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おはようございます。英語の歴史を研究しています堀田隆一です。 このチャンネル英語の語源が身につくラジオheldioでは、英語に関する素朴な疑問に英語史の観点からお答えしていきます。
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不思議な文の紹介
本日の話題は He was a happy & sad girl
昔だったら意味が通ったはずの文 というヘンテコな話題です。今日は単語の意味変化のお話なんですけれども、今読み上げた文
明らかに変なわけですね。 意味的に
筋が通らない。 He was a happy & sad girl
ということですね。 2つの矛盾点がここにはあります。まずhappy & sad
っていうのが矛盾ですね。 幸せで
それでいて、悲しい。 レトリック的にはあり得るかもしれませんが、普通はこの2つは範囲語に近いもので一緒にならない
っていうことですね。 さらにHe was a happy & sad girl
ということで、Heなのにgirlっていうことになっている。 これも全く筋が通らないように見えます。
しかしこの2点、 歴史を遡ると昔の英語だったらこれはオッケーな文なんですね。
どういうことかと言いますと、 He was a happy、ここまでは特に変わりないんですけれども
sadですね。 この単語は今でこそ悲しいという意味になりますけれども、元々の意味は実は多様でですね
例えばここではsober、真面目な堅実なぐらいのしっかりしたぐらいのですね。 これぐらいの意味で使われることがあったんですね。
そうすると幸せでそして堅実なということで、特に矛盾しないっていうことになります。
意味が真面目な堅実なっていうところから sad、悲しいという意味にですね
英語の歴史の中で変わっていったっていうことです。 単語の意味変化っていうのはこれまでの放送でも何度も取り上げてきたんですけれども
非常によく起こります。日常作反です。 昔の意味と現在の意味とがかなり異なっているっていうことはしょっちゅうあるんですね。
なのでこのような一種の意味不明となった英文、意味変化を通じて結局意味不明となってしまった英文を作って遊ぶ楽しむっていうことができるわけですね。
もう一つgirlなんですが、これは当然現在の意味は女の子ということなんですが、実は子供一般つまり女の子に限らなかったんですよ。
つまり男の子の意味ですね。ボーイぐらいの意味にも使えるっていうことで、結局このhe was a happy and sad girlというのは現代英語的には全く筋が通っていない文になりますが、
古い英語においては彼は幸せでそして堅実な子供ですという意味で完全に意味が通るんですね。
古英語における文の正当性
さてこのように現代の観点からすると全く矛盾だらけの文なのに、歴史を遡って考えると各単語の意味が変わった結果今のものになってるんで、
昔は違う意味だったということなので、実はこのままの文で筋が通るというようなそんな遊びの英文を作った方がいるんですね。
そこから今回のhe was a happy and sad girlも読み上げたという次第なんですけれども、このチャプターに貼り付けたURLからその全文と言いますか、見ていただきたいと思うんですが、これを今から読み上げたいと思うんですね。
普通に聞いていると矛盾だらけのとんでもない文になっているっていうことなんですけれども、では全体をゆっくり目に読み上げてみたいと思います。
he was a happy and sad girl who lived in a town 40 miles from the closest neighbor.
His unmarried sister, a wife who was a vegetarian teetotaler, ate meat and drank liquor three times a day.
She was so fond of oatmeal bread made from the corn her brother grew that she starved from overeating.
He fed not to the deer that lived in the branches of an apple tree which bore pears.
A silly and wise boor everyone liked, he was a lewd man whom the general censure held to be a model of chastity.
いかがでしたでしょうか。
この中には14の単語において意味変化が観察されて、その意味変化ゆえに意味が通らない、現代的に考えると意味が通らないという、そういう文になっているんですね。
すべてをここで解説はいたしませんが、ぜひURLの先を見ていただいて、どのように意味変化が起こったのかっていうのをざっと見ていただければと思うんですね。
その中でも面白めのものをピックアップしていくつか紹介したいと思います。
まずですね、2文目にあった
His unmarried sister, a wife who was a vegetarian teetotaler, ate meat and drank liquor three times a day.
