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2024-08-01 10:00

heldio #12. sheep と deer の単複同形のナゾ


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サマリー

sheepとdeerは動物の名前であり、単複同形の特殊な名詞です。

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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題は、sheep と deer の単複同形のナゾという話題です。
sheepの単複同形
英語は名詞の単数複数の区別にうるさい言語なわけですけれども、通常は s をつければいいわけですね。
books, schools, students のようにです。
しかし、いくつか例外がありまして、その例外の中でも目を見張る例外が単複同形、つまり全く単数形と区別がないという名詞なんですね。
いくつかありますが、代表選手として、今回は sheep と deer を取り上げたいと思います。
両方とも動物を表す名詞で、羊と鹿ということなわけですが、
sheep, sheep, deer, deer ということですね。単複同形ということになります。
いくつか例文を挙げてみますと、この羊に関しては sheep were grazing in the fields.
というふうに sheep were というふうになるわけですよね。
羊が牧場で草をはんでいたということになりますね。
他には例えば群れという表現がありますが、a flock of sheep と言いますね。羊の群れということです。
普通、こういう flock of みたいな表現、群れの後には複数形が当然つくわけですね。
例えば flock of birds 鳥の群れというわけです。
ところが flock of sheep というふうに s がつきませんが、
明らかにここでは複数の意味での sheep ということになります。
deerの単複同形
deer 鹿についても同じようなことが言えますね。
例えばこの例文はどうでしょう。
Hungry people killed deer and birds.
植えた人々が鹿や鳥を殺した。
この場合、deer and birds というふうに、鳥の場合は明確な複数形の s がありますので、
この deer も連動して、明らかに複数形で使われているということがわかります。
鹿の場合は群れを意味する単語は flock ではなく herd というのを使いますね。
A herd of deer というわけです。
通常、例えば牛の群れという時には herd of cows というふうに s がつきますので、
Herd of deer これも deer という形ですが、明らかに複数の意味で使われている。
つまり単幅同形で使われる単語だということがよくわかると思うんですね。
さあ、この謎に歴史的に迫ります。
1000年ぐらい前の古英語という時代には、
名詞にはいくつか区分がありまして、
性というのがあったんですね。ジェンダーです。
現代のドイツ語とかフランス語とかロシア語とか、
多くのヨーロッパの言語に存在するんですが、
英語でもかつては男性名詞、女性名詞、中性名詞とあったんですね。
そして今回扱うこの sheep と deer に関しては、
古英語においては実は中性名詞。ニューターですね。
中性の名詞という区分にあったんですね。
この中性名詞の中でも、ある一定の条件を、
音声的な条件を満たす単語に関しては、
実は単数形と複数形が同じというのは、
古英語の時代からあったんですね。
この2つの名詞がまさにそうだったんですが、
sheep に関しては、シェーアップ、シェーアップという形。
これが単数形だったんですが、複数形も同じですね。
シェーアップ、シェーアップだったんです。
同様に deer の方もそうです。
これはデーオール、デーオールという形だったんですが、
複数形も特に何も変わらずですね。
デーオールという形だったんです。
ちなみにこのデーオールに関しては、当時の意味は動物でした。
鹿ではなくて動物一般です。つまりアニマルの意味だったんですね。
このアニマルの意味が後に縮小して、
その中でも、ある動物の一種ですよね。
一つの種類に過ぎない鹿が、
動物という広い意味から、鹿という狭い意味に特殊化したという言い方をするんですけれども、
ディアはそのように変わっていった単語なんですね。
シープはそのまま羊でした。
中性名詞の単複同形
このような中性名詞で、
しかも一定の音声的な形であるという条件を満たした単語に関しては、
単数と複数がそもそも小英語の時代から同じだったんです。
なので、これがそのままある意味変わらずに、
残って現代に至ったということなんです。
このグループとしては、このシェイアップとデイオル、
この2つについて述べましたが、他にも実は非常に当たり前の単語が同じグループに属していまして、
例えば小英語で言うと、フース、これハウスなんですが、これも同じグループだったんです。
つまり複数形もフースだったんですね。
ところが後に英語の歴史で、複数形だったらSだよねという発想になって、
ハウスに対してハウジズと、通常のSを取る複数形に繰り返したということです。
他にバーンというのもありました。
これは現代英語のボーンです。骨。
これも複数形は何も変わらずボーン、バーンだったんですが、後にSを取ることになって、ボーンズ。
他にフローというのもありますね。これは現代英語の構図を表すフラットです。
これもSを取るようになりました。
フォルク、これは現代英語のフォーク、人々ということで、
これも複数形の場合にはそのままだったんですが、現代英語ではフォークスなんて言ったりします。
それからイエーアル、これは現代英語のイエールなんです。つまり年。
つまりこれも小英語では複数形に特別な語尾を取らなかったんですが、
今までにイエールズというふうにSを取るタイプに繰り返したということです。
他にランド、フィング、ウォールドという当たり前の単語もあります。
今でこそ複数形ではランド、フィング、ウォールドというふうにSを付けますが、
当時はそのままランド、フィング、ウォールドとこのままで単数も複数も表せたということなんですね。
このように仲間がいっぱいあったわけなんですけれども、どういうわけかですね。
このシェイアップとデイオール、つまりシープとディアに関しては最終的にSを取る複数形に乗り換えることなく、
今まで小英語以来の単服同型を続けてきているということなんですね。
ただですね、今このシープやディア、それからハウス、ボーン、フラッド、フォーク、イエール、ランド、フィング、ウォールドのような単語が中性名詞で、
かつては単数形と複数形が一緒だったんだと言いましたが、これ小英語の話ですね。
小英語よりさらに遡った時代には実はちゃんと複数形の語尾がついてたんです。
小英語より前の時代ですね。
これはSではなかったんですが、Uの文字で表せるウというものですね。
ですから本来であればシェイアップはシェイアップとなったし、デイオールの複数形はデイオールとなったし、
ハウス、ボーン、フラッド、フォーク、イエール、ランド、フィング、ウォールドという風にUがつくことによってですね、複数形を表すということが普通に行われていた。
つまりきっちりと単数形と複数形はやはり違う形だったんです。
ところが音の変化によって、こうした語末のU、複数形を表すという意味である意味重要なUだったんですが、これが消えてしまって、その結果小英語では単複動形になった。
そして現代までに2語だけですがシープとディアはそのままの形、同じ形で残っているということで、ある意味音声変化の結果単複動形になってしまったということで、
これ自体に何か特別な意味があるわけではないんですね。音の変化ということが全ての理由、単複動形の理由ということになります。ではまた。
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