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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。 このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった
英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。 毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題は、abc順の英語辞書を当たり前と思っていませんか? という、ちょっと挑発的な内容です。
皆さんであれば、英語の辞書を引き慣れていると思うんですね。 最近では電子辞書が流行りですけれども、紙の辞書を引き慣れたという方も多いと思いますね。
当然、abcと始まってzまでの26文字で引くわけですね。 そして、最初の単語の文字がaであれば、aを引くっていうのはわかるんですが、実はですね、この次の第2文字がbであれば
aの次ですし、そして 3文字目がですね、r文字であれば、当然それもアルファベット順になっているっていうふうに、つまりアルファベット順
というのが1文字目に適用されるのと同様に、2文字目にも3文字目にも、そして4文字目にもということで、最後まで適用されるという、いわば完全アルファベット主義と言いますかね。
非常に合理的にabc順に並んでいるんだということで、 正しく、正しい場所にですね、ある単語を見つけることができるっていうのは、我々当たり前のように
認識していますが、このいわば完全アルファベット主義的な辞書引きというのは、比較的新しい話なんですっていうことなんですね。
英語詞を勉強していますと、時にですね、学んでいて、こう、度疑問を抜かれると言いますか、常識を覆されることって多いんですが、私のベスト3ぐらいに入るのはですね、
実は、中世まではですね、この完全アルファベット主義が守られていなかったっていうことを知ったときなんですね。これは驚きました。
このabc順、いわばアルファベットというものは、今から遡ることですね、3700年ぐらいの歴史があります。
最も古くはですね、北西セム文字というですね、紀元前1700年ぐらいの文字に遡るんですが、その当初からですね、実はアルファベータというような並び方で、
現代のこの26文字の英語のアルファベットにつながるですね、順番はおよそ定まってたんです。その後、多少変更があったり、新しい文字が加わったりっていうことがあって変化はするんですが、
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基本はこの3700年ぐらい変わってないんですね。これくらいエスタブリッシュされたabc順と言いますかね、これ自体は合理的な順番でもなんでもないんです。
ちょうどイロハが、イロアニオエドチリヌルオというふうに、文字を重複せずに最後までですね、
網羅できる文章はないかなというふうに考えられて、イロアニオエドチリヌルオという形でなったのと同じようにですね、アルファベータも対してですね、合理的な理由がなく、この順序に並んでるんです。
その意味で、アユウエオノがよっぽど合理的で、いわば音声学の原理に基づいてですね、アユウエを書きくけこうとあるわけなんですが、このアルファベットにしろイロハにしろ、たまたまそういう順番ということで、いわば制度としてですね、確立したものなんです。
これ自体は意味がない。ただ、一旦これが定まるとですね、やはりこれで辞書も作られるということになるという意味ではかなり重要なんですね。結局、英語がですね、世界的な言語となった今ですね、かなり多くのものがですね、いわゆる相当文化、コンピューターの相当文化によって、
しばしばエクセルでもそうですが、相当されてAから順に並ぶということに我々なりきっているわけです。そして、辞書でももちろんその順番になっているということを前提に、我々は語学をやっているわけで、辞書を引くということになっているわけですね。
ところがですね、このいわばアルファベット順に全てが並んでいるという、いわゆるアルファベット主義、完全アルファベット主義とか相当主義というべきものなんですが、これ自体は実は西洋のですね、このABCというロマジを使うアルファベット文化圏でもですね、比較的新しいものだということなんですね。
これは知った時に驚きました。どういうことかと言いますと、英語史上ですね、最初の辞書というのは近代になって1604年ですね、この年に出版されたA Table Alphabeticalというものとされているんですね。
これが最初の英語の辞書、AA辞書ですね。ロバート・コードリーというですね、英語の先生だった人なんですが、この人が編んだという辞書なんです。名前からもわかるとおり、これは辞書、デクショナリーというよりはですね、A Table Alphabeticalですから、アルファベット順に英単語を並べた一覧表ぐらいの作りなんですね。
辞書というほどではなくて、一覧表をですね、アルファベット順に並べましたよということで、Table Alphabeticalと、ちゃんとタイトルにアルファベティカルというのが入っているわけですよ。
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ところがですね、この辞書、1604年にできた辞書なんですが、面白いことにですね、確かに最初の文字ね、1文字目だけで見るとABC順にずっと並んでるんですけれども、
じゃあ、2文字目も厳密にABC順かっていうと、必ずしもそうではない。3文字目というと、もっとそうではない。4文字目、もっともっとそうではないっていうふうに、つまりですね、ABC順っていうのは、
頭の文字、第1文字目がアルファベット順ということなのであって、同じ原理をですね、いちいち神経質に2文字目にも3文字目にも4文字目にも適用するっていう発想は、実はもっと後の、つまり近代もですね、ずっと進んでからの話なんです。
これ、現代の相当文化ですと、コンピューターでも自動的にやりますので、当然2文字目も3文字目もっていう非常に合理的にできてるんですが、これ全く当然、自明のことではないんです。
1604年の時点で、このロバート・コードリーが作ったTable Alphabeticalではですね、1文字目こそ確かにABC順にちゃんと並んでるんですが、2文字目からは、そこそこABC順に並べようという意図は感じられるんですが、必ずしもそうじゃないんですね。
つまり、不完全アルファベット主義の辞書の並べ方っていうことです。現在は完全アルファベット主義です。
例えばですね、辞書を開くとですね、このコードリーの、辞書を開くとAで始まりますね。最初の単語がですね、abandon、捨て去るって意味ですね。ABですから、当然最初に来るわけですよ。
で、2番目がabashっていうのがあって、3番目がですね、abaっていう、今はあんまり使わないですね。abbaと書いて、父親っていう意味でabaって言うんですね。で、こんな単語が並んでいてですね、第5番目にですね、abettorsっていう単語があって、abbetorsっていう単語があるんですね。
abbですよ。だからこれ当然、かなり最初の方に出るってのが分かりますね。で、次に出てくるのがですね、現在も残っている単語なんですがaberration、これ逸脱っていうことで、現在の続きだとabe, rrationっていうことなんです。
rこそダブってますが、bはダブってないんです。abe, rrationっていうことですね。なので、abの後、bではなくてあくまでeですので、もうちょっと遅いはずなんですよ。で、実際このaberrationっていうのはabe, rrationという綴りでここに載ってるんですが、この6番目ですね。
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ところが、7番目の単語は何かというと、abbreuiatっていう、今のabbreviateですね。これ省略する、短縮するっていうことで、これはabbなんです。
つまり、abbで始まる2つの単語の間にabe, rrationがはまってるんですね。これどういうことかってことなんですね。簡単に言えば、この時代、1604年にすらですね、完全アルファベット主義はまだ確立していなかったということです。ではまた。