場のためのマニュアルですね。
アンクレーネウィッセとかアンクレーネリウレと呼ばれている作品、テキストの中で、フランス語から借りた単語として現れるんですね。
そこでの意味は、この支配とか支配力とか、そして支配者が典型的に持っている傲慢さ、支配、傲慢というような意味があるんですね。
その形容詞形のdangerousというのも同じで、支配権のある、支配力のあるということとか、傲慢なとか、お高いという意味ですね。
この当時の1200年ぐらいですが、中英語、ミドーイングリッシュと呼ばれる時代なんですが、典型的な意味はですね、dangerousとの危険なではなくて、
そのお高い、お高く止まった権力のある、権力を誇示する、傲慢なっていう、そういう意味なんですね。
それはそれとして非常に、実は頻度が高い日常語なんですね。支配権とか、支配力のあるということなんですけれども。
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同じ中英語記なんですけれども、その後半の方にあたりますかね、14世紀末ぐらいになって、これがですね、発展的な意味として、危険、現代につながる危険とか危険なという意味がようやく出始めるんですね。
この意味的な関連はわかると思うんですね。つまり、支配力のある人っていうのは、つまり支配者というのは、支配される者にとっては常に危険な存在ですよね。
何をされるかわかんない。その権力を振りかざして、暴力を振るうかもしれないということで、支配者というのは基本的に危険な存在。
これは昔から今まで変わってませんね。権力っていうのは実は危険なものであるという、一種非常に道徳的なというか、ある種の教訓を含んでいるような意味変化なんですが、そうした意味変化を遂げたんですね。
もともと支配力、支配権だったものが危険という意味にだんだんと移行していったということなんですね。
で、その時に発生した新しい意味、危険なとか危険というものが基本的なこのDangerousの意味となって、現代に残っているわけですね。
大元の権力とか力、支配権という意味は廃義になってですね、語義としては廃用になって今に至るわけなんですが、
Dangerを使った熟語としてBe in danger ofっていうのがありますね。何々の危険に晒されているということで、現代はやはりですね、危険ということで、例えばThe old bridge in danger of collapseなんていうと、その古い橋は今にも崩れ落ちそうだということで、崩れ落ちる危険性があるということなんですが、
このin danger ofという熟語自体は、実は中英語からありまして、当時の意味は何々の危険に晒されているというよりは、何々の支配権のもとにあるという、それゆえに危ないということですね。
誰々によって支配されている。つまり、自分はその人のすべて言いなりである。その人の権力のもとにあって危険な状態であるということなんですね。
なので、熟語も含めてですね、昔からあるわけなんですが、その単語も熟語も、権力、支配権という意味から危険という意味ですね。だんだんと変容して、そして現代に至るということです。
ではですね、この古フランス語の権力、支配権という意味を英語も引き継いだということなんですが、この古フランス語のdangerとかdangerというもの自体はどういう語源を持っているかといいますとですね、これ中世のラテン語のdominariumという単語に遡ると言われています。
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このdominariumがだいぶ発音変わっちゃいましたが、これが短くなってdangerとかdangerになったということです。だいぶ違う感じがしますが、もともとはdominariumと。さあ、このdominariumというところなんですけれども、ラテン語としてですね、分解しますと、これは大元はですね、domusということなんですね。
domusというとラテン語で家のことなんです。これまあいわゆるドームです。屋根のような覆いがある丸天井ですね。あれがある場所ということで家、ドームということなんですね。ここからdominusという単語が生まれます。これは家の主人、家を支配すると言いますか、家にいる人ということで家の主人ということなんですね。
それから主人一般になって、キリスト教の文脈では主、つまり神ですよね。ということでdominusといえばキリスト教で神様の意味でもあるんですよね。家の主人、神ということは当然ですね、これは支配者という意味になってきます。
ここから発生した単語でですね、しかも英語に入ってきているものっていうのはとても多くてですね、支配するということですから、例えばその支配者、主っていうことですから、don,don Juanとかdon Quixoteのdonなんてことですね、これmrっていうことです、lordって意味です、主人ってことです。
この女性系がdame、madameのdameですね、madamoiselleとかのdameの部分になります。prima donnaのdonnaでもあります。これ女性の主人、女主人ということですよね。それからですね、支配という繋がりではdomain、これ領土ですよね。
それから家繋がりでdomestic、家の家庭の国内のって意味ですね。だからdomicileと言うと従順なということになりますね。家にいておとなしいっていう意味です。それから支配に戻りますがdominantっていうのがありますね。
これ支配的なっていうことですし、dominateっていうと支配するです。dominationですね。それからdomineering、非常に支配者的なという意味がありますね。それからdominionっていうのもありますね。それからpredominateっていうのもありますね。圧倒するとか優勢であるっていうあの意味ですね。
ここから結局dangerっていうのも結局ですね、支配権っていう意味から危険という意味になっていたわけですけれども、危険とそれに由来する損害というニュアンスを含むものとしてはですね、このdangerのほかにダメージっていうのも実はそうなんですね。損害ですよね、まさに。それからdamnとかcondemnのこのdamn、damnっていう部分ですね。これ損害を与えるということですね。
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これが大元のdomsと家というですね、単純な家から出てくるっていうのは非常に面白い話で、いかに単語というのが一つの語根からあるいは語幹から出発してですね、どんどん発生して意味も連鎖的に全く掛け上げられたものになってしまうかっていうことを物語っていますね。
ということで語源からわかる教訓の一つとして、権力っていうのは危ないもんなんだということですね。それではまた。