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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶應義塾大学の堀田隆一です。このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回の話題は、意外と多いオランダ語からの借用語、
という話題です。英語の語彙には借用語、別の言語から入ってきた単語が非常に多いということは、このラジオでもですね、たびたび取り上げてきたわけなんですけれども、大体話題になるのがですね、
量としては、ラテン語から来た単語が多いとか、フランス語から来た単語が多い、それからコーノルド語から借用したものが多いというふうに、いくつか言語、だいたい決まっているわけですよね。
全体として言えばですね、英語は本当に数多くの言語から借りてきているということで、少なく見積もってもですね、350以上の言語から借りてきているというんですが、定番として出てくるソース言語ですね、というのは決まっていて、ラテン語とかフランス語、コーノルド語とか、この辺が定番なんですけれども、
実は意外なことにですね、このオランダ語、あまり注目されることはないんですが、オランダ語からの借用語っていうのも、実は相当数あるという話題ですね。
そもそもオランダ語と英語の関係というのを復習しておきますと、両方ともゲルマン系の言語ですね、ゲルマン語派に属します。
ゲルマン語派の中でもですね、派閥がありまして、東ゲルマン、北ゲルマン、西ゲルマンとあるんですが、両方とも西ゲルマンです。なので非常に近いですね。
西ゲルマンの中でもさらに分かれまして、高知と低知に分かれるんですね。この高知というのは、典型的なそこに属する言語は、いわゆるドイツ語、今の標準的なドイツ語ですね。
一方、低知に属するのが英語もそうですし、実はオランダ語もそうなんですね。なので英語とオランダ語っていうのは相当に近いということになります。
英語とドイツ語の関係よりももっと近いということになりますね。同じ低知ゲルマン語と呼ばれるものですね。この低知ゲルマン語の中でもさらに分かれるわけなんですけれども、一つがオランダ語に通ずるものですね。
もう一つが英語に通ずるもので、さらにもう一つあって、これがロージャーマンというふうに言うんですけれども、現在のドイツ北部で話されている方言ですね。あれは今はですね、ドイツの北部方言というふうに一般的には捉えられていて、ドイツ語の一方言というような、そういう位置づけに捉えられることが多いんですが、
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ただ比較言語学的にはですね、むしろ英語やオランダ語と同じ低知ゲルマン語なんですね。ローの方なんです。一方でドイツ語の標準語ですね。これはハイに当たるわけで、つまり英語、オランダ語、そしてドイツ北部で今も話されているロージャーマン、低知ドイツ語と言われるもの。これはかなり、この3つはかなり近い仲間だということですね。
今回の話題はオランダ語、オランダ語から英語に入った釈用語ということなんで、この2言語に注目するわけですが、もともと近いということがよくわかると思うんですね。かなり近いです。語源的にもですね、共通の語源を持つ、似たような単語だっていっぱいあるということなんですね。
このように言語の出自としてですね、英語とオランダ語が近いということはよくわかりますし、しかも距離ですね、イギリスとオランダの距離っていうのは近いですね。いわゆる北海をまたいですぐというところで、常にですね、イギリスとオランダの地方ですね、この辺りはずっと交易商業でも結びつけられてますし、関係が深いということになります。
つまり、血縁関係も近いし、実際の交易商業との関係ですね、これも近いということで、それをですね、言い混じってたくさんの単語がオランダ語から入ってきてもおかしくないという、そうした歴史的地理的条件っていうのがまずあったわけですよね。
それでですね、非常に長い期間にわたって、この両国というか両地域は密接にコンタクトを取り続けてきますので、大量の単語が、しかも長期間にわたって取り込まれたということになります。
その中には、かなり日常的で馴染みのある単語ですね。これも意外と多いんです。いくつかピックアップしてみたいと思うんですけれども、例えばですね、13世紀ぐらい、これ人頭税というポールタックスと言いますよね。
ポールっていうのは、世論調査っていう意味では普通に使われますが、このポールという単語ですね。これなんか13世紀にオランダ語から入ってきたものです。
それから、クロック、これ時計ですよね。クロックなんていう単語も入ってきました。これ、エドワード1世が招いたフランドルですね、の時計職人によって持ち込まれたということで、これは14世紀ぐらいですかね。
それからピッコー、これ複数形がピッコース、ピクルスですよね。それから食べ物飲み物関係ではビールに欠かせないホップというのも、これもオランダ語です。
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それから海事関係、海洋関係ですね。ブーイ、これ海に浮かばせるブイですね。それからローバー、これ海賊船ですよね。
それからスキッパー、小型の船の船長ですね。スキッパーって言いますね。15世紀ぐらいになるとデック、これデッキです、船の。それからフレイト、貨物ですね。
それから他に商業関係っていうのはありますね。例えばグロートというと、これグロート銀貨、銀貨の名前です。それからスレッド、スレッドというとこれソリですよね。
他にはギルダー、オランダの古い通貨ですね、ギルダー。それからマート、これなんかもう日本語にもなってますね。
なんとかマートというスーパーマーケットにあるような、つまりマーケットの意味なんですが、これはオランダ語から入ったものなんですね。
他に中世の間にですね、動詞としてはスナッチ、引ったくるってことです。それからタックル、タックルする、これなんかもオランダ語なんですね。
他には重要な単語としてラックンですよね。このような重要な単語もオランダ語から入ってきているということになります。
今挙げた単語の多くはですね、中世の後期ですね、中英語期の後期から初期近代英語期にかけて、世紀で言えば14、15、16世紀から17世紀も含めてですかね、このあたりがオランダ語からの釈用語のピークと言っていいと思うんですね。
それ以前にもそれ以降もですね、あるんですけれども、大体このあたりの14から16、17世紀というあたりにどんどんオランダ語が入ってきているということなんですね。
では全部でどれぐらい入ってきているのかというと、これが実にですね、数えるのが難しいという事情があるんですね。
というのは、オランダ語、冒頭で述べたように英語と非常に近い関係にあるので、語形がほとんど一緒というケースが少なくないんですね。
そうするとオランダ語から本当に取り入れたのか、それとも元々の英語なのか、そのあたりのですね、境目、区別っていうのがなかなかつけにくいという事情があるんですね。
ですので、ほぼ語形が同じ単語に関しては、オランダ語からの影響と言いますか、作用で生じた語なのか、あるいは元々英語にそうした形のものがあって、たまたまあの文献上ですね、14世紀とか15世紀とかに現れたというものなのか、判別することはできないということなんですね。
なので、極端なケースでは、研究者によれば5000語を超えるんじゃないかというような試算があったりします。
この数字は少し行き過ぎかもしれません。オランダ語から入った可能性のあるものをすべて勘定に入れるとこれぐらいということで、この中には実際にはですね、英語本来語であるものっていうのも相当数含まれているかもしれないんですけれども、
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伝統的な英語史の記述ではですね、オランダ語の釈用語っていうのは比較的限られているというふうに言われてきたんですが、言ってみれば語形の判別がつかない場合に、それをオランダ語からのものだというふうに一気にそっちに算入すればガクッと5000とかね、そういう数になりますし、
それを一切算入しないということであれば、グッと減るということで、この辺の態度の取り方っていうかですね、これに左右されるので非常に幅があるっていうことなんです。ですが、ポテンシャルとしては意外とオランダ語の影響は大きいということが言えると思います。