リスナーの質問を受けて
おはようございます。英語の歴史を研究しています堀田隆一です。 このチャンネル英語の語源が身につくラジオheldioでは、英語に関する素朴な疑問に英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。 今日の話題は、リスナーさんからの質問がきっかけになっている話題です。
ラテン語から借用された前置詞 per, plus, via についてです。
6月6日にいつもこの放送を聞いていただいていますリスナーで、ペンネームQさんから次のようなコメントと質問をいただいたんですね。
読み上げさせていただきます。 毎日楽しく聞かせていただいております。英語史と英語学が大好きな大学2年生です。
私は今年度からラテン語を勉強し始め、英語に借用されたとみられる単語をたくさん見つけたのですが、そこでラテン語の前置詞に関していくつか疑問を持ちました。
それはラテン語の前置詞が英語のものと全然違うからです。 私は前置詞もたくさん借用されているんだろうと勝手に考えていたんですが予想に反し、そうではなかったので驚きました。
そこで質問ですが、現在普及している英語というのは、前置詞はいつの時代からあったのでしょうか。 またなぜラテン語からの前置詞の借用語は少ないのでしょうか。
こういった質問だったんですね。 まず話の前にですね、ラテン語を勉強され始めたということなんですが、これはとても英語学英語史的には大事なことで、英語史の中にはこれまでの様々な放送で取り上げてきましたけれども、
フランス語と合わせてラテン語の単語が大量に借用されてきているんですね。 英語の語彙の中の3分の1、これがフランス語かあるいはラテン語というぐらいですね。その中でもラテン語の比率の方が高いくらいですので、相当多くの数万というレベルで、数万語というレベルでラテン語の単語が入ってきています。
この放送は英語の語源の話題なので、やたらとラテン語の話も出てくるということになりますね。 ラテン語を学ぶと英語の学びも非常に楽しくなりますし、効果的になります。
英語史にもますますの関心が湧いてくるかと思いますので、ぜひぜひラテン語の学習を続けていただければと思います。
さて本題なんですけれども、まず英語の全知識、この起源に関してなんですが、いつの時代からあったのかという質問だったんですけれどもね。
これは文献の残る最初の段階、古英語の最初の段階からすでに全知識というものは英語の中に存在していました。
ですのでどこから借りたというわけでもどうもなさそうでですね、本来的に英語の中に全知識は芽生えていたということなんですね。
現代でも最もよく使われるタイプのですね、主要な全知識はすでに古英語時代から現れています。
in, on, of, at, from の類ですね。
最初からありました。ですのでこれは借り物ではなくてですね、本来的な語群、語類というふうに考えて良さそうです。
そしておそらくインドヨーロッパ語族の他の言語も同じでですね、歴史の蓋を開けた瞬間からすでに全知識、現代にまで続く全知識に相当するものっていうのは大抵の言語であったと思うんですね。
ラテン語も同じです。最初から全知識に相当するものがあったということですね。
in, on, of, on にまでですね、遡ると、究極的に遡ると同じルーツを持つという全知識ですね。例えばラテン語の中、英語の中というふうにこれはあるはずです。
in なんかがそうですし、共通するものもあると思うんですね。一方で共通しない、
別語源というものもこれまたたくさんあると思うんですね。あるいは共通なんだけれども形がそれぞれ変化しすぎて、今となっては同じようには見えないというものまで含めますと、
やはりかなり古い段階から共有していたものっていうのはあり、一方で各言語で芽生えた、作られた全知識っていうのもあったと思うんですね。
英語の場合、全知識の数っていうのは、古英語から中英語、そして近代、現代にかけてどんどん多くなってきました。
とりわけ近代期ですね、近代の前半あたり1500年から1700年ぐらい、これを初期近代英語期と呼んでいるんですが、この時代にだいぶ増えたんですね。
ラテン語からの借用前置詞
その結果、今たくさんの全知識があるということになっているんですけれども、単語、一単語からなる全知識だけではなくてですね、複合全知識というものもありますね。
こういうのも含めるとかなりの数がありますね。では増えたといってどのように作り出したかと言いますと、
既にある全知識を組み合わせて、例えばas forとして作ったり、あるいは釈用語を利用して外から入れた全知識っていうのもあるんですね。
ただ、先ほどのQさんの質問によりますと、ラテン語から入ったものっていうのは少ない。
他の品詞、例えば名詞とか動詞に関してはラテン語から大量に英語は釈用語をですね、
受け入れてきたのになぜ全知識はそんなに多くないんだろうかというようなそのあたりの問題意識から質問いただいたと思うんですね。
この質問に対しましてはまず一般論として言うんですけれども、ある言語が別の言語から単語を借りるっていう時に圧倒的に多いのがまず名詞なんですね。
