2025-06-17 15:43

heldio #332. north はノース,northern だとノーザン?

#英語史 #英語教育 #英語学習 #子音 #古英語 #th
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サマリー

今回のエピソードでは、英語の「north」とその形容詞「northern」における音の変化を探求しています。古英語の発音規則が現在の英語にどのように影響を与えているかについて説明されています。また、ポッドキャストでは、英語の音素の変化や古英語における「TH」と「Z」の関係について議論されています。さらに、現代英語における文字と音の対応の複雑さについても説明されています。

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おはようございます。英語の歴史を研究しています堀田隆一です。 このチャンネル英語の語源が身につくラジオheldio では、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に
関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。 毎朝6時更新です。ぜひフォローして新しい英語の見方を養っていただければと思います。
northとnorthernの音の変化
今回取り上げる話題は、north はノース,northern だとノーザンと濁るわけは?
という素朴な疑問です。 方角の北を表すnorthという風に続きますが、これはnorthという風に
すんだ音ですね。これを無声音という風に言います。声がないということですね。 声帯が震えないということで、これは声がないと言いますが、いわゆるすんだ音です。
ところがこれにernという語尾が付くと、北の、北方のという風に形容詞形になるわけですが、この場合
northernという風に、thの部分がですね濁る、有声音、声がある音になるということです。
声帯が震えるということですね。northに対してnorthernということです。 これは逆の方角である南も同じですね。
southという風に無声音ですが、southernという風に、母音もですね短くなったりするんですが、今注目しているのはですね、このthの部分ですね。
southに対してsouthernという風に有声化するわけです。濁るわけですね。 これは何なのかということです。
実はこの現象は、古英語、今から1000年ほど前に話されていた英語ですね。 古英語の時代には規則的な発音の変化がありまして、それがですね、その効果が今にまで残っているという面白い現象なんです。
どういうことかと言いますと、このth音ですね。 これは古くからある英語にある音で、いわゆるス、ス、スって音ですね。
ですが時にはズ、ズ、ズという風に濁った有声音になります。 この点では今と1000年前とですね、全く変わらないんですね。
同じようにthサウンドがあって、スの場合とズの場合、無声音の場合と有声音の場合があったということですね。
ところがですね、現代の英語では、いつスと無声音で読んで、いつ有声音のズと読むかっていうのは単語ごとに決まってしまっていて、これ暗記するしかないんですね。
本当のところ言うとですね、現代語にも傾向があって、例えばtheとかtheyとかthis、that、この類ですね。
いわゆる機能語と呼ばれている文法的な語においてはですね、だいたい濁ります。
the、they、this、that、these、those、thoughとかですね。
一方で、そうでないものに関しては、例えばthingとかthanksであるとかthinkもそうですけれども、このように濁らない無声音になることが多いということですね。
ただ傾向はあるとは言ってもですね、最終的にはやはり一つ一つ単語ごとにですね、このTHが濁るんだとか濁らないんだということを覚えていく必要があるということなんですね。
さあ、1000年前の語彙語ではどうだったかと言いますと、確かにふと無声音の場合とずと有声音の場合っていうのはあったんですが、これは暗記する必要はないんですね。
単語の中のどこにこのTHサウンドが現れるかということによって、どういう環境に現れるかによって、無声になるときと有声になるときというのが完全にルールとして決まっていました。
ですので、いちいち単語ごとに暗記する必要はない。そのルールを一つ知っておけば良いということなんですね。
じゃあそのルールって何だったのかと言いますと、一言で言いますと、この問題のTHですね、これはある単語の中で正規するときに両脇、前後ですね。
あるいは綴りで言えば左右ということになりますが、左右を有声音に挟まれていた場合には、フ自体も有声化してフになる、こういう規則です。
つまりデフォルトとしては無声音なんですね。つまりフフフって音なんです。
ところが両脇を有声音に挟まれた場合、有声音というのは典型的には母音というのは全て有声音ですね。それからL、Rのようなものもそうですし、M、Nのような音もそうですね。
有声音は他にもありますけれども、典型的には母音であるとか、L、Rあたりですね。
このあたりに挟まれるとですね、本来デフォルトでは無声音であるはずのフ、THのこのフの音が周りに囲まれるためにですね、自分自身も有声化してしまうということです。
そうするとですね、最初の今回の表題の謎が解けるということになります。
このNorthなりSouthなりっていう単語は非常に古い単語なので、古英語にもありました。North、Northなんて発音だったんですね。
この単体、北を意味する単体の名詞としてはNorthというふうに、最後のこのフですね、THは語末ですので、絶対に両脇を何らかの音に挟まれるってことはないわけです。
ですので、直前に現れるRという音は確かに有声ですが、THで単語は終わりです。その右側に何も来ないということになりますので、これはデフォルトのフという無声音ですね。
これで実現されてNorth、Northとなったわけです。
ところが、この名詞Northに形容詞語尾を付けます。
形容詞語尾っていうのは当時からですね、ERNみたいな形だったんで、これを付けるとNorthにERNというですね、語尾が付きます。
そうすると途端に問題のTHは直前のRと、後ろには新たに付け加わったERNのこのEという母音ですね。
これ有声音です。有声音に挟まれるという環境に突然なるわけですよ。
