2025-05-18 09:53

heldio #302. 疑問詞 what の副詞用法?

#英語史 #英語教育 #英語学習 #疑問詞 #副詞 #副詞的対格
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サマリー

今回のエピソードでは、疑問詞「what」の副詞用法について詳しく分析しています。特に、歴史的文脈における使い方や、特定の文例を通じて理解を深めています。

疑問詞 what の基礎理解
おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶應義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも、辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題は、疑問詞 what の副詞用法、という話題ですね。
普通、疑問詞のwhatと言えば、これ何って意味ですから、名詞に対応するということが多いわけですよね。
例えば、what happenedとすれば、主語の名詞あるいは名詞句の代わりにと言いますかね、そこの部分を聞いているということで、名詞に相当するわけですよ。
同じように、what do you likeという時、これ目的語ではありますが、likeの目的語でありますが、やはり名詞ですね、名詞句の代わりとして使われているという意味で、疑問代名詞ということなんですね。
whatの典型的な用法です。
とすると、副詞用法というのは妙な感じがするんですけれども、ただ一般の名詞や名詞句でも、副詞用法というのがありますよね。
例えば、this year、今年という時、この2語で名詞句なわけですが、実際的には時間を表す副詞句として機能しているということが多いですよね。
next weekであるとか、last monthのような時間表現なんかに多いわけですね。
このように名詞あるいは名詞句がそのまま副詞的に用いられる例というのはかなりある。
ということはですね、典型的にこの名詞の代わりの働きをすることの多い疑問詞、whatにだって副詞用法となるものがあっても、これはおかしくないということになりますね。
具体的に言うと、どういう例があるかというと、in what way、どの点で、in what respectと言い換えてもいいですね。
どの程度、to what extent, to what degree, how much、ぐらいの意味合いで、what単独で使われる例があるんですね。
これは小英語からの伝統です。むしろ小英語、中英語大当たりの方が、今よりもずっとよく使われていたということなんですね。歴史が長いということになります。
その中で、現代に残っているものはですね、その限られた一部と言いますか、定型的な表現ということになるわけなんですけれども、
例えば典型はですね、こういうのがありますね。新約聖書のマルコによる福音書、八章の三十六節はですね、こんな風になってますね。
副詞的用法の例
For what shall it profit a man, if he shall gain the whole world, and lose his own soul?
これは、人が全世界を儲けても、自分の命を損したら、何の得になろうかということですね。ポイントはこの、何の得になろうかっていう部分なんですけれども、
What shall it profit a manっていうことなんですね。つまり、それが、a man、人に何の得になろうかということです。
これですね、現代的な文法の見方によりますと、このプロフィットっていうのは多動詞なんだ。人に何々を益する、何々という得を与えるというような形で捉えれば、この文法に来ているWhat shall it profit a manのWhatっていうのは、あくまでプロフィットの目的語である。
つまり名詞、名詞句である。それがWhatになって前に出てきているだけなんだ。これは通常の多動詞の構文なんだっていうふうに考えるのが一般的かと思うんですね。
実際、辞書を引きますとプロフィットはこの意味で、人に利益を与えるであるとか、人に何々を益するなんていうような使い方で載ってますね。多動詞なんだと。
しかし歴史的にはですね、このWhatはプロフィットの目的語というわけではなくて、今日のポイントであるいかなる点でとか、どの程度という意味を表す、いわば副詞的に使われているWhatなんだっていうことになります。
言い換えればですね、ここはWhat shall it profit a manっていうことですが、別の言い方をすればIn what way shall it be helpful to a manというぐらいの意味だっていうことですね。
どの程度あるいはいかなる点で、それは人にとって役立つことなんだろうかというような解釈が成り立つっていうことです。
このような助ける形って言うんですかね、役する形の単語はこのように使われることがあって、availという動詞も同じような使い方しますね。
例えばWhat does it avail to do so?
そうすると何がいいことがあるの?というぐらいの意味ですよね。
この場合も、avail自体は自動詞で、どの点で、いかなる点で、in what respectぐらいの意味で使われている、副詞的に使われているWhatということになります。
What does it avail to do so?
やはりこれも現代では普通の辞書によれば多動詞の用法なんだっていうことになっていて、あたかもこのWhatはavailの直接目的語であるというふうに捉えられているわけなんですけれども、
歴史的に言うと、Whatの副詞としての用法なんだという、そういう見方になりますね。
どちらが正しい解釈かっていうことを言っているわけではないんですね。
これ両方を事実であると。
これを表示的に見るとうんぬんかんぬんとか、通時的に見るとうんぬんかんぬんという言い方をするんですが、
歴史的視点から見る用法
共時的に見れば、つまり現代の英語の仕組みからすると、これは多動詞と見ておいて特に問題はないわけですね。
ところが通時的、これ歴史的とも言い換えられますが、通時的に見ると小英語から続くWhatの副詞用法、その流れを組んでいるということで、
これはまた歴史の観点から見ると、ずっと実続きで続いているという、そういう歴史的事実があるっていうことですので、
どちらで解釈しても良いし、どちらがより良い解釈っていう話ではなくて、見方が違うっていうことなんですね。
これはですね、profit availのような非常に限られた公文の中に、その痕跡を留めているっていうことなんですが、
現代と言わずとも近代の時期ですね。1500年から1900年ですが、これくらいの比較的近い最近になりますと、もっといろいろ例は上がってきてですね。
例えば、テニソンなんかですね、こんな使い方をしています。
What are men better than sheep or goats?
のようなことですね。これどういうことかというと、いかなる点で人は羊やヤギですね、よりも良いのか優れているのかっていうことで、
in what respectと言い換えたいところですね。ところが、What are men better than sheep or goats?というふうに言っていると。
さらにはですね、こんな例もありますね。
What do we care about books?
これはどの点でとか、なぜにも近いかもしれませんけどもね。
どうして我々は本のことを気にかけるんだろうかというような文ですね。
What do we care about books?
このような例がありまして、現代では確かに限られたところにしか出てこないですし、
多方、統合分析をして解釈するというよりはですね、こういう言い方があるんだと、周辺的な言い方だけれどもあるんだくらいに認識していることが多いかと思うんですが、
歴史をひも解くとですね、公英語からレイメントを受け継がれている用法ということになります。
もう少し詳しく言うとですね、この公英語からあったというファットの副詞用法なんですが、この使い方のファットというのは、公英語では対格に置かれていたんですね。
Accusativeと言いますが、いわゆる直接目的語の格です。
そしてこの対格っていうのは、普通何々を、という動詞の目的語になるという使い方が一番多いわけなんですが、そのままでですね、実は副詞としても使われるんですね。
副詞的対格ということです。
先に言い述べた、This yearであるとか、Next week、Last monthみたいなものも、あえてですね、歴史的繋がりの中で格という概念を持ち込むと、これは対格ということになるわけですね。
現代の英文法でも副詞的対格なんていうことがあるわけなんですが、まさにその例ということになります。
今回の、What shall it profit a man?であるとか、What does it avail to do so?のような構文を見かけたら、この今日の話題ですね、思い出してもらえればと思います。
それではまた。
09:53

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