これ想像できるかと思うんですけれども、ものについた名前ですね。そして新しいものができればそれに名前ができる。
その名前ともの、もろともですね、外で作られたのであれば自分のところに持ってくるっていうことになりますので、大体名前、名詞っていうのは非常に可視化しやすい要素ですね。
それから次に動詞もありますし形容詞っていうのもありますね。副詞のようなものもあります。
こうした今挙げたですね、名詞、動詞、形容詞、副詞みたいな語類を言語学では内容語っていうふうに呼んでるんですね。
同じ単語の中でも内容がある、実質的な意味があるということで内容語です。
それに対して全知識であるとか接続詞であるとか代名詞といったようなですね、いわば文法機能を表すもの。
内容があるというよりは文法的、機能的な単語っていうのがありますね。これを機能語と言っています。
つまり内容語と機能語っていうふうに対別できるわけなんですが、圧倒的に外から釈用しやすいのは内容語っていうことになります。
そして機能語も釈用、絶対にされないっていうことではないんですけれども、相対的に言えばですね非常に少ない。
別の言い方で言いますと、内容語っていうのはどんどん付け加えることができるって意味でオープンクラス、開いた語類、開かれた語類っていう言い方をするんですね。
一方で機能語っていうのは数も少ないし、出入りがそんなに激しくない。大体一回固まったらですね、それでしばらくいくと。
全く新しいものが入ってこないわけではないんですけれども、機能語っていうのはしたがってクローズドクラス、閉じた語類というふうに言われることがあります。
あくまで相対的な意味合いですけどね。ですので一般的に全知識というのは数もそれほど多くない、増えたと言ってもですね、数百というレベルにはなかなかならないんですね。
小英語では30個ぐらいしかなかったんですが、確かに現代の英語ではですね、100、200ぐらいあるんじゃないかと思いますが、そんなに何千とか何万語っていうことにはなり得ないんですね。
名詞とか動詞だったらこれあり得ると思うんですけれども、このように一般論として全知識っていうのは機能語で閉じた語類ということなので、外から持ってくるっていうことが比較的という話ですが比較的少ない。
ただその中でもあくまで比較的なので、入ってきたものは入ってきてます、外からですね。
この際に入ってきたもののソース、源はですね、大体フランス語が多いです。しかもフランス語そのままというよりはフランス語の要素を用いた複合全知識というものですね。
例えば、in accordance withとかですね、concerningとかby reason ofのような表現ですね。そしてbecauseなんかもそうなんですが、これそれぞれにフランス語要素を含んでるんですね。
Accordanceであるとかconcernであるとかreasonであるとかcauseですね、becauseのcause。こういったふうにフランス語をベースとした単語ですね。そしてその単語を用いて複合全知識みたいなのを作って持ってくると、こういうのは割と初期近代語記にあったので、外から入ってきた全知識っていうのもあるにはあるんですね。
完全に閉じた語類ではないっていうことで、全知識も増えるということなんですけれども。確かに今回の質問にあったように、ラテン語に由来する全知識っていうのはあんまり多くないんですね。少なくともフランス語に比べれば目立たないです。
その中でももっと差が少あると思うんですが、比較的一般的と言いますかね、現代でも普通に見られるものとしていくつかあげたいと思いますが、それが表題タイトルに載せた3語です。パーっていうのと、プラス、そしてヴィアというものですね。ただ数としては少ない。これは確かなことだと思います。
全知識に関するリスナーさんからの質問にざっと答えてみました。この全知識の話題については、これまでの放送でも実は取り上げておりまして、今日話した内容と重なる部分もあるんですが、是非是非2本紹介しますので、こちらも併せて聞いていただければと思います。
1つ目は第260回の放送なんですけれども、英語誌を通じて全知識はどんどん増えてきたという話題です。今日の放送でも少し触れましたが、このあたりをもう少し詳しく話していますので、そちらもお聞きください。そして2つ目は343回の放送なんですが、そもそも全知識とは何か。なぜこんなにいろいろあるのというテーマでお話ししました。
エンディングです。今日も最後まで放送を聞いていただきましてありがとうございました。今回のようにリスナーの皆さんからの質問を受けて、それに答える形で英語の語源や英語詞について話す。このような機会も増やしていきたいと思っております。ご意見ご感想ご質問などがありましたら、Voicyのコメント機能あるいはチャンネルプロフィールにリンクを貼っています。専用フォームを通じてお寄せください。
それではまた明日。
今回の放送につきまして、訂正がありますので付け加えさせてください。コメントをいただいた方Qさんと紹介したんですけれども、私の勘違いで別の方でした。佐藤さんと言われる方でお二人にはご迷惑をかけました。お詫びして訂正いたします。