受動態の基礎
おはようございます。英語の歴史の研究者、ヘログ英語史ブログの管理者、 そして英語のなぜに答える初めての英語史の著者の堀田隆一です。
10月30日日曜日です。皆さんいかがお過ごしでしょうか。 英語の語源が身につくラジオheldio。本日取り上げる話題は、
リスナーさんからいただきました質問に答える形でお届けします。 間接目的語が主語になる受動態は中英語期に発生した。
He was given a book の類ですけれどもね。 これについて解説したいと思います。どうぞよろしくお願い致します。
4日前にvoicyのコメント機能よりいただいたメインアカウントさんからのご質問です。 いくつかコメントを箇条書き風にいただいたんですけれども、一つその中から質問を選んで読み上げます。
I gave him the book のような二重目的語の文について、英語ではhimもthe bookも受動の文の主語になれるようですが、英語で間接目的語が受動の文の主語になれるかにつき、歴史的な事情などを教えていただければ幸いです。
ということでメインアカウントさんありがとうございました。
最も典型的な受動文、受動態の文というのは、能動態の文の直接目的語、これが主語になるケースですね。 これが圧倒的に多いシフトということになりますね。
例えば I gave him a book という文で考えると、本をあげたということなので、本の部分が直接目的語に当たるわけですよね。 なのでこれを主語に変えて全体を受動文にする。
a book was given him のような言い方ですね。これは昔からあるわけなんですけれども、英語の場合、そして他の言語では必ずしも許されているわけではないんですけれども、これが可能な言語とそうでない言語があるわけですが、英語の場合、間接目的語のhimに当たるものですね。これが主語になってhe was given a book のように言うことも可能なわけですね。
このように間接目的語が受け身の主語になれるという、これは昔からそうだったのか、あるいは歴史の途中から加わったのかというような、そんなご質問ということかと思いますね。
英語統合論の非常に重要な、よく研究されている話題ということで、ざっとですね、概要を説明したいと思います。
受け身の文、受動体の文というのは、英語史のスタートからあります。その意味では、英語の始まりからですね、受動体という概念であるとか、文法項目そのものはあったんですね。
そして、固英語においては、基本的には直接目的語、これが主語になるパターンしか存在しなかったということになります。
一番典型的な例ということですね。
この文法項目自体は、アゲルマン語、さらに固英語より、さらに遡った段階から受け継がれてきたというふうに考えられるわけなんですが、固英語では直接目的語が、能動文の直接目的語が主語になるという普通の受動体の文っていうのは既に存在したということになります。
間接目的語が主語になるものは存在しなかったということなんですね。
間接目的語の現れ
では、いつこの後者が現れたかというと、次の時代のことなんです。
中英語期、基本的にはノルマン征服のあった1066年以降、ざっと言いますと1100年以降の1500年ぐらいまでを中英語期と呼んでいるんですが、
この時期に様々な受動文、現代につながる受動文の形態というのが生まれてきます。
つまり、歴史の途中から生まれてくるっていうことになるんですね。
その一つが今回話題になっています。
間接目的語が主語になるというもので、例えば、he was given a bookのような文ですね。
これが可能になって実際に現れてくるのは、中英語期になってからなんです。
最初期の例は1200年ぐらいにこれが現れたというふうにされています。
細かく言いますと、後英語期にもこれに相当するような構文があったと主張する研究者もいるんですが、
この根拠となるような例文、この解釈によって研究者間にいや、そうではないだろうという意見もあったりして、
はっきりしたことは実は言えないということなんですけれども、少なくとも流行りだしたものですね。
ある程度定着し、普通に使われるようになったというタイミングを考えると、やはり中英語期以降と言って間違いありません。
間接目的語が主語になる、he was given a bookのタイプですね。
最初はこの二重目的語を取る動詞ですね。
動詞もある程度限られていましたので、その動詞とともに使われる例ということだったわけですね。
典型的にはgiveがそうですし、例えばtellなんかもそうですし、いくつかのものがあったんですが、徐々に近代英語期以降にかけて、
この二重目的語を取る構文で、かつこの間接目的語が受け身の場合主語になれるという、その動詞の種類がだんだん増えてきたという、そういう歴史をたどっています。
