オンライン時代の生活スタイル
おはようございます。英語の語源が身につくラジオheldioのパーソナリティ、そして英語の歴史を研究しています堀田隆一です。
8月4日、木曜日です。 本日は、今週のVoicyのハッシュタグ企画に参加したいと思います。
お題は、「どこで暮らし働くか?」という話題ですね。 最近、ワーケーションであるとか、二拠点生活であるとか、移動型の生活っていうのが、日本国内でも可能になりつつある。
このオンライン社会においてですね。 これが話題となっていますが、それと関連した話題ということですね。
今日のタイトルは、「ノーマド・遊牧民の原義」ということでお届けしたいと思います。 本日もよろしくお願いいたします。
今回のハッシュタグ企画の、「どこで暮らし働くか?」という問題ですね。 これは、私も関心がありまして、このコロナ禍でオンライン時代本格的に到来したということでですね。
暮らしと働きの在り方が変わってきた。 そして、オンラインで仕事するということもですね、どんどん増えてきて、そうすると職場に行く必要もないということですね。
とりわけ、今、私の大学もですね、通常の対面に戻ったわけなんですけれども、この2年はですね、大方オンラインで行うと、つまり大学の現場に行く必要がないというような状況というのは初めてですね、訪れたんですね。
そうしますと、大学の在り方っていうのは問題ではなくなって、家から中継する形なわけですよ。 講義なんかをZoom越しであるとか、あるいはオンデマンドで撮っておいて、それを見てもらうというような感じですよね。
そうすると、場所はですね、問題ではなくなるんではないかということですね。 これ、一般の企業もそうだと思いますけれども、大学でもこんな状況が初めて訪れて、いわば、どこで暮らして働くのかというような問題ですよね。
学生の側も、どこで暮らして、どこで学ぶのかっていうことが、非常に多様化してくる可能性っていうのは芽生えたわけですね。 一旦落ち着きつつあって、対面に戻ったんですけれども、一度覚えてしまったこの味と言いますかね、これは中長期的に見るとですね、やはり現場にいる必要はないんではないかという発想は、
一度体験したっていうことですね。今後も重要な選択肢の一つとして残されていくんではないかと思うんですね。
ノーマドの歴史と語源
そうしますと、私自身がですね、定住生活っていうのは、そもそもがあまりこだわりはなかったもので、学生の頃バックパッカーしてたっていうことも、その関係はあるんだと思うんですけれども、どこでもいいという発想がもともとあったんですね。
そうしますと、こういう時代になって、どこで暮らし働くかっていう、いろいろ選択肢が出てくる時代っていうのは、とても楽しみだなというふうに思っているんです。ただ、現時点では、大学というのは一つ場所があって、そこで授業を行うっていうのが、このオンライン時代になってもですね、やはり基本は基本という発想はまだ根強いわけなので、
そう簡単に変わるとは思っていないんですけれども、今後ですね、このオンライン授業の良さとか、これが改めて評価されるようになるにつれてですね、おそらく対面とこのオンライン、このハイブリッドであるとか、さまざまな組み合わせ方が考えられて、
もう少しですね、この物理的な制約から解放される方向に間違いなくですね、ゆっくりとかもしれませんが、移行してくるんだろうなっていう予感はありますね。
一般の企業や、あるいは個人授業ですよね、ではもう数年前というか、もうちょっと前からですかね、海外では、普通に移動しながら暮らすっていうことですね。
最近でワーケーションとかに拠点生活っていうような用語もありますが、もうちょっと古くはノーマットなんていうのが表現がですね、流行ったと思うんですね。
ノーマドワーカー、これ、遊牧民っていうのが本来のノーマットなわけですけどね、最近も言うんですかね、ある意味第一世代の移動しながら働く人々のことはノーマドワーカーと言って、むしろそこそこ定着してきて、この用語自体もあまり使われなくなったぐらいなのかもしれないんですけどもね。
肌感としましては、このノーマド、もともとは民族学の用語、人類学の用語ですかね、ある遊牧民ということで使われている英単語ノーマドなんですけれども、こちら、語源をですね、今回は考えてみたいと思うんですね。
そこから分かってくるこのノーマド感って言いますかね、どこで暮らし働くのかという今回のお題に関して改めて考える視点っていうのが出てくるんではないかということに気づいたんですね。
こちらを紹介したいと思います。
遊牧民を表すこの単語ノーマドですね。形容詞系はNomadicという言い方をしますけれども、このノーマド、遊牧民、この単語は英語ではですね、16世紀後半に最初に表れています。フランス語から入ってきたっていうことなんですね。
その前はラテン語でノーマドとかノーマスということで、やはり遊牧民っていうことなんですね。これ自身は実はギリシャ語の単語に遡るんです。これをラテン語が借りたということらしいんですけれどもね。
