接尾辞-ingの種類と発展
おはようございます。英語の歴史を研究しています堀田隆一です。 このチャンネル英語の語源が身につくラジオheldioでは、英語に関する素朴な疑問に英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。 本日の話題は
接尾辞-ing には3種類あるって知っていましたか? という話題です。
接尾辞-ing という語尾、これを聞くと
大抵、動詞の後ろについてですね。 現在分詞を作ったり、いわゆる進行形の現在分詞ですね。
それから動名詞、何々することという意味になる動名詞の語尾も接尾辞であると。 このあたりが思い浮かぶと思うんですね。
この2種類は確かにすぐに思い浮かぶと思うんですけれども、実はもう1種類。 語源としては全く別の接尾辞-ing っていうのがあるんですね。
この3つの関係について今日はお話ししたいと思います。 まず
動詞を名詞化するいわゆる動名詞と呼ばれている あの-ing から始めたいと思うんですけれども
これは起源としては非常に古いんですね。 古英語から観察されます。ただ
今の現代語の動名詞っていうのは どんな動詞であれ全ての動詞からこの-ing をつけることで名詞を作り出すことができます。
動名詞を作り出すことができますよね。 ですが古英語にあった語尾
これは-ing ということもあったんですが-ung という語尾であることも多かった。 こちらの方がおそらく多かったと思うんですけれども
-ung とか-ing という形ですね。 これはすべての動詞につけられたわけではなくて
特定の動詞と結びついて 名詞になった。
ですから動詞から名詞を作る語尾ということでは 確かに現代の動名詞と同じような役割なんですが
生産性って言いますかね。すべての動詞につけるわけではなくて 特定の動詞について専門の名詞を作り出すということですね。
ですので現代英語で言えば例えば-ment という形で動詞から名詞を作るというケースがあると思うんですね。
例えば-entertainment のようにです。 しかしすべての動詞に-ment をつけることができるかというとこれできないわけですよ。
動詞を選ぶわけですね。 これと同じような感じで
動名詞とはちょっと違う。動詞から自由に名詞を作り出すという 汎用的な語尾ではなくて、ある一定の動詞についてそれを名詞化する。
できた名詞は純然たる名詞です。 動名詞というよりは純然たる名詞になるっていう点でも
まだまだですね当時の-ung とか-ing っていうのは現代の動名詞の-ing に見られるような汎用性であるとか生産性みたいなものは獲得していません。
例えばですけれども、小英語には今でいう-feeding ですね。餌をやることに相当する-feeding という形がありました。
他には-ung の方が多いんですけれども、例えば-gathering これ-gathering のことですね。
それから-blessing これ-blessing のことですね。
それから-learning これは-learning のことなんですけれども、このように主に-ung をつけるタイプの
動詞からできた名詞、純然たる名詞っていうのがあったんですね。 これがスタートになってきます。
一定の動詞にのみついて、純然たる名詞を作るという語尾だったんですが、それがだんだんと汎用性を増して、最終的にはいかなる動詞にもついて、その動詞の意味を
一時的に名詞化する。 そういった使い方ができるようになるわけですよね。
いわば限られた範囲で活躍していた設備字-ing が汎用的な動詞につく設備字となって、最終的には動名詞という文法項目を生み出すに至ったという、なかなかの出世を遂げた設備字といっていいと思うんですね。
現在分詞と別の接尾辞-ing
それでは2つ目に行きたいと思います。 こちらは、現在文詞を作る-ing ということになります。
これは全く別語源でですね、もともと、古英語では、en-de という形だったんですね。
en-de ということで、g も出てこないぐらいですので、あんまり似ているとは言えませんね。 en-de という形です。
中英語記になりますと、この母音の部分が変わって、an-de とか in-de というのが出てきますね。この in-de という、ある意味では生った、方言的に生った形、in-de が後にですね、ing と音的に引っかかって合流していくことになるんですね。
動詞のお尻について、古英語では en-de だったんですが、これをつけると形容詞になるんですね。 現在も、現在文詞形容詞というのがありますね。例えば interesting みたいなものですね。
もともとは、動詞を形容詞的に使いたい時に使われる語尾として、en-de というのが、古英語時代から使われてきたんですが、それが中英語記に、ある方言では in-de になります。
そして、この in-de ですね。これは d の音なんで、g ではないんですけれども、平行して発達してきた、先ほどの一つ目に挙げた ing とですね、音的に、この c の違い、 d と g だけの違いですので、弱まった場合には、両方とも in-in-in みたいに聞こえてくるわけですね。
この辺りで、中英語、近代英語、そして現代英語にかけてなんですけれども、2つがですね、両者が区別されなくなってくると、混同されてくるという現象が起こりまして、役割としては、動名詞というのは、動詞から名詞を作るということですよね。