今では全く普通になってしまったわけなんですが、その最初の例あるいは少なくとも流行りだしたタイミングということで言いますと、
中英語期、とりあえず前半ですかね、中英語期の前半ぐらいに現れているということになります。
現代英語の受動態
もう一つ関連して受動体の主語になれるか否かという問題についてはですね、
前置の目的語、これが受動体の主語になれるかどうかっていう、もう一つの似たような問題があります。
例えば、we should deal with the problemsなんていう文がありますが、現在ではこのthe problemsというwith、deal withのwithですね、この目的語に相当するthe problemsが主語に至って受動体を作るっていうことは可能なんですね。
つまり、the problems should be dealt withのように、deal withをあたかも一つの他動詞であるかのように扱って、その目的語であるthe problemsが主語として前に出てくるっていう、これ可能なんですね。
ですが、これもですね、小英語ではダメだったんです。
あるいは先ほどの例と一緒で、そうかもしれないと疑われる例もあるんですが、すべての研究者が妥当な例と認めていない、違う読みも可能なんではないかということで、少なくとも確かな例が現れるのはやはり中英語記になってからということで似てるわけです。
先ほどの間接目的語が主語となる、そういう受動文が可能となったというタイミングと大きく異ならずに、このthe problems should be dealt withのようなタイプの前置の目的語がそのまま受動文の主語になれる、これもですね、だいたい同じ時期っていうことになります。
さらに言いますと、例えばですね、こんな受動文がありますね。
she is expected to come to the partyのような言い方ですね。
これexpectという動詞を受け身にするっていうことなんですが、濃度帯の文は例えばwe expect her to come to the partyといった場合のこのherの部分をsheの形に変えて前に出す。
受け身にする、she is expected to come to the partyということになりますが、これもですね、古くはできなかったんです。
古くはと言いますと、やはり後英語ですね。
そして中英語記になって、このようにexpectのような文でですね、受け身化することが可能になったということで、全体的に言いますと、今回3つのパターンを挙げましたね。
いわゆる一番普通の直接目的語、動詞の直接目的語が主語になるタイプの受動態、これは最も古くから、後英語からある、さらに昔のゲルマン語の段階からあったということなんですけれども、そこから派生すると言いますかね、受動態の応用範囲が広がった、これはですね、中英語記にどうもなってからということのようなんです。
そして、この中英語っていうのは1500年ぐらいで終わって、その次、近代英語記に入るんですが、ここでも受動態の文っていうのはですね、少し拡張します。広く使われるようになります。
複合時勢の受動態という言い方をすればいいんでしょうかね。
進行形で用いられる受動態っていうことですね。
例えば、the house is being builtのような言い方です。
それから官僚受動態、それから官僚進行形の受動態のようなものですね。
例えば、最も複雑なもので言いますと、the house will have been being builtのような言い方ですね。
このように、現代英語の受動態の文っていうのはいろいろパターンがありますが、後に発生してきたっていうことなんですね。
スタート、後英語では最も普通のタイプの受動態、つまり直接目的語が主語になるものしかなかったと考えてよさそうです。
コメント返しです。先ほどですね、メインチャプターで受動態の話題を扱いましたけれども、これ自体がですね、4日前にメインアカウントさんよりいただいた質問に基づいたものだったんですが、
同じメインアカウントさんからですね、もう一つコメントをいただいていまして、そちらから紹介します。
WHのつづりについてのお話、大変興味深かったです。ところで、アメリカ英語ではフウのようですが、ほとんどウの発音しか聞かないような気がしましたということです。
これ改めて事実確認と言いますかね、どういうことが言われているのかっていうことを確認してみたんですけれども、規範文法的にはよく言われるのはアメリカ英語ではWHの場合は、
例えばファットで言えばフワッとのようにきちんとフの音が聞こえると、そしてワッではないとフワッとのようなものであって、両者は区別されるというようなことが言われたりするんですけれども、