このギリシャ語ではノーマスという形で、やはり遊牧するとか遊牧のという形で使われていたんですけれども、大元をたどるとですね、ネーメインという動詞なんですね。これが遊牧するっていうことなんですよ。
なので、遡っても結局遊牧ということから離れないように見えるんですけれども、このネーメインというギリシャ語のさらにですね、語幹、語根を探るとインドヨーロッパ祖語のネムという語根にこれに遡るんですね。
これはですね、もともと確保して割り当てる、確保して分け与えるっていうような意味なんですよ。なので英語的に言うとAssign, Allot, Takeというような意味ですね。取っておいて、そして人に分け与えるっていう感じですね。この辺の意味を含み込んだ動詞語根ということでネムっていうのがあったんですね。
関連語としてはこれたくさんあるんですけれどもね、例えばギリシャ語ではですね、ネメシスというギリシャ神話のネメシスという王宝天罰の女神がありますね。因が王宝の女神です。
これはいわゆる正当なものを与えるということですね。つまり良いも悪いも正当と判断されたその人の評価に対してものを与えるということですね。これでネメシスということで確保して分け与えるっていう原理からどうも出ているこのギリシャ神話の女神の名前っていうことなんですね。
他にはギリシャ語のノモスというとこれ習慣とか法律って意味なんですよね。これ与えられたもの割り当てられたものということが原理です。
法律習慣ということからですね、結局法の体系、学問分野っていうことがなってですね、知識体系という意味でアストロノミー、エコノミー、タクソノミーのような学問名の最後につくのみっていうことですね。これなんかにもよく現れるっていうことで割と身近なところにあるわけです。
そしてギリシャ語から離れまして、英語にもそのままですね、このNEMに近い形できっちり引用速語から流れてきていまして、それがですね、ニマンという形なんですね。
これ小英語ではですね、本当にごく普通の単語でtakeぐらいを意味する取るですね。もともとの引用速語の原理が取って分け与えるっていうことですから、当然取るっていう意味があるわけですよ。そうするとですね、ニマン、ドイツ語で言うと今もありますねーめんっていうことなんですが、これがですね、小英語では普通の日常的な動詞として使われていたんですね。
takeっていうのは北欧語から入ってきて、後でこのニマンを置き換えたっていう単語なんです。なので残念ながら今直接は残っていないんですが、普通にあった単語なんですね。この小英語のニマンのある種関連語としてはですね、NIMBLEとかNUMっていうのがありますね。
NIMBLEっていうのはこのニマンにエイブルをつけたものですね。素早い、軽快なって意味です。それからNUMっていうのはニマンの過去分詞なんです。実はこれで感覚が麻痺したとかいうことになるんですけどね。さて肝心のNOMADについてなんですけれども、これがどうして遊牧民ということになるかというとですね。
これも原理ですね。このNEMっていう部分、これ確保した上で分け与えるっていうのがどうやら原理なんです。そうするとですね、これいわゆる遊牧民っていうのは羊なんかを連れてですね、草のあるところにどんどん移動していくっていう、そういう生活形態なわけですよ。草をですね、確保して、そして割り当てる。
割り当てるっていうのは羊に餌としてやるっていうことだと思うんですけれども、そのために移動するっていうことからですね、その形態を指してNOMADのNOMの部分ですね。これが本来のNEMという引用語の動詞、確保した上でそれを割り当てるっていう、そこと結びついてるらしいんですね。
そうしますと、我々今遊牧とか遊牧民って聞くと移動する民だということですね。移動に焦点が当たっているっていうか、移動が前面化されているっていう感じがするんですけれども、本来的にはその飼っている、例えば羊、羊のために草を確保して、それを羊に与えるっていうような、そちらが先なんですね。
そのためには草っていうのは同じところにずっと生え続けないので、一回食べきってしまったら次のところに移動しなければいけないっていうことで、結果として移動するっていうことになるわけですよ。
移動の本来の意味
つまり、このNEMとかNOMADの原理と言いますかね、これは草を確保して、それを羊などに与えるというのが本来の意味で、その目的のためにしょうがないから移動しなければいけないと、その主人である人間側がですね、移動しなければいけないっていうことで、目的と手段っていう関係だと思うんですよ。
あくまで移動っていうのは手段。何のために移動するかといったら、ちゃんと牧草を確保するためっていうことなんですね。これが本来のどうも意味であると。
そして日本語でいうところの、この遊牧ということなんですけれども、このNOMADワーカーなりですね、こういった言い方、遊牧民っていう言い方にしても、移動するっていうことがむしろ焦点が当たっていてですね、全面化されてる気がするんですよ。
だけどそれは何のために移動するかというと、本来は牧草を確保するため、そしてそれを羊に割り当てるためというのが原理で、もともとは目的の方に焦点が当たっている単語なんですね。
