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2025-03-30 12:26

hellog-radio #25. なぜ th にはスとズの2つの発音があるの?

#英語史 #英語学習 #英語教育 #子音 #発音 #有声音 #無声音
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サマリー

英語の「th」音には無声音(ス)と有声音(ズ)の二つの発音があり、特に機能語と内容語の位置によって発音が異なる傾向があります。歴史的背景から、語中では有声音として発音されることが多く、古英語の規則に由来する現象がいくつか見られます。

thの発音の基本
英語に関する素朴な疑問。 なぜ th にはスとズの2つの発音があるのですか。
確かに th で綴られるものには、スとズの2つの発音がありえます。 例を挙げますと、まずスの方ですね。
THING, THINK, THIEF, THERAPY, THORN, THUNDER, THROW などがありますね。
他には NORTH, SOUTH, BATH, BREATH, MOUTH なんていうのもあります。
一方、ズと濁るもの。これもたくさんありまして、例えば THE, THIS, THAT, THESE, THOSE, THEN, THERE, THEY, THERE, THEM, THEIRS, THOUGH
他には WITH, WITHOUT のようなものもあります。 このようにTHには、
声音と濁音に相当するスとスの2つがあるわけですが、これはどのような分布になっているかということなんですね。
音声学では、この声音に相当するものを無声音、声がないと書く無声音と呼んでいます。
一方、この濁る方の発音ですね、濁音に相当するものを有声音と呼んでいます。 つまりTHで綴られるものには、
単語によって無声音で発音されるものと有声音で発音される2種類がある。
この区別は綴り事情はつかないわけですが、じゃあどのように単語の中で分布しているんだろうかということです。
これは決定的な答え。こうであれば必ず無声音で、この場合には有声音とはっきりしたことを100%は言うことはできません。
機能語と内容語の影響
そのようなルールはありません。しかし、ルールはないとはいえ傾向を知っておくと役に立つ傾向はあります。
これは英語詞に関することです。2つここでは指摘したいと思います。
まず元々の考え方は無声音、つまりTHと濁らない方の音ですね。THINK、THING、THEEFのようなこの濁らない無声音がまず元にあった。
現在でもデフォルトであると考えていいと思います。それがある環境ある条件の下で歴史的に有声化し、つまりTHと濁っていったということです。
ではこの条件が何かということを知っていれば良いということになります。およその条件環境ということですが、2点挙げます。
1つ目、これは機能語と呼ばれる単語においては有声音で発音されること、つまりTHで発音されることが多いという事実です。
全てとは言えないかもしれませんが、これはかなり傾向としてはっきりしています。先ほど有声音で挙げた単語をもう一度読み上げます。
これらは代名詞であるとか、接続詞であるとか、前置詞であるとか、いわば内容を持った単語というよりは文法機能を表す語、つまり語彙として暗記するというよりは文法として学習していく単語という感じがするかと思うんですね。
これらを機能語と言っています。一方THING、THINK、THIEF、THERAPYなどのいわゆる名詞であるとか、THROWのような動詞であるとか、実質的な意味をしっかり含んでいる内容がある単語ですね。これを内容語と言っています。
単語は大きく分けると語彙的な内容語とどちらかというと文法的な機能を表す機能語というふうに大きく二つに分けられるんですね。その機能語の場合にTHはずっと濁って発音されることが非常に多いということです。これは非常にポイントが高いですね。傾向としてはっきり指摘できます。
これはなぜかと言いますと機能語というのは弱く発音されることが多いんです。そしてエネルギーが弱く発音されるということは実は優勢化、声を出すということと一見矛盾しているように思われるかもしれませんが相関関係があります。弱く発音されるもの、代名詞であるとか接続詞、前置詞のような実質的な意味は持たないものというのは英語では弱く発音され、
一方名詞、動詞、形容詞、副詞のような実質的な意味を担っているものは強く発音されるというような対立関係があります。機能語というのは弱く発音されるということは優勢音になりやすいということなんですね。これが機能語。機能語というのはどんな文にもある意味が現れますから非常に頻度が高い。THEとかTHIS、THEとの類です。