一方、現在分詞というのは、動詞から典型的には形容詞を作るということで、だいぶ役割が違うんですけれども、いずれもベースとして動詞というものがあり、そのお尻にちょろっとした要素を付け加えることによって、別の品詞に転換する。名詞であるとか形容詞であるとか、という大きな意味では、似てるといえば似てますので、機能的にですね。
この辺りが混同されて、結果的にINGで示される音、形態へと修練してしまったということなんですね。
動名詞のINGというものと、現在分詞のENDという、もともとは起源的に結びつかないはずのものが、歴史の過程でINGの形で合一してしまったということなんですね。
結果としてだいぶ役割機能は、本当は違うんだけれども、動名詞も現在分詞も同じINGを持つに至って、現代に続くということなんですね。これが2つ目のING。
3つ目のINGですけれども、これは先の2つと全く異なる語源を持っていて、小英語から存在するんですが、〇〇の一種であるとか、〇〇の子孫であるとか、〇〇の末裔みたいな感じですね。
このような、a kind of ぐらいの意味を持つ設備字としてINGというのが、全くの別語源で小英語から存在していました。
現代まで残っているものは、そう多くはないんですけれども、いくつか挙げてみたいと思うんですね。
接尾辞の種類
まず最も重要な単語は、実はKingです。Kingというと王様っていうことなんですけれども、小英語ではKinningという形だったんですね。これが包まってKingになってしまいますが、小英語の形はKinningというものだったんですね。
Kinという単語にこのINGがついたっていうことで、じゃあKinっていうのは何なのか。これ自体は現代語にも残っています。親族ということですね。
aという設定詞をさらに付けるとa kin。これはpity is akin to love。哀れみの心は愛情に近いということわざがありますけれども、pity is akin to loveですね。このa kinっていうのはaプラスkinっていうことです。
親族のというのが厳義で近いってことですね。近しい、親しい間柄だっていう意味なんですけれども、kin、親族って意味があります。
この親族とか一族民族ぐらいの意味なんですが、これにINGを付けることで、ある一族の末裔である代表者ぐらいの感じですね。これでKingなんです。
ですから王様というのは基本的に同じ民族、一民族の中の一人子孫であり、かつ代表者というぐらいの意味から出発してるんですね。これがKinning。
短くなってKingということになります。他には小英語時代の貴族のことをAvelingと言います。Avelっていうのは高貴なという意味ですね。
これにINGを付けて、高貴な一族の末裔ということで貴族ということになったりしますね。
さらに一説によるとVikingですね。VikingのINGもこの語尾だとされています。Vikeっていうのが古い英語あるいは北欧語でワンイリエのことですね。
フィオールドのイリエです。あそこで活躍していた民族の末裔ということでViking。こんな語源説があります。
そして誰々の息子という意味も出ますので、ブラウンさんの息子でブラウンニングという名前。これも知られていますね。
たくさんの例が残っているわけではありませんが、この第三のINGも覚えておきたいところですね。
英語の歴史に関する講座
エンディングです。今日も最後まで放送を聞いていただきましてありがとうございました。
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最後に明日に迫った講座の紹介です。
明日6月11日土曜日の午後3時半から6時45分に朝日カルチャーセンター新宿教室にて、英語の歴史と世界英語と題するシリーズ講座が始まります。
4回にわたるシリーズ講座なんですけれども、その初回となります。
初回の明日は世界英語入門という話題でですね、このWorld Englishiesという20世紀として21世紀的な現象である英語を取り巻くタイムリーな話題に焦点を当てたいと思います。
このチャンネルで注目している英語の歴史なんですけれども、1500年以上の長きにわたります。
しかし全く今で終わったわけではなくて、ますます面白くドラマチックに展開していくだろうというのがこの21世紀なんですね。
英語の歴史は続いているということです。
もはや英語はブリテン島の中に閉じこもっている言語ではなく、そしてアメリカだけでもなく、真の意味で世界中で使われるようになっているわけですね。
このような状況っていうのは近代、後期以降のことでつい最近の出来事です。
それ以前の時代には考えられなかったほど大きな舞台で、そして多くの話者に支えられて、今後英語はどのように変化していくのか、発展していくのか、このあたりの話題を世界規模で考えていきたいという、そういうシリーズの初回となります。
2、3ヶ月に1回というペースでゆっくりと講座が続いていきますが、全4回のシリーズの中の初回ということで、世界英語入門導入編となりますので、この話題に関心があって、そしてまた都合のつく方は今からでも間に合いますので、ぜひこのチャプターに貼り付けたURLより情報を得てお申し込みいただければと思います。
ハイブリッド形式で対面でもオンラインでも受講できます。そしてまた1週間は録画したものを視聴できるということですので、明日はちょっと都合がという方もお申し込みいただけると思います。
世界英語の話題はこのチャンネルでも連動して話す機会を増やしていきたいと思っています。
それではまた。