needsの基本的な意味
おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
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今回取り上げる話題は、どうしてもの副詞 needs についてです。
この needs、必要とする、必要という意味の一般的な単語がありますね。これに s をつけて needs とすることで、なんと副詞としての用法があるんですね。
ぜひともとか、必ずとかですね。いやをなくとか、いろんな訳し方があるわけなんですが、どうしてもというあたりですかね。
基本的な意味はそういうことなんですね。
s がつくし、いかにも副詞っぽくない、むしろ名詞の複数形のような気がするわけなんですが、これについては以前の放送でも話したことがあるんですけれども、
この s ですね。これ属格、所有格の s と起源的には一緒なんです。今でいうと、この所有格の s っていうのは何よりものという、まさに所有の意味ですよね。
で使われるのが普通なんですけれども、小英語、中英語ではですね、この s 当時は es というふうに、e もあったんですが es というこの所有格、あるいは当時は属格という、
属する除くですね、属格という呼び方なんですが、この語尾をつけることによって、普通の名詞を副詞的な働きにする、つまり副詞化する働き。
今でいうと副詞化っていうのは、ly の何とかリーっていうのが一般的ですが、ある意味それに似てますかね。
名詞に es がつくと副詞になるというような、そういう所有格、属格の用法っていうのがあったんですね。
それの生き残りです。これが needs ということで、どうしてもという意味で使われるものが未だに残っているっていう、ある種の生きた化石みたいなものなんですけれどもね。
副詞としての使い方
意味的に言って、must と一緒に凶器しやすい。つまり、どうしても、ぜひとも、必ず、せねばならぬ、ならない、違いないとかですね。
must と相性がいいっていうことで、must needs というふうに使ったり、あるいは逆転させて needs must なんていう使い方で、
未だに非常に must と相性のいい形で、副詞的な役割として残っているということなんですね。面白い用法ですよね。
例えば例文を具体的に挙げてみますと、he must needs come.
これどういうことかというと、彼はぜひ来ると五条を張って聞かない。絶対に来るよと言い張っているっていうような意味合いですね。
he must needs come のような言い方です。
そして、おそらくこれはよく知られているんですが、ことわざですね。背に腹はかえられぬという日本語のことわざがありますが、これに大体相当するのがこの英語のことわざです。
needs must when the devil drives.
これは悪魔が駆り立てる時にはやらざるを得ないということですね。
これ自体が省略で、例えば one needs must do when the devil drives のようなフルセンテンスがある種省略された形ですね。
悪魔が駆り立てる時には人はそれをやらざるを得ない。つまり背に腹はかえられぬみたいな訳になるわけですが、これは needs must という言い方をするわけですね。
それから他はですね。
人は眠るには嫌をなく横にならなければならぬというような言い方ですね。
a man needs must lie down when he sleeps ということですね。
この must だけでもいいんでしょうが、それをさらに強めるっていう使い方ですかね。
needs っていうのを前に置くあるいは must の後に置くという形で、絶対にとか是非ともとかどうしてもという風に強めるっていう感じですかね。
嫌をなく necessarily に近いですからね。
現代の言い方としては necessarily に近いわけですが、古くはこの need という必要ですね。
これを副詞的続格、副詞的所有格 s をつけた形の needs という表現が古くはあって、それがですね、現代まで生き残ったという比較的珍しい例なんですね。
古英語からありましたし、中英語でも続いていました。
歴史的な背景
ねえですのような形で es ですね。
ちゃんと音説を持ってたんですが、この es の e が後に消える形で、今 needs という形になったんですが、起源的には古英語からあるんですね。
このように古英語ではですね、本来名詞のものに続格、所有格の活用を施すことで、大体 es になるわけですが、こうすることによって副詞化すると、名詞を副詞化する働きがこの続格、所有格にはあったということで、
これがですね、まあ現代の例えば once, twice っていう何度の何回という、1回、2回、あの once, twice のすですね。
これあのスペリング上は ce と書きますが、これは非常にミスリーディングで、これもともとはですね、あの s に過ぎないですね。
つまり 1 とか 2 をこれを名詞と見立てて、これに続格、所有格の es を付けた形なんですね。
で、後にまあやはり e の部分、母音の部分が消えて once, twice なんていう発音になって、で、しかもスペリングも ce となったためにですね、この正体が分かりにくくなっているんですが、
実際にはこれはあのこの needs の s と同じ働きです。
で、さらにまあ once, twice っていうと頻度の表す語なわけですが、同じように頻度を表すものとして sometimes とか always っていうのがありますね。
あの s もですね、ぱっと見複数形の s でしょうと思うかと思うんですね。
ところがこれも起源的に言うとこの s はですね、決して複数形の s ではなくて、所有格、続格の s なんですね。
いわば今の apostrophe s に相当するもんだということです。
このように s を付けることで副詞を作るっていうのがあったんですね。
これがまあ小英語からの流れでいくつか形状、化石的に残ったものが今挙げたような needs だけでなく once, twice もそうですし
sometimes, always なんかの s もそういう語源、由来なんですね。
一方ですね、面白いことに小英語ではですね、もう一つ別の格、予格っていうのがあったんですが、
予格にするとやはりこれも副詞になるんです。名詞を予格と呼ばれる格で屈折する、活用するとこれまた副詞になるんですね。
なので、所有格、続格にしても副詞的な働きをするようになるし、同じように予格にしても副詞的に働くようになるというような形でですね、小英語ではそういう文法があったんですね。
この need に関しては、小英語では見えでとかねえやでって言ったんですが、これをまあ、所有格、続格にすると s が作っていますね。
だからねえです、これが needs になったんですが、実は副詞的予格、予格に活用しても基本的に同じ意味、どうしてもとか、いやをなく、ぜひともという意味だったんですね。
この副詞的予格の場合は語尾に e をつけるだけなんで、つまり s がないんですね。
e をつけるだけなんで、見えで、ねえやで、なんていう形で、やはり同じ意味で使われてたんですね。
これが中英語に言いかけても、そして近代英語にかけても、実は生き残って、つまり need と s がつかない形です。
予格、小英語の予格に由来する need っていう形ですね。
後ろに本当は e があるわけなんですが、にーで、みたいな。
この絵が消えちゃうので音変化の結果、結局 need っていう普通の名詞、動詞と同じ形で実は副詞もあった。
つまり副詞としての needs っていうのがある一方で、副詞としての need っていうのもあったっていうことで、これ OED を見ますとまだ背後になっていない。
一応今はもうあるってことになっています。
ではまた。