親族名称の音の違い
英語に関する素朴な疑問。 なぜfather、mother、brotherでは-th-があるのに、sisterにはないのですか。
これを私も指摘されるまで気づかなかったんですけれども、 確かに最初にこの基本的な親族名称ですね、これを覚えようとした時に、ほとんどのものが-th-であるのに
sisterだけ-th-でなく、ただの-t-であるということですね。 これがすべて-th-で揃っていれば、非常に単語も覚えやすいのに、ということかと思います。
これは、なるほどなと思いました。 今のままで言うとfather、mother、brotherに対してsisterと、sisterだけが-t-で浮いているという見え方になります。
この問題は非常に面白いと思うんです。 なぜかというと、歴史的に言うとですね、実は浮いていたのはsisterではなく、brotherだからなんですね。
これはどういうことかと言いますと、まずfather、motherから考えましょう。 こちらは古英語、1000年ぐらい前の英語の形ですが、
その時代にはですね、この-th-の音はなくて、実は-d-の音だったんです。 つまりfather、motherというように-d-の音だったんですね。
father、motherという形です。 一方、兄弟を表すbrotherですね。これの古英語の形は、実は今と変わらず-th-の、濁った-th-の音を持っていたんです。
brotherという形です。brotherですね。
では、sister、姉妹を表す単語はどうだったかというと、1000年前、古英語の姿は、母音は少し異なっていますが、suéostr、suéostrというふうに、今と同じ-t-なんですね。
つまり、父、母はbを持っていたんです。 そして、兄弟に関しては現在と一緒でthを持っていた。
そして、姉妹を表す、このsisterに相当する単語は、今と変わらずtを持っていたということです。
つまり、d、d、t、h、tという形なんですね。 そうすると、sisterだけが浮いていたということにはなりません。
father、motherに対応する単語がfader、moder、ddできていますので、どちらかというと、この兄弟姉妹を表すbrotherとsisterに対応する単語が、それぞれ
thであったりtであったりというふうに、少し浮いているという感じになります。 ということで、sisterだけが浮いていたというわけではないんですね。
歴史的背景の探求
ここで第5の親族名称を投入しましょう。 これはdaughterです。
対応するsonですね。男性版のsonというのは全く別なんですが、daughterというのは、このterのように、ちょっとsisterに似た語末を示します。
では、小英語ではどうだったかというと、これはdaughterというふうにtorと続きましたし、発音もされたんですね。
つまりこれはですね、むしろsisterと同系列であるということになります。 とすると、4つではなく、この5つの親族名称を考えますと、父母兄弟姉妹娘、
この順に行きますと、詩音で考えますと、小英語の場合はddthttとなります。
つまり一番浮いているのは、実はbrotherのthを持っているbrotherではないかということになるんですね。
sisterが浮いているというのは現代の見方なんですが、小英語まで遡ると、実は浮いていたのは、この一番現代的には普通なはずのthだったんです。
brotherですね。
では、なぜfather、motherに対する小英語、father、motherというdを持っていたものが、なぜですね、現在thになってしまっているかと言いますと、これは中英語の後期以降です。
小英語から見ると、だいぶ先の話ですね。数百年先の話なんですが、数百年後にこのthの音になったということなんですね。
もともとはdの音でした。それが中英語の後期から近代英語にかけて、典型的に母音に挟まれたdというのがthになる例があったんですね。
つまりfatherだったものがfatherとなりましたし、motherだったものがmotherというふうにthになりました。
他にもですね、現在ではthを持っているけれども、実は昔の形はdだったというものがいくらでもあります。
例えばgatherなんてのもそうです。現在ではthですが、小英語ではgather。同じようにtogetherもそうです。小英語ではtogetherという形でした。
他にはweatherという単語はweatherでしたし、他にはheather、こちらにという意味ですね。これなどもheatherでした。
つまり母音に挟まれたdがthに化けるという変化が中英語の後期から近代英語にかけて起こったんですね。
これがfather、motherという単語にも効いて、現在となってはfather、motherというふうにthになるということなんです。
結果として現在ではfather、mother、brotherが共通してthを持つことになりました。
それに対してsisterは小英語から変わりなくtの音を持っています。そして確固して実はdaughterというのもあるわけですが、これもtのまま現在に生き残っています。
最初の四語で考える限り、確かに現代英語ではfather、mother、brotherに対してsisterというふうに最後のsisterが浮いているように見えるわけなんですけれども、
千年前にさかのぼるとむしろ浮いてたのはbrother、brother、昔からthを持っていたこのbrotherこそが実は浮いていたということがわかります。
英語詞のこの音の変化を見ていきますと、現在浮いているものが実は昔は浮いていなかったであるとか、
逆に現在普通のものが当たり前と思っているものが昔は浮いていたということが往々にしてあります。このあたりが英語詞の面白いところです。
この話題につきましてはヘログの698番、そして699番の記事をご覧ください。