あくまでこれは規範の話で、現実的にはどうかと言いますと、イギリス英語と同じように、この2つの区別がどうもだんだんと解消されてきているっていうのが昨今のようです。
つまり両方とも普通のWの発音ということですね。ファット、何の意味のファットとナンワット、電力の単位ですけれども、ワットとつまり同じ発音になってしまう。この点ではイギリス標準英語なんかと変わりがないという状況にアメリカ英語でも近づいてきているということです。
このあたり詳しくは、ちょうど今日アップしますヘログ、英語紙ブログのほうで詳細を記しています。私もちゃんと調べてお答えしようと思ったということで、ブログのほうに返させていただきます。そちらぜひお読みいただければと思います。このチャプターにリンクも貼っておきたいと思います。
次に過去の放送会に対するコメントです。こちらも受け付けておりますし、いつでも過去の会聞いたときにコメントくださいということを申し上げていますが、いただきました。
誤答の海塩さんです。371回放送なんですけれども、なぜ不可疑問では肯定否定がひっくり返るのですかという、こちらもリスナーさんからの質問に基づいてお答えした。かなり長い間考えた末に放送した、お話ししたという会で、少し熱がこもっている詳しい会なんですけれども、これに対してコメントいただきました。
長い旅を終えたような大河ドラマを見終えたような感覚に襲われました。お疲れ様でしたと声をかけさせていただきます。学問好きにはたまらないようですね。応援せずにはおられません。という大変嬉しいコメントをいただきました。ありがとうございます。
長く詳しく語ったわりには、解決せずに終わっているという会なんですが、一つ言語学あるいは英語詞の考え方が伝わるかなという、そんな会になっておりますので、もし初めての方がいらっしゃいましたら、この371回ぜひ聞いていただければと思います。
そして最近の回に戻りますけれども、513回古典的な時間術、早起きは三文の徳ということわざを紹介した会だったんですけれども、それに対しましてミーさんよりコメントいただきました。
受動態の歴史的変遷
ことわざの初出が予想より遅く驚きました。太古からの言い伝えのイメージでしたが、400年、そんなもんですかね。漢詩についても音韻の説明は非常に納得ができました。それに不定漢詩より定漢詩の方が特定の人のイメージがあり、しっくりくる気がします。私的には早起きできる人は特定、特別の人です。
アーリーバードの堀田先生、素晴らしいです。ということで、アーリーバードをぶりについてもお褒めの言葉をいただきましてありがとうございました。毎朝眠くなくはないんですけれども、一応早起き続けています。
ことわざって意外とこういうことはあるんですよね。絶対古くからあるだろうと、英語ぐらいからあるだろうと思いきや、わりと最近のものだったり、あるいは実際に予想通り古いものだったりということがあります。
そして英語の場合、英語で生み出されたものっていうのももちろんありますが、一方で西洋の伝統の中で、例えばラテン語などで既にあるものを英訳したということもあったりするので、この辺のことわざ交流って言いますかね、文化間交流みたいなものもあって、英語で現れたのはいつかというふうな問題ですね。
他の周辺の言語にはもうあった。だから英語で現れたのはいつかみたいな話になることも結構多いと思うんですけどもね。このthe early birdにつきまして、その前世と言いますか、近代語に現れたんですが、それが何かに基づくのかどうかということまでは調べていないんですけれども、確かに英語としては意外と遅いなということですね。
ことわざについては、このVoicyでも何度かお話ししていますが、その中でもお勧めはですね、298回、英語のことわざ、真逆の教訓はやめてほしいと題してお話ししていますので、ぜひそちらも併せて聞いていただければと思います。
次ですけれども、佐藤真由美さんよりコメントと言いますか、ご質問いただきました。
何年も英語学習をしてきたのに、簡単な、しかし似ている単語を混同することがしばしばあります。
crash、crush、track、truck、などです。
たぶんゲルマン語由来の語かなと思います。
母音だけが異なり、あとは同じ音という単語は語源が近い、なんてことがあるのでしょうか。
これは一言ではお答えできないくらい、結構豊富な豊かな話題なので、いろいろとまとめられましたら、一回割いてですね、お話ししてもよいかなというぐらい、それぐらいの規模の問題なんですね。
ここで一言答えておくとすれば、大いにあると思います。つまり語源が近いということですね。
母音だけが異なって、あとは一緒、つまりある種型が決まっていて、母音のところに穴が開いていてですね、それに変わる変わる異なる母音が入っていくことによって少しずつ意味を変えるっていう、そんなイメージですけれどもね。
