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2024-12-03 10:00

heldio #136. 名詞を大文字書きで始めていた17-18世紀

#英語史 #英語学習 #英語教育 #アルファベット #大文字 #ドイツ語 #近代英語
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おはようございます。英語の歴史を研究しています。 慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった 英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。 今回取り上げる話題は
名詞を大文字書きで始めていた17から18世紀 という話題です。
現代の英語の書き言葉ではですね、大文字にするという場合ですね。 これは、大体いくつかのパターンに限られてますね。
まず、文と文の最初は大文字ですよね。 それから固有名詞、いわゆる名前です。
人名とか地名とか、これを大文字で書き始めるというのがありますね。 それから、最初からこの単語は大文字で書くんだよと決まっているものもあります。
例えば、一人称単数代名詞のIというのがそうですが、それから、例えば称号としてのMrとかですね、Drなんていうイニシャルは大文字で書くっていうことですね。
それから、臨時的に強調したい時にですね、漫画なんかに多いわけですが、全てダダダと大文字で書くっていうのがあります。
これは臨時的にその場で強調したいからという大文字の使い方だったりするわけですが、基本的にいくつかもパターンがあって、ルールが決まっている。
それに基づいて大文字で書くということになっていると思うんですね。 これは一種の苦闘法、広い意味での苦闘法ですね。
いつ大文字を使うか、いつ小文字を使うかというですね、広い意味での苦闘法に相当するわけなんですけれども、これは同じローマ字を使っていてもですね、言語によって多少違います。
例えばドイツ語ではですね、すべての名詞、普通名詞ですね。つまり固有名詞だけではなくて、すべての名詞を大文字で始めるという成書法上の苦闘法上の規範、決まりっていうのがありますね。
これ英語と違うわけです。名詞っていうのはキーワードになりやすいということですね。こういう習慣が発達したわけなんですが、英語ではこれ採用されていなくて、
あくまで名詞といっても固有名だけは大文字で書くけれども、普通の名詞は小文字で書くということですね。
なので英語のこの慣習に慣れていると、ドイツ語を見たときにですね、いちいちうるさい感じがするんですね。普通の名詞なのに大文字になっていると。
逆にドイツ語のこの慣習に慣れていると、名詞なのに英語では大文字書きしてないなっていうことが気になったりしてしまうということなんですね。
一種の書き言葉上の慣習ですから、それはいろいろあります。それぞれ言語ごとにあるということですね。
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ところがですね、歴史を振り返ってみると、実は英語でも今のドイツ語ばりにですね、固有名詞にとどまらず、普通名詞も、つまりすべての名詞を大文字で始めると。
こういう習慣がですね、ある程度行き渡っていた時代があるんです。これが17、8世紀ぐらいなんですね。
この英語の歴史において、この名詞を大文字で始めるっていう慣習と言いますか、これがですね、最初に強く進めたのはですね、16世紀のことなんですが、16世紀の文法家でジョン・ハートという人がいたんですね。
この人が名詞のイニシャルを大文字書きしようというふうに勧告するというか、進めた文法家だったんですね。
ただ、これすべての名詞をという言い方はしていないで、重要な名詞を、つまりキーワードは大文字を使いましょうという、そこそこ常識的なことを言ったまでに過ぎないんですけれども、このジョン・ハートという人はですね、1569年にこのことをこういう書き方、習慣というのを進めている。
ある意味では、これがその後引き継がれてですね、今も一般的ではないとはいえ、例えば見出しのタイトルなんかでは普通の名詞であっても大文字化したりということは、例えば新聞の見出しを考えてもいいですがありますよね。
これは目立たせるために当然といえば当然なんですが、この当然な発想をジョン・ハートも持っていて、16世紀にこれは良い習慣であるというふうに訴えたわけですね。
ただ、キーワードである名詞に大文字化を施すということで勧告したわけなんですが、これが必ずしもこの習慣といいますか、一貫しない使い方を各著者というのが採用していたわけですね。
それでも、このキーワードに大文字化を施そうという動きはですね、17世紀、18世紀あたりには一気に流行してですね、一般的になってきます、英語でも。
おそらくこの傾向といいますか、流行の最盛期は1700年前後だったのではないかと思われるんですが、ガリバー旅行記で有名なジョナサン・スウィフトですね。
このスウィフトの文章を何回も見るとですね、ほとんどがもう完璧にすべての名詞が大文字で始まっているというような、いわば今のドイツ語のような状態を呈するわけですね。
こうしてこのままですね、この関係は定着するかと思いきや、大陸でも同じことが起こっていて、ドイツはこれが結局定着して今に至っているわけですよね。
ところが英語ではこれがしぼんでしまうんですね。
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これは理由はいろいろあると思うんですけれども、やはり著者、書き手によってですね、すべての名詞に大文字化を施すのか、それともあくまでキーワード、重要だと思う名詞に大文字化を施すのかということで、個人間でも揺れがあったというですね。
しかも当時、原稿は手書きなわけですが、手書きですと大文字か小文字か同じ形の文字もありますし、ちょっとした大きさの違いで微妙であると。
そうするとですね、それを受け取った食事稿が大文字なのか小文字なのかよくわからないので、必ずしも一貫した食事の仕方、食事稿印刷家の振る舞い方がいろいろと異なっていたということなんですね。
最終的には、著者、書き手がこれは重要だから大文字にするんだということなのか、それともすべて名詞だから大文字にするのかということはですね、なかなか判別できなくて、最終的には食事稿とか印刷家レベルで勝手に決めてしまったということなんですね。
食事稿印刷家のタイプに応じて何でもかんでも名詞であれば大文字にするという人もいれば、そうではなくて書き手のここだけは大文字なんだということを拾って大文字化したというような人もいたということで、簡単に言えば著者も食事稿も一貫した方針を取りにくい状態にあったということですね。
18世紀というのは理性の時代です。理屈によってがっちり決まりを決めたいという時代なんですね。そうしますと、ドイツ語のように、とにかくすべての名詞を一括して大文字で始めるんだという方向に行くか、あるいは、いやいやよくわからない、著者によっても何か違うし、これは安全にといいますか、小文字に統一することにしようと。
つまり、大文字に統一するか、小文字に統一するかという違いはありますけれども、どっちにしろ何かに統一したいという雰囲気はどうもあったということですね。結果として、英語では何でもかんでも大文字にするのはやめようと、あくまで固有名詞のみを大文字、そしてそれ以外は小文字。
ある意味、16世紀以前はそれが当たり前だったわけなんですが、その伝統的なものに定まって安定したということですね。なので、16、7、8世紀と英語でもドイツ語でも基本的に同じような傾向といいますか流行を経たんですね。その後どうするか、どう安定するかというところで正反対の方向に出てしまいましたが、基本的には同じ道をたどっていたということになります。
英語の場合で言いますと、最終的にこの食事行であるとか印刷業者がどうも最終的な決定に影響力があったようなんですね。これ、現代でも実は同じだということをエスカルピという学者が言っていまして、ロベル・エスカルピという人が文字とコミュニケーションという本の中でこう言っています。
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印刷されたテキストでは、資料機能のレベルでは部分的に、図像機能のレベルではほとんどもっぱら、産業機構が介入し、それに対して書き手は必ずしも力を持たない。実はそれ故に、自分の本が印刷されたのを読む作家は、自分が手で書いたのとは別の本を前にしている感じを抱くのである。印刷されたものから出てくる経緯は、彼の外にある。
実は英語のスペリングの歴史も、書き手ではなくて、印刷業者がなかなか影響力を持っていたという事実もあるんですね。面白いことだと思います。それではまた。
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