THにとってはですね。そうするとルールに従って濁るということでNorthWernとなるわけですね。つまりNorthに対してNorthWernとなるわけです。
同じように南もですね、当時の発音はSouthという、少し母音が違いますがこれSouthになっていくんですね。
単体名詞ではSouthとなりますが、これにERN、形容詞語尾が付くとですね、Southernという風に濁る。
この時の規則がですね、この規則自体は後の時代にもうなくなってしまったんですが、古英語の時代にあった規則に従って出来上がった発音。
つまりNorth、NorthWern、South、Southernがですね、そのまま現代に引き継がれているということなんですね。
現代となっては、そんなルールはもうないですし忘れ去られていますので、生産的にですね、これを適用するということはできないんですが、
古英語時代に適用された結果がですね、ルールそのものではなく、ルールが適用されたその結果の形がそのまま現代まで残っているので、
North、NorthWern、South、Southernという形になっているということなんですね。
これは他にもですね、いろいろと類でがありまして、調べてみると面白いんですけれども、
例えばですね、お風呂のことバーフ、バーフと言いますね。これTHがあって濁りませんね。ところがこれを動詞形にするんですね。
お風呂に入るとか、水浴するなんてすると、これ動詞形を作るのに語尾にですね、ちょこちょこっと古英語の時代には後ろに何かついたんです。
今も実はEという語尾として残っていますが、これによってTHは前のAとその動詞を作るEに囲まれることになるので、
母音も変わっちゃいますけど、BatheというふうにTHの部分が濁ることになります。つまりBathに対してBatheとなりますね。
それからCloth、布です。これが複数形になるとClothes、
英語の音素の変化
ズズというふうに濁ることになりますね。これ衣服という意味になりますが、他にTHだけではなくてFとVの関係も実は同じで、これによって
Fiveに対してFifthというふうに同じ語源のはずなのに、Vと読む時とFと読む時がありますよね。
他にWolfの複数形としてWolvesとか、Leafの複数形でLeavesとか、これもかの小英語のルールに基づいているんですね。ではまた。
今回の放送の後にコメント質問をいただきました。無声音であるTHと有声音であるZの対立は小英語からあったとのことですが、
この2つは異なる音素であると認識されていたにもかかわらず、その文字表記は小英語自体からTHと同一だったのでしょうか。
他にも異なる音素で文字表記が同じという例はあるのでしょうか。ということでした。
これに対して文字で書いていたら少し長くなりそうなので、しゃべってしまおうということで、こちらの放送に付け足す形でですね、
声のアンサーとしたいと思います。
まず第一の質問の方なんですけれども、この2音ですね、THとZというのは音素として対立していたわけではないんですね。
放送内でも述べましたが、いずれの音になるかというのは単語内での位置、音環境と言いますが音環境によって完全に決まっていたということになりますので、
専門用語で言いますと、いわゆる双方分布をなすということになるんですね。
そうすると音としてはTHとZ、無声音と有声音ということで違うわけなんですけれども、これを組み合わせて一つの音素というふうに考えるわけですね。
音韻論ではこのような考え方をします。
したがってこの2つの音というのは1つの音素である。その1つの音素の中の2つの異音に過ぎないというようなことになりますね。
つまり、小英語では1つの音素だったわけですので、それに対して1つの表記が対応していたということになります。
つまり1対1のこれはある意味綺麗な体系なんですね。非常にストレートな体系ということになるわけです。
ですので、この前半の第一の質問については前提がちょっと異なっていたということになります。
もう一言細かく言いますと、当時は現代的なTHという綴りですね、TとHを組み合わせて2文字で1つの働きをさせるというような、これではなくて独特の文字があったんですね。
この文字には実は2種類、ソーンと呼ばれる文字とエズと呼ばれる文字が2つあったんですけれども、それぞれが無声音と有声音に対応するというわけではなくて、無声音も有声音もどちらにもなり得る。
この2つの文字のどちらもいずれの音にも対応し得るという点では、やはり1つの音素に対して、本当は2つ文字があったんですが、同一の表記、1つの表記に対応しているとみなすことができるということになります。
このことを確認した上で、第2のご質問について考えたいと思うんですけれども、他にも異なる音素でありながら、文字表記は一緒、1つの書き方をするという例はあるのでしょうかということですが、現代英語にはそのような例がむしろ多数あります。小英語よりもたくさんあります。
現代英語の複雑さ
放送で触れたこととも関係するんですけれども、例えば現代英語でSの文字ですね。これは通常スに対応するかと思いきや、ズに対応する場合もかなり多いですね。
例えば、ハウス。これは名詞としてのハウスはですね、SEと綴っておきながらスに対応するんですが、動詞としてのハウズというのは同じSEの綴り字でありながら、これズの音に対応するわけですよね。
それからFという文字もですね、基本的にはフという死因に対応するわけなんですが、これは例外中の例外と言えますが、例えばOFと綴るとこれオムというように、Fと書きながらVですね、Vの音に対応するということになります。
他にはYの文字ですね。これは例えばイエアーという時には死因のギという音に対応しますし、一方でシティみたいに語末にですね、TYのように現れるこのYはあくまで母音イに対応するわけです。
つまり異なる2つの音素にですね、対応してしまっているという音になります。
それからWという文字もそうですね、死因に対応する場合もあります。例えばワークということですね。
一方で母音に対応すると見えるというものもあります。例えばハウなんていう時のHOWというのは、Wに対応するように見えると思うんですね。
このように探してみると、現代英語においては実はですね、ほとんどの文字やあるいは文字の組み合わせは単語に応じてではあるんですけれども、2つあるいはそれ以上の音素に対応しているのが通例です。
したがって第2の質問につきましては、そのような例がありますかということなんですが、たくさんあるという答えになります。
以上が回答です。
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