ただその目的のために、やっぱり移動しなければいけないっていうことがついて回るので、この手段である移動するということも付随してついていく。ところが時とともに意味の焦点がですね、この手段である移動の方に焦点が当たって前傾化されてですね、注目されるようになってきて、今でもNOMADワーカーであるとか、遊牧的な生活っていう現代の、
遊牧的な生活っていうのは牧草であるとか、羊に割り当てるっていうことを意識せずに動くっていうことですね。こちらのこの手段の方が前傾化されているっていうことなのかなと思うんですね。
この原理からの意味の派生っていうことを考えると、今のですね、暮らしと働きっていう話なんですけれども、移動しながら働くっていう新しいスタイルですね。これもですね、改めてその語源的な観点から考えると、非常にしさ的っていうか意味深いところがあると思うんですね。
この移動しながら働くっていうと、やはり移動というところに焦点が当たっている気がするんですよ。ですけれども、移動っていうのはあくまで手段であって目的ではないと思うんですね。移動しながら働くことのメリットっていろいろあると思うんですけれども、そもそも気分転換になるであるとかですね、発想が豊かになるであるとか、
そういったことが実はメインだったりするんじゃないかと、気晴らしみたいなことですね。これはやっぱり原点といいますか、やはり本拠地があってこそ、その気晴らしであるとか発想の転換であるとか、いわゆる転置っていうことですよね。これが可能なんではないかと思うんですね。
そして何のためにそれをするかというと、やはり働き方の効率を上げるであるとか、リフレッシュするであるとか、あくまで移動っていうのは目的というよりは手段なんだろうと思うんですね。
目的っていうのはよりよく働くとか、より快適に働くというようなところがあって、そのために移動するというようなニュアンスが強いんじゃないかなと思うんですね。移動すること自体が何らかの意味があるというよりは、それによってほにゃららするというような手段と目的っていうような関係なのかなと思うんですね。
これは本来のこのノマトの語彙を考えても、ノマトももともとは確保して羊を育てる、羊に草をやるっていうのが本来の意味で、ただそのためには移動しなければいけないっていう手段としての移動なんですが、こちらが前傾化されたっていう、この意味的な発展と言いますかね。
この後の受け取り方っていうことと、今このワーケーションなり拠点生活なり移動しながらの働き方という話題もですね、関連してると思うんですね。移動っていうのは結局その移動のために移動するというよりは、ほにゃららのために移動する、仕事のためにあるいは気晴らしのために移動するっていうような、そこはですね。
変わっていないんではないかって気がするんですね。
ですので、このノマトの語源から考えるに、現代の移動しながら働く、旅をしながら働くっていうワーケーションの発想もですね、そもそもが移動に焦点があっているように見えるけれども、本来的には移動することで仕事の生産性を上げるというような、
そんな方向が本当のところなんではないかなと。それで今、移動しながら働くっていうことが注目されてきているのかなと。移動そのものでは実はないのかもしれないっていうふうにも思ったりします。
現代の働き方
エンディングです。
今日も最後まで放送をお聞きくださいましてありがとうございます。
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最後に、数日後に迫りました講座のお知らせをさせてください。
今週の土曜日なんですけれども、8月6日です。
午後3時半から6時45分に、朝日カルチャーセンター新宿教室にて、全4回のシリーズ、英語の歴史と世界英語と題したシリーズなんですけども、この第2回講座が開講されます。
タイトルは、いかにして英語は拡大したのかということです。
対面とオンラインのハイブリッド講座として開講される予定ですので、ご関心のある方は様々な方法で参加いただけますので、こちらのチャプターに貼り付けたURLから講座の詳細、情報を入手していただければと思います。
シリーズの第1回は、6月11日に世界英語入門と題してお届けしたんですけれども、シリーズとはいえ、各界独立していますし、前回の復習ということも行いますので、今回から参加ということでも全く問題ありません。ぜひ参加をご検討ください。
今、ちょうど最後の詰めで講義資料を作っているんですけれども、主に近代英語記ですね。英語がいかにして世界に拡散していったかというところですね。
これを英語の多様化、土着化、改装化、標準化といった4つの視点から描いてみようかなというふうに考えています。
この講座の予告として、このVoiceでも393回、6月28日の放送なんですが、アサカル講座の第2回、英語の歴史と世界英語、いかにして英語は拡大したのかということで、予告編的なVoice放送も配信していますので、393回ですね。
こちらも併せてお聞きいただければと思います。
それでは、8月4日木曜日、今日も元気でいきましょう。
ホッタリュイチがお届けしました。
では、また明日。