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2024-09-22 10:00

heldio #64. 名詞の所有格を示す 's って何なのですか?

#英語史 #英語教育 #英語学習 #所有格 #アポストロフィ
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おはようございます。英語の歴史を研究しています、慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも、辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる素朴な疑問はですね。 名詞の所有格を示す apostrophe s って何なのですか、というものですね。
これは英語の初級文法で習うことかと思いますが、名詞にですね、何々の、所有格の形を作りたい時には、この apostrophe s
これをつけるわけですね。ズとかスになります。 例えば、ジョンズハウスであるとか、ジャックスダークであるとか、メーリーズシスターのように、
まあ、アポストロフィーです。これでまあ、日本語で言えば何々の、という、この格助詞のに相当するものを意味するっていうことになりますよね。
これ自体は非常にわかりやすくて、まさに日本語ののに置き換えれば良いということなので、非常にシンプルに対応する。わかりやすいとは思うんですね。
だけど、この apostrophe s って、そもそもどういう由来なの、ということになると、知らない人が多いと思うんですね。
英語には s という語尾っていうのは非常に多いわけです。他にも、複数形の s っていうのがありますよね。
三単元の s っていうのもありますが、s というのは非常によくつくんですが、所有格の s の場合にはですね、書き言葉においてですが、
アポストロフィーをつけなければいけないということなんですね。他の、例えば複数形の s であるとか、三単元の s には普通アポストロフィーはつきませんね。
ところが、所有格の s の場合には、アポストロフィー s をつけなければいけないというルールがあるわけです。
そうするとですね、そもそもアポストロフィー、あの記号は何なのかということがまず気になってくるかと思うんですが、
このアポストロフィーという、チョンという記号ですが、これにはですね、大体皆さんも知っているかと思いますが、2つぐらい役割があるんですね。
1つは省略っていうことです。例えば it is を it という時に it アポストロフィー s とやりますよね。
同じように、例えば that is を that という時には that アポストロフィー s とやります。
他にも例えば I am を綴めた I'm っていうのは I アポストロフィー m というふうにやりますよね。
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つまり何かが間に省略されている時にですね、このアポストロフィーを使って、
何か本当はここにいくつかの発音とか文字があるからねということを示すという役割でよく使われるということは、これは皆さんも知っていることだと思うんですね。
こういったですね、省略の時にアポストロフィーを使うということなんですが、この発想自体は実は非常に古くからあるんです。
英語でもですね、アポストロフィーというあの記号ではなかったかもしれませんが、何かが省略されているよっていう時に、ある種の記号を使ってですね、省略記号ですね。省略を表すということは、小英語の時代から、そして中英語、近代語とずっと続いてきて、その記号の形自体はですね、いろいろと変遷してきたんですけれども、
現代、近代から現代に限っては、この我々が知っているアポストロフィーになったということで、これ自体は珍しいことではないんですね。
で、確かにこの省略を表すアポストロフィーというのは分かった。
だけれどもですね、それだけでもなくてですね、それ以外にもアポストロフィーは使い道と言いますかね、用途があるんですね。
その最たる例が名詞の所有格を表す、かのアポストロフィーSということになります。
別に何も省略されてませんよね。アポストロフィーSで、ジョーンズハウスという時に、何かが省略されているわけではないということになりますよね。
ところがですね、歴史的に言いますと、これは実はやっぱり何かが省略されているアポストロフィーSと見ることができるんです。
古英語、千年前の英語の姿ですが、この時代まで遡りますと、例えばですね、キングという単語を例に挙げましょう。王ですね、王様、キングですね。
これ王の息子と言いたい時、現代語ではキングズサン、キングズサンということで、書き言葉ではKINGですね、にアポストロフィーSでサン、S-O-Nですね、キングズサン。
これ当然のように聞こえますが、これ古英語ではですね、実はキンゲススヌというふうに、キンゲスというふうにESだったんですね。
これが所有格の実は屈折語尾で、ES、Sという部分が所有格を表すということだったんです。
これはですね、現代のドイツ語なんかにも対応するものがありますが、古い英語もですね、同じゲルマン語として似たようなところで、ただのSではなくてESというふうについたんですね。
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つまりキンゲススヌです。本当言うとですね、古英語はキングはキングではなくてキューニングと言ったんですが、キューニンゲススヌという形ですが、
この語尾だけ見るとですね、SだけではなくESだったっていうところがポイントなんです。
これがその次の時代の中英語にも受け継がれまして、キンゲススンとかキンゲスサンみたいな言い方になったんですが、このEの部分ですね、ESのEが弱まって結局なくなってしまったんです。
結局ですね、キングスサンというふうに現代の形になったんですが、ある意味歴史的に言えばESだったものがただのSになってしまった。このEが消えてしまった。音声の弱化によって消えてしまったっていうことなんですが、歴史的には見れば消えたということなんですが、もともとはEがあったよという、ある意味記録を残すためという言い方は言い過ぎですけれども、
ここにアポストロフィーをつけたわけです。本当はここにEの文字があったよということですね。そしてキングスサンという形になったんです。なのでこれもですね、実際にこのアポストロフィーは、もともと何かそこにあったよって意味で省略秘語、つまり、IT'SがIT'Sになって、そこに本当は何かが長いものがあって、それを綴めたんだよというような機能を果たしているわけですが、
それと同じようにですね、キングスサンの図の部分はですね、本当はSとかSっていうAの音が隠れてたんだよっていうことを示す意味では、ある意味では、やはり省略がここにあった。つまり、アポストロフィーは省略記号なのであるっていう言い方も、穴がち間違いではないっていうことになります。
ただですね、この理屈はちょっと微妙なところがあるんですね。なぜかというと、同じSとかSの音でも、複数形でもですね、冒頭述べましたように、名詞の複数形にもSとかSっていうのがあるわけですよね。
あれはじゃあ、何なのかと言いますと、小英語に遡るとですね、これはASに遡るんです。先ほどの所有格はESでしたよね。ですが、複数形に付く語尾はASだったんですね。つまり、キングに対してキングズというのが今の形ですが、小英語ではキュニングに対してキュニンガスというふうにASを付けると複数形になったんです。
そして、このASというのを付ければ複数形になったんですが、このAが弱まってSになり、最終的にこれ、さらに弱まって落ちてしまって、結局Sになるんです。つまり、所有格のESと複数形のAS、小英語の段階ではA、Aと異なっていましたが、これが区別がなくなり、最終的にはこの区別そのものがなくなって、
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母音自体がなくなってしまったんで、結局スとかズの音になっちゃうんですね。そういう意味では、例えば、複数のOという意味でキングズといった時のズもですね、歴史的には本当はAがあったはずなんです。キングガスというふうに。
で、これが省略されて、今キングズになっているので、表記上ですね、省略されているものにアポストロフィーを付けるっていうことであれば、複数形のキングズだってですね、アポストロフィーSにしなければいけないっていう理屈になるはずなんです。
ところが、そうなっていないということで、やっぱりただの省略の記号ではないっていうことになりますね。
それではまた。
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