これですね、彼の未婚の妹、あるいは姉、シスターですけれども、
と言っておきながら同格で、a wifeって言ってるんですね。
これどう考えてもおかしい。
ところが、古英語ではこのwifeという単語、当時はweefという発音だったんですが、これは女性一般です。
今で言うwomanにあたって妻という意味ではないんですね。
現代のドイツ語で言うvipeに相当するんですけれども、ドイツ語でも女性という、一般の女性という意味ですね。
妻ということではなく。
なので、ここは古英語的には筋が通る英文になっているということです。
そしてこのwifeというのがwho was a vegetarian teetotalerということで、vegetarianでteetotalerっていうのはお茶でトータルな人っていうことなんで、お酒を飲まない人っていうことですね。
なんですが、ate meat and drank liquorという言い方してるんですね。
meatを食べてリカーを飲んでいるというわけなんですけれども、これ明らかに矛盾ですが、これは古い英語では大丈夫なんですね。
というのはmeatというのがですね、今でこそ肉を意味しますけれども、古くは食べ物全般なんですね。
つまり野菜も含む肉じゃなくても何でも食べ物であればmeatということができたんですね。
それが後にグッと意味が狭まって、食べ物の中でも肉のこと、食肉のことを指すというふうに意味が狭まったということになります。
かつての英語ではしたがってvegetarianがate meat、肉を食べたということは全く大丈夫だったんですね。
同じようにdrank liquorというところでお酒を飲んだというふうに現代だったら解釈できます。
しかしこのliquorというのは、同じ語根を持つliquid、液体、この意味だったんです。
なのでアルコールとは限らないわけなので、ティー・トータラーがリカーを飲むということは許されたわけですね。
当然リカーというのはただの液体という意味ですから特に問題ないということになります。
このように現代だからこそ意味が変わってしまって意味不明の文というのが英語ではたくさん作れてしまうというところが面白いと思いますね。
もう一つだけ最後に挙げたい例としましては動詞の意味変化なんですが、第3文でこんなふうに言ってるんですね。
She starved from overeating ということで食べ過ぎによってガシしたという文で明らかに意味不明矛盾を含むんですけれども
starveの古い意味を考えるとこの文はがてがいくんですね。
というのはstarveというのは今でこそガシするとか飢えるということなんですが
古くは単に死ぬ、dyingの意味だったんですね。
なのでここで言ってるのはshe died from overeatingと言ってるのと同じことで何ら問題がないということですね。
死に方ですね。死に方が一般的にどんな方法でもよかったものが後にですね、飢えて死ぬという意味に特化した。
これも意味が狭まったと言うべきですね。
このような変化が起こった結果、現在は飢えて死ぬ、ガシするという意味に特化していった。
だからこそこのコロケーション、she starved from overeatingというのがとても変な感じがする。
矛盾した感じになるわけですけれども、古い英語ではこれが大丈夫だったということなんですね。
今回取り上げた単語はいずれも当たり前の単語ばかりです。
こうした当たり前の単語は現在の意味になるのに意味変化を経た結果、今の意味になっているっていう、このことが大事なわけですね。
意味変化本当に日常三反です。
今日も最後まで放送を聞いていただきましてありがとうございました。
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実際この数日ですね、たくさんの疑問、質問、そしてコメント等をいただきまして、実はたくさん溜まっている状態なんですね。
手強い質問も数々寄せられていまして、すぐには答えられない、ちょっと考えないとなというものも少なくないんですけれども、
一方でこのチャンネルに関しまして温かいお言葉、励ましのメッセージもいただきまして誠にありがとうございます。
これからもためになる、そして面白い英語誌の話題、英語の語源の話題をお届けしていきたいと思います。
それではまた明日。一つ補足させてください。
サードの意味変化に本日触れましたが、このサードについては実は過去の回、第122回でサードの元々の意味は満足しきったというタイトルで放送しておりますので、そちらのリンクもこのチャプターに合わせて貼っておきます。
そちらもどうぞお聞きください。