youの不思議な役割
英語に関する素朴な疑問。 なぜyouは、「あなた」でもあり、「あなたがた」でもあるのですか。
英語という言語は、名詞において、単数か複数かを非常にはっきりさせようとする言語です。
studentに対してstudents。 それからdogに対してdogs。 bookに対してbooks。
このように、単数と複数を常にきっちり分けていないと、気持ちが悪いという言語なわけです。
ところが、youという会話上、ある意味最も重要な単語ですね。
愛と同じぐらい重要かもしれないという、この二人称代名詞に関しては、単数も複数もなく、you一語で済ませてしまうわけです。
これはどういうことかということですね。 youは単数のあなた、一人のあなたでもあり、あなたがた、複数のあなたがたでもあります。
そしてありません。 b動詞であれば、you areと一緒にありますね。 なので、文脈がわからないと、あなた一人のことを指しているのか、それともあなたがた、複数を指しているのかがわからないというのが英語なわけです。
これは単数と複数を常にきっちり分けようとする言語であるにもかかわらず、非常に不思議な現象というふうに見えます。
この不思議な現象も、歴史を振り返ってみますと、どうしてこうなったかということがよくわかります。
実は英語も古くは、しっかりと単数と複数のあなた、あなたがたを分けていました。
一人のあなたに対してはthouと書く、thouという表現ですね。 古英語の時代にはこれをthouというふうに呼んでいたのですが、現代でも一応辞書には残っています。
これが実は一人のあなた、あなたがたです。それに対して現代のyouに相当するものですね。
古英語ではyeahなどと言いましたが、これが複数のあなたがたなんです。つまりきっちり単数と複数、昔は分けていたということなんです。
これがどうして分け立てなくyou、一辺倒になってしまったかというのが英語史上の面白いところなわけです。
thou、you、これが古英語以来ですね、単数複数のあなたとしてしっかり区別されていたということは述べました。
ところが中英語の時代になりますと、大陸の諸言語、主にラテン語であるとかフランス語であるとかの監修の影響を受けまして、少し複雑な要素を呈してきたんですね。
このラテン語であるとかフランス語であるとかは、実はもうそうなんですが、他にヨーロッパの大きい言語は現在そうなんですが、あなたとあなたがた、2つきっちり分かれて単語がいるんですけれども、
ただこのあなたがたに相当するものですね、複数に相当するものが、実は非常に丁寧な単数のあなた単数にも使えるという現象が起こってきます。
英語で言いますと、thouとyouという2つの系列がありまして、本来はthouが単数、youが複数だったということでしたが、これが大陸の言語の影響を受けて違った状況になります。
現代英語の状況
何かと言いますと、この複数を表すyouですね、あなたがたという本来意味したあなたがたが、非常に丁寧な言い方であなた単数を表す場合にも使われるようになったということです。
逆にthouの方はそれられて、あなた一人なんですけれども、どちらかというと丁寧じゃない言い方というふうになりました。
つまり今や大陸の言語の影響を受けて、thouは単数なんだけれども、どちらかというと丁寧でない言い方、これを親性と言います。親しい言い方ですね。
親しみを持って相手にあなたという、あるいは親しみが過ぎて、軽蔑になってお前というような、どちらかというと下の方のあなた、お前というような表現になり下がっていきます。
一方youは複数のあなたがたという意味はずっと残っていますが、一方で丁寧にあなた単数のことを指すという表現ですね。
経緯を持って表現するということで継承と言っていますが、継承の二人称単数の表現としてなってきます。
つまりyouと言った時にすでに中英語大きいから曖昧になってきます。これあなたがたを指すのか、つまり複数ですね。
小英語からずっと続いてきたあなたがたという複数を指すのか、それとも丁寧なあなた一人を指すのかというような、場合によっては曖昧となり得る二つの役割をyouが果たすようになってしまったということです。
これは大陸の他の言語と同じ状況になったということです。そして大陸の他の言語でこの状態がずっと現代まで続いていると考えていいのですが、英語の歴史においてはまたちょっと変わったことが起こります。
中英語ではこのように大陸の言語の影響を受けて大陸風のthouとyouの使い方になったのですが、次の近代英語記になりますと少し他の大陸の言語で起こっていないことが起こります。
それは何かという蝶と心象、あなた一人を表すときに形象だとyou、それから心象だとthouという区別があったわけですが、それが英語ではなくなっていくのです。
これがなぜなくなったかというのは英語史上非常に重要な問題でいまだに議論は続いていますが、もし相手がthouで言うべき相手かyouで言うべき相手か、親しみをもってあなたと声をかけるか、丁寧さをもってあなた、あなた様というように声をかけるか、
この微妙な際の場合にどうしようかと迷うわけですよね。その場合、丁寧に出ていた方が問題は少ないだろうということで、不明の場合には丁寧な方のあなた一人、つまり形象の単数二人称代名詞であるyouを使っておくという傾向を常化してきたのではないかというのが一つの説です。
他にも説はあります。いずれにせよ、16世紀、17世紀という初期近代英語記を通じて、今まであったこのthouとyouの親称、形象という区別がなくなっていくのですね。
結果として、あなた一人であれ、あなた複数であれ、とにかくyouを使っておく、そしてthouはなるべく使わないでおくという傾向が故障しまして、最終的にはyou一辺倒になってしまった。それが現代のyouなわけです。
したがって、これはあなたでもあり、あなた方でもあるという、どっちかというと不便な、単数と複数を絶対に分けていたいという言語である英語にとっては、やや不便な状況が生じてきているということになります。
ただ、現代英語でも、実はその形象のyou、あなた一人なんだけれども丁寧に言うyouですね。この名残というものはありまして、例えば、女王陛下に対してyour majestyという時のyourですね。文字通りには、あなたなる威厳、あなたなる送礼というぐらいの意味なんですが、それで、女王陛下という意味になるわけですよね。
このyourというのは、形象のyouの所有格、名残ということになります。はっきりとは感じられませんが、実際に近代英語記までまだ残っていた、その心象、形象の区別の形象が適用された例ということになります。
さて、現代標準英語では、youとしてあなた一人、あなたがた、複数というのを両方表してしまうという、やや不便な状況になっていますが、標準英語ではなく、例えば方言であるとか、非標準的な英語を考えますと、この不便を解消しようという方向に実は動いています。
例えば、皆さんも聞いたことがあると思いますが、交互なんかで、you guys、複数形のyou、あなたたち、お前たち、君たちという時に、you guysと言ったりしますよね。you peopleと言ったり、you folksと言ったりします。
このように、交互レベルでは、実は単数のyouと複数のyou guysみたいなものを区別するのが実は出てきています。
他に、方言にもよりますが、youに複数形のsを付けたかのようなyou'sなんていう表現もあります。だから、you ones、これは、まあ、you onesですね。これなども、アメリカで使われていたりします。
ただ、これはまだ方言、あるいは交互的なレベルであって、標準英語ではまだ一般化していません。今後、標準英語でも一変となってしまったyouが、再びですね、交互の状態に戻る。つまり、単数と複数をはっきり区別する状態に戻るか戻らないか。これは非常に、今後の変化が楽しみなところです。
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