疑問詞「who」の発音の謎
おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
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今回取り上げる素朴な疑問は、なぜ who はこの綴字でフーと読むのかという綴字と発音に関する話題です。
この単語は品質語ですので、WHとこれを見た瞬間にフーと発音できるかと思うんですが、よくよく考えると、なぜこれでフーという発音になるのかというのは、実は非常に消せないんですね。
いわゆる疑問詞ですから、WHで始まるものが多いですよね。
what, which, when, where, why のように、W音で始まるわけですよね、普通ね。
ところが、このwhoに関しては、同じWHで始まっていながら、W音ではない。つまりwoとかwooとかではないんですね。
あくまでHの方を取って、whoということなんですね。つまり、Wがないかのような発音になります。
それから、母音字の方も少し気になるんですね。
これはWHOですね。Oで終わる単語として、品質するものといって、すぐに思い浮かぶのは、goってのがありますね。goとかnoとかsoというふうに。
Oで終わる場合には、だいたいOってなることが多いんですね。
実際には、wooとなるものもあります。少数派ですが。
例えば、doのdoがそうですね。
それから前置のto、toというのもそうです。
なので、これ自体は、他にも例、仲間がいるわけなんですけれども、whoではなく、whoというふうに発音されるわけですね。
というふうに、語頭の詞音部分も、なんかうまくいってない感じがしますし、語末の方もですね。
Oと書いてwooと読む、比較的少数派の類になるわけですが、なぜこのような珍妙なスペリングで、そしてこれをwhoと発音するのか、この謎に迫ってみたいと思います。
さて、この誰を意味する疑問詞ですが、1000年前の古英語の形は、HWAというふうな綴りだったんですね。
WHではなく、HW。そして、母音はAで綴られていました。
これ全体として、ふわーというふうに、読んで字のごとく、HWAですから、ふわーというふうに発音されたんですね。
さあ、これがですね、どんどん変わってきます。
まず母音が変わります。ふわーだったものが、このあーがですね、中英語記になって、おーというふうに、後ろ寄りの母音になりますね。
ふおーになります。ふおーです。
さらに、このW音の影響でですね、母音の開きが狭まるというんですかね、高い母音になって、おーではなく、おーになるんですね。
おーからおーになります。そうすると、ふわーだったものが、ふおー。ふわーだったものが、ふおーになるわけです。
そしてさらに、近代英語記にかけてですね、これがもっともっと高い母音になって、おーがうーになってしまうんですね。
ふおーだったものが、うーになります。ふおーだったものが、ふうーになります。
そしてこのふうー、HWUとでも書きたいような、このふうーという発音から、Wの部分、C部分が落ちて、ついにふうーに至ったということなんですね。
かなり長い道のりですけれども、高英語から近代英語にかけて、いくつかの母音変化、そして最後にはWが落ちるという変化、おへてですね。
古英語からの変遷
はるはるふわーから始まって、ふおー、ふおー、ふうー、ふうーというふうに、口の中を舌が旅をしてきたんですね。
結果として、ふうー、現代に至るということです。
ずいぶんと変化したなと思うかもしれませんが、実はですね、これは前の放送でも取り上げたことがあるんですが、
2、数詞の2を意味する2ですね。これと非常にパラレルな変化をたどっているんです。
2の場合は、高英語ではとわーだったんですね。ふわーの場合と、HをTに変えれば、あとは流れは一緒なんです。
2に関して言いますと、とわー、とおー、とおー、とうー、とぅー、ということでTWOと書きながら、今は2というふうにW、つずりにはあるけれども発音されないということなんですね。
ふうーの場合と一つ違う点はスペリングにあります。スペリングが本来はHWAというふうにHWという順番だったんですが、
中英語記にですね、このスペリングがひっくり返ってWHになったことぐらいですね。これがちょっと2の場合とは違うんですが、発音として考えれば、たどったルートは、実は2と2というのはウリ二つということになるんですね。
単発ではない。こんな現象にすら仲間がいたということになります。
もう一つ似たようにWで書かれていながら、発音としてはですね、歴史の途中で落ちてしまったという例としてソードを挙げておきたいと思います。
剣、刀、剣ですね。ソード。これSWORDと書いて、Wがちゃんとつずり字には含まれているわけなんですが、
toとかwhoとかと同じように、歴史の途中段階まではちゃんと発音されていたWが発音から落ちてしまった。ところがつずり字では昔からずっと入っているということで末をかれたという具合なんですね。
こういった具合で、この小英語のファーが長い旅を経て、フーになったということなんですが、結果として非常に珍しいことにWHで書いておきながら、
Wの音、和行シーンではなくてHのシーンであると。フーという非常に珍しい例が生まれたことになります。
発音と綴りの関係
ところがこれも珍しいといえども、全く仲間がいないわけではなくて、少なくとも2語ぐらいは他にあります。
1つはこれはおなじみの単語で、hole。これはWがある方ですね。WHOLEのすべて、すべてのというあのholeですね。これ、穴のホールと同じ発音しますね。
つまりWがつずり字上はホールですね。すべてのの意味のホールには、Wがつずり字上あるにもかかわらず、発音上はそのWがないかのようにホールとだけ発音するということですね。
それからもう1つはforという単語があります。これはWHOREという単語で、見かけたことはないかもしれませんが、これバイシュンフという意味です。
これもWHで綴っておきながら、Hのように発音します。つまりfor、forということになりますね。
さあ、このように考えてみますと、whoという一見すると何の変哲もない非常に日常的なよく使われる単語ですが、こういう品質単語こそですね、非常に妙な発音だったりスペリングだったり、そして発音とスペリングの関係だったりするということが非常に多いですね。
WHO、見慣れていますが、これをwhoと発音できるというのはですね、一文字一文字分解して考えていない証拠です。
あのWHOというつながったあの字面、あれでwhoというふうに結びつけているのであって、いちいち分解していないということですね。
しかし英語詞の面白さ、英語詞でつづり字と発音を追いかけていくことの面白さは、このように一文字一文字分解していくとですね、どうしてこのつづりなのにこんなスペリングになっちゃうんだろうということが続々と出てくるんですね。
しかも日常的なよく使う単語にこそこういう傾向が実は高いですね。例外的な振る舞いをするということが非常に高いということで。
まず身近にある単語、スペリングと発音がうまく組み合わさっているかマッチしているかどうかということを考えると面白いと思いますね。
だいたい英語詞的には面白いそして深い経緯があってですね、今そのようなつづり字と発音になっているんだということが多いですね。
それではまた。