2025-04-19 10:01

heldio #273. 支配権―今だから知っておきたい danger の原義

#英語史 #英語教育 #英語学習 #語源 #意味変化
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サマリー

今回のエピソードでは、英単語「danger」とその形容詞「dangerous」の語源について詳しく解説しています。「danger」の元々の意味は「支配権」であり、ここから「危険」という意味がどのように派生したのかを探っています。

dangerの語源探求
おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題は、支配権―今だから知っておきたい danger の原義、という話題です。
英語で danger と言えば危険です。そして形容詞形 dangerous は危険なという、非常に日常的な、よく使う単語ですね。
危険危険なという意味で覚えていると思うんですけれども、なんと語源的にはですね、大元の意味はこれは danger は支配権という意味なんですね。
支配する力ということです。そして支配権を持っている人、支配者、そして独裁者、これは大変危険な人物である、危険であるというところから、実は今普通の意味である危険危険なという意味が生じてるんですね。
今だからこそ知っておきたい danger そして dangerous の語源の話です。
さあ、この名詞 danger も形容詞形 dangerous もですね、もともとはフランス語です。
古フランス語の単語なんですね。これを中英語記に英語が借りたものです。
フランス語では今もそうですけれども danger のように発音される、あるいは danger という当時の発音ですね。
これを借り受けたものなんですが、この古フランス語の単語自体はですね、さらに遡ってですね、俗ラテン語で dominarium という単語におそらく遡るだろうとされています。
さらに遡るとですね、古典ラテン語の dominium に通ずると。
そしてそれ自身はですね、 dominus の発声語である。
この dominus っていうのは非常に重要な単語で、なぜならばラテン語で主人、そして神を意味するからなんですね。
英語で言うとこの lord に相当しますね。主人、神。
キリスト教の神も dominus と呼んでいたわけなんで、これもキーワード中のキーワードですね。ラテン語的には。
この dominus これ自体もさらに遡ると語根はですね、 domus という形なんです。
domus っていうのはこれ家のことです。ラテン語で。
ドーム、屋根のある丸天井の家ですね。
つまりですね、少し長い仮定ではありますが、大元は家、ドームという domus に端を端している。
ここから発声語が作られ、そして意味も少しずつ変わって、家からですね、その家の主人、家をコントロールする人って意味で主人。
そして世界の主人っていうのが神、キリスト教の神なわけですよね。
というところから、家、主人ときた。
主人っていうのはその家の中で権力がある人です。支配権がある人ということで、そこから中世名詞権力とか支配力って意味が生まれますね。
ここから発声したのがこのフランス語の danger ということです。支配権ということだったんですが、支配権を持つ者はですね、必ずこれ危険である。
人々、つまり支配される側の人間にとって危険な人物であるっていうことから danger っていうのが危険を意味するようになったわけですね。
そしてその形容詞形である dangerous ですね、これがまあ dangerous というふうに、そんな形で英語に入ってきて危険なとなったという、まず大まかにはそういう流れなんです。
フランス語の影響
英語にこの danger というフランス語が最初に入ってきたのはですね、初期中英語期のことで1200年ぐらいです。
修道場のための手引きという本が英語で書かれていまして、アンクレーネリウレというタイトルがついているテキストなんですが、そこで最初に現れるこの danger は元々の意味である支配、支配力という意味ですね。
さらに傲慢という意味ですね、つまり支配権を持っている人っていうのは傲慢ということで、支配力、傲慢というような抽象的な意味で、まず用いられていたっていうことなんですね。
これはもう英語でも最初のこの danger の使用はこの支配権、傲慢という意味で用いられているんです。
そしてこの単語を使ったイディオムがありまして、to be in danger of のような言い方ですね。
そのまま見るとですね、何々の危険の中にいるのように思われるかもしれませんが、当時の danger の意味は支配、支配権ですから、to be in danger of って誰々の支配下で、誰々の支配下にあるという意味なんですね。
誰々の権力のもとにあるという、それが本来の意味になったんですね、このイディオム。
これはフランス語のイディオム、Est en dangerという言い方が当時ありまして、それをそのままなぞったものと考えていいと思うんですね。
そしてこのイディオムに見られるように、誰々の支配下にあるということは、支配下にある主語である人物は常に危機にある、権力に脅かされているという意味で、危険の中にあるというふうに解釈されるわけです。
こうして中英語記の後期になりますが、ピアーズ・プラウマーという作品の中で初めて、この danger が危険という現代的な意味で使われるようになりました。
支配権、傲慢という原理から、それはすなわち危険であるというふうに意味が変化してきたことになります。
形容詞形の dangerous も基本的にこの名詞 danger と同じ形です。
もともとは支配権を持つとか、それゆえに傲慢なというところから発達したんですが、そういう人っていうのは得てして、独裁者であって危険だということになりますので、
dangerous が危険なという意味に、やはり中英語記の後期にかけて、この現代的な意味を発達させることになりました。
基本的には danger も dangerous も今述べてきたような形で意味の変化が起こった。
もともと支配権というものを意味したのが得てして、そういう支配権を持つ人っていうのは危険人物であるということぐらい危険なという意味が生じたということなんですね。
これが真実だと思うんです。この意味変化の流れとしては、こういう形で意味が変化してきたっていうことだと思うんですが、
一方でですね、一般に広く留守したある種の俗説と言いますかね、民間語源と言いますが逸話みたいなものがあります。
これはまあ間に受けてはいけないんですけれども、非常に広く知れ渡っているっていうことで、話としては面白いので紹介しておきたいと思います。
なぜ danger あるいは dangerous が危険なという意味を帯びるようになったかということの毎種の俗説逸話なんですが、こんな話が残っています。
フランスに Dangerous という名前の魅力的な貴婦人がいたって言うんですね。
これがある領主、ダマーズという名前の領主にしつこく寄られてですね、不倫を犯してしまったって言うんです。
大司教に破門されたにもかかわらず、同棲することになった。
ある日このダマーズという領主が川を渡っていると激しい嵐が起こった。
そして稲妻に打たれ水に飲まれて、半生死半滅死の状態で地獄に落ちたって言うんですね。
そこでその不倫相手のダンジュローズは嘆き悲しんで、大司教の足元に身を投げて許しをこうたって言うんですね。
その後陰遁生活を送った。
しかしこの不倫をしたという、彼女は不倫をしたんだという話が広く伝わることになって、
フランス人にとってこれは危険な女性だという意味で、危機に瀕するとですね、
これはダンジュローズ夫人のようなものだ。
ダンジュローズの夫人のような匂いがするというような言い方で、
それはかなり危険なやばいことだよというような一種の決まり文句として定着したって言うんですね。
ここからダンジュローズというこの女性の名前が、そのものが危険なという意味になったんだということです。
お話としてはなかなか面白いんですけれども、
実際になぜダンジュが危険あるいはダンジュローズというのが危険なという意味になったのかというのはですね、
この放送の最初に述べた方がおそらく正しい真理だろうということですね。
要点といいますか、今回の語源意味発達の教訓は、
支配権を持つ者、とりわけ非常に強い支配権、独裁的な力を持つ者はとにかく危険だということです。
これはダンジュローズの語源が語ってくれていることです。
それではまた。
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