これはvowel gradation、母音改定といって、そもそもインドヨーロッパ語族の性質ということもありますね。
それに上乗せして、とりわけゲルマン系の言語、英語もそうですけれども、音象調という現象がありまして、特に死因が関わることも多いんですけれども、死因の型が決まっていて、その間にですね、何らかの母音を挟み込むことで、
基本的な意味、死因の型によって暗示される、示唆される基本的な意味、緩い意味みたいなものは共有されながら母音で少しずつ変えるということは十分あり得るんですね。
つまり、陰陽、卒後に遡るというものと、ゲルマン語に特有のものみたいな、この2つの性質がですね、合わさって英語にはこの手のcrash、crush、track、truckのような、今回問題にされているようなものっていうのはかなり多いことになっていますよね。
ですので、この問題に対して抱かれた直感というのは、大体当たっているのではないかというふうに私も思っています。また詳しいことがですね、調べられたりお話できる段階になりましたら、まともに取り上げても面白そうな話題だなというふうに思いました。まずは簡単にお答えさせていただきます。
そして先日の515回、英語に関する素朴な疑問、千本の句、宿見広志&ほったりゅういち第2弾につきまして、まずカミンさんからコメントをいただきました。
推し単語談義、チョイスがオタクすぎて笑うということで、本当ですね、後から聞いてもですね、なんでこんな流れになったんだろうという、ラブとかピースとかね、そういう話になるのかと思ったら、DoとかLetとかですね、しまいには関係代名詞の省略のゼロとかね、そんな話になりまして意外な展開を見せたんですが、このあたりまだお聞きでない方は、
ぜひ515回、こちら60分の生放送ということで長めなんですけれども、よろしければ時間のあるときに聞いていただければと思います。
エンディングです。今日も最後まで放送を聞いていただきましてありがとうございました。
リスナーさんからいただいた受動体に関する話題ですね。間接目的語がそのまま主語になるタイプの受動体。これが歴史的にいつ発生したのかというお話でした。
古語と現代語の違い
そしていただいていましたコメントや質問にお答えするという形で10分間チャプターを加えましたけれども、最後の最後にですね、もう一つコメントをいただいていましたので、加えさせていただきます。
うめさんからです。シェイクスピアあたりの時代までは3単元のSをTHと言っていたというのは初めて知りました。海外ドラマを見ていたらRANK HALF ITS PRIVILEGESという表現が出てきたことがあって、多分昔の名残なのかなとがてんがいきました。
このRANK HALF ITS PRIVILEGESのHALFっていうのがTHなんですね。もちろん現代のHASに相当するHALFの3単元形なんですが、おっしゃる通りですね。昔の名残ということになります。
わりとシェイクスピアであるとか聖書などではこのTH系というのがまだ見られますね。まだ見られると言いますか、現代版であっても当時の綴りのままで印刷されて、今流通しているというような少し古風には思えますが、
わりとこのTHというのはちょこちょこと現代の文章でも古い文章からの引用みたいな形で目にすることはあるかと思いますので、気に留めておかれるといいと思いますね。ざっと言いますと、
4、500年くらい前からTHが今風のSに変わってきたと。そんな流れになりますね。コメントいただきましてありがとうございました。そして、最後のコメントですが、いただきました。
うめさんには差し入れをなんといただきました。嬉しいです。ありがとうございます。応援していただいているという実感が非常に強く湧きまして、本当にありがとうございます。嬉しく思います。
こうして差し入れであるとか、コメントをいただきまして、この分野、英語史という一般にはあまり広く認知されているわけではないマイナーな分野ですけれども、このVoicyを通じて少しずつでも裾野が広がっていくと良いな、そして魅力が伝わっていくと良いなという思いで毎日放送を続けていますので、
このように応援いただきますと、本当にモチベーションアップになります。良質の話題を毎日頑張ってお届けしていきたいと、改めて思った次第です。リスナーの皆さん、いつもありがとうございます。
このチャンネル、英語の語源が身につくラジオヘルディオでは、あなたからのご質問、ご意見、ご感想をお待ちしています。Voicyのコメント機能を通じてお寄せください。チャンネルをフォローしていただきますと、更新通知が届くようになります。ぜひフォローをよろしくお願いいたします。また、面白かった、ためになったなどと感じましたら、ぜひいいねもよろしくお願いします。そして差し入れもよろしくお願いします。
それでは、今日も良い日曜日となりますように。ほったりうちがお届けしました。また明日。