こういうものこそ、つまりTHEと濁った優勢音で現れる可能性が高いということです。これも昔は全て無声音、デフォルトのTHEだったのですが、15世紀から17世紀くらいにこの弱く発音される機能語において優勢化したという経緯があります。
さて、これが1点目です。2点目。主に今まで挙げた機能語の例は、語頭であるとか語末に問題のTHが出るというケースが多かったんですね。THEもTHISもそうです。WITHとか、そうですね。
ですが、語中に関しては機能語、内容語という区別は関係なく、つまり内容語でも、語中にTHが現れる場合には優勢音となることが比較的多いです。これも2つ目の傾向です。
これは15世紀、17世紀という先ほどよりももっとずっと遡りまして、実は古英語の時代、今から1000年ほど前の時代に遡ります。デフォルトはTHはフと無声音なんですが、実は語中に入ってその前後に別の優勢音、典型的な母音のようなものがあると、
挟まれたTHは、もともとデフォルトは無声なんですが、優勢化しなければならないという発音のルールと言いますか、発音の癖ですね。これがありました。これで説明できる言語が現代語にもいくつか残っています。
例えば、方角の北を表すNorth、これは語末ですね。なのでデフォルトのTH、無声で読まれるんですが、そこに形容詞化するERNという語尾をつけます。そうしますとNorthにERNとついて、TH自体は語中にはまることになります。前後は優勢音に囲まれています。したがってNorthernというふうに濁るわけです。
同じように、南、South、これ単体では無声音のTHで発音されますが、Southernとなるとこれは優勢音で発音されます。何らかの語尾がつくなどしてTHが元の語末ではなく語中の位置どりになると、これが優勢化しやすいということです。これは完全に古英語の発音の規則に由来するものが、現代でも生き残っているということです。
他に例えば、お風呂、Bathに入る、入浴するというのは、つづり字上はEをつけて、Bathと濁って発音されます。Bathに対して、動詞はBathとなります。
これもつづり字Eが最後につくことによって、TH自体は語中にやられることになります。なので、古英語の規則に照らして、このTHが濁るということです。
同じように、名詞、息はBreathですが、息をするという動詞になると、Eを語末に加えます。そして、Breatheというふうに、濁った優勢の発音になるということになります。
他に、類例ですが、先ほどのBath、入浴、バスですが、これを複数形のSをつけると、多くの人は、そのままBathにSをつけて、Bathとなるのではないかと思います。
確かにこの発音はありますが、実は同じぐらい頻繁に、濁った発音になります。Bath、Bath、単数だとBathに対して、複数だとBathとなるということです。
同じように、若者を意味するYouthといいますね。これ、単数形、一人の若者という意味ではYouthというふうに無性ですが、ここにS、複数形のSをつけると、実はイギリス英語では、かなり高い割合で、実はYouthというふうに、濁った発音になります。
アメリカでは比較的、これは少なくて、そのままYouthと、無性で複数形を発音するという傾向があるようですが、これも遡れば、後英語の発音規則に由来します。千年の歴史を持っているということになります。
この2点、機能語、非常によく使う文法的な単語ですね。機能語においては、THは有声音で表れることが多いということが1点。そして2点目は、内容語であれ語中に入ると、語中に入ると有声音となることが多いということです。
発音の歴史的背景
最後にですが、実はこの2つの傾向は、THのみならず、他にFで表される音であるとか、Sで表される音にもある程度は通用します。例えばですね、OFと書きながら、あの前置はOVと発音します。これはOVが弱く発音される機能語だからです。
もともとはFだったんですが、これがですね、弱い発音の中で有声化していくということです。他にSに関しては、IS, DOES, HASというのもそうですね。これも本来はIS, DOES, HASだったんですが、機能語に属する語ですので、これが15世紀から17世紀の間に濁って、IS, DOES, HASになったということ。
複数形のドレに関しても、例えばLIFE、生命、命ですね。これ複数形になるとLIFESというふうに濁ります。これは複数形のSが付くことによって、F自体は語末ではなくなって、一種語中という位置づけになるからです。同じようにWOLF、WOLVESというのもそうです。
他には、イレギュラーとされていますが、実際には歴史的に説明できるものとしてHOUSE、家の複数形はHOUSESというふうに濁ります。これも千年の歴史を持った音の特徴、発音の傾向だということです。
これらの問題につきましては、ヘログの記事858番と1365番をご覧ください。
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