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2024-09-21 10:00

heldio #63. なぜ英語には仏語や独語のように文法的な性がないのですか?

#英語史 #英語教育 #英語学習 #文法性
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サマリー

このエピソードでは、英語に文法的な性が存在しない理由を探ります。英語とフランス語、ドイツ語の名詞の性の違いを説明し、古英語における性の存在についても触れながら、言語の進化について考察します。

英語の文法的性についての疑問
おはようございます。英語の歴史を研究しています、慶應義塾大学の堀田隆一です。 このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる素朴な疑問は、なぜ英語にはフランス語やドイツ語のように文法的な性がないのですか、というものですね。
この疑問は素朴な疑問というよりは、英語以外にヨーロッパの他の言語、例えばフランス語であるとかドイツ語であるとか、こういったものを一回勉強すると、こういう問題意識になると思うんですね。
非常に多くのヨーロッパの言語には、文法上の性、グラマティカルジェンダーと言っていますが、というものがあります。
これは名詞に、男性であるとか女性であるとか、中性であるとか、そういった性、ジェンダーが張り付いているということなんですね。
これは、例えば男性という男の人という意味の英語のmanですね。これは当然ながら、男性の名詞ですから、heで受けるわけですよね。これは英語ではそうです。
そして、womanと言うと、これは女性を指すわけですから、これはsheで受けるのが当然。
それに対して、もの、何でもいいんですけれども、例えばstoneと言うと石ですから、これは人間でも動物でもありませんので、性というものはありません。
ですから、いわゆる中性ということでitで受ける。
これ非常に簡単な単純な関係なんですけれども、これが英語以外の非常に多くのヨーロッパ系の言語と言いますか、引用語ですね。
インドヨーロッパ系の言語では、実は名詞によって文法上の性が決まっている。
つまり、自然的な性ではなくて、文法上ガチッと最初から決まってしまっている性というのがあるんですね。
これが非常に厄介で、習得する上では結構面倒なことというふうに考えられているわけです。
これはとても妙なものでして、日本語にはそういう発想はありません。それから英語、現代の英語にもそれがありません。
なので、英語、日本語、この2つしか知らない場合には、この文法的な性というのが他の言語にあると聞くと、お、と思うわけですね。
例えば、フランス語でいきましょうかね。フランス語では、太陽というのがですね、ソレーユというんですね。
で、これ、ル・ソレーユ、ザ・サンのことなんですが、漢詞をつけるとル・ソレーユというわけなんですが、これは実は男性名詞なんです。
なぜかは聞かないでください。私にも答えられませんし、フランス人に聞いても絶対答えられません。
とにかく男性と文法的に決まっているということなんですね。
なので、ザの形もですね、男性名詞につくザというのがありまして、これがルなんです。で、ル・ソレーユとなるんですね。
で、一方ですね、じゃあ月はどうかというと、これはラ・リュンヌと言いますね。これは女性名詞なんです。
だからザもですね、ルではなくラという、女性に対応するザの形を使ってラと言うんですね。
で、リュンヌの部分が女性名詞としての月ということなんですね。
で、これもなぜ月が女性なのというのはよくわかりません。
ある意味、男性的な太陽と女性的な月というイメージがあるという理屈もですね、可能かもしれませんが、
そう簡単にいかないんですね。
じゃあフランス語のお隣の国ドイツですね、ドイツ語で考えてみますとどういうことになるかと言いますとですね、
まず太陽から行きますと、これはディ・ゾンネと言いますね。
これゾンネが英語のサンと同号言です。同じゲルマン語なんで。
これはですね、フランス語と逆でですね、太陽が今度は男性名詞なんです。
ディっていうのがこれ女性名詞につくザの形なんですね。
で、ゾンネっていうことですので、これ女性名詞ってことになってます。
さらにですね、じゃあ月はどうかっていうと、これはデア・ムーンと言います。
これムーンというのが、このムーンですね、と同じ語源なんですけれども、
今度はですね、冠子ザがですね、デアとなっているんですけれども、これは男性っていうことなんです。
つまりフランス語とドイツ語とで、太陽月って比べたときに、星が逆転してるんですね。
ですのでこれ、本質的な理屈はないっていうことがよくわかると思うんですね。
古英語の名詞の性の変化
言語によって、たまたまこの単語は男性名詞とか、この単語は女性名詞とか決まってると。
で、フランス語はですね、2つ、男性名詞か女性名詞かという2文法なんですけれども、
ドイツ語はですね、男性名詞、女性名詞、そして中性名詞っていうのがあって、これ3文法なんですね。
ゲルマン系は大体3文法で、実は驚くことにですね、ゲルマン系である英語もですね、
今でこそ、この文法性なんていうものは、全く関係しない言語のようになっていますが、
1000年前の古英語の段階では、全くドイツ語と似たようにですね、同じゲルマン語ですから、
男性名詞、女性名詞、中性名詞というふうに3つの性がしっかりと分かれていたんです。
実際ですね、古英語の段階では、太陽はスンネ、これは女性名詞だったんです。
先ほどのドイツ語のディゾンネですね、これと一緒で女性名詞。
同じゲルマン語ですから、同じ女性名詞っていう所属ですね。
そしてですね、月の方はどうだったかというと、これはモーナと言いました。古英語ではモーナ。
これは男性名詞なんですね。
ドイツ語のデアモンツというのと同じ語源ということになりますね。
このように古英語にもですね、ちゃんと男性名詞、女性名詞、そして中性名詞というの3つのですね、
性がしっかりと分かれていた。
それが現代ではですね、全くそんなものはなく、単に性というものがあるとすればですね、
指しているものが生き物、動物で、とりわけ人で、男であればヒーで受けて、そして女であればシーで受けて、
それ以外にはイットで受けるというような簡単なものになっているわけですね。
文法的に最初からこの名詞は何性ですよという決まっているという、そういう決まり、ルールは一切現代語ではないということなんです。
古英語ではそれが現代のドイツ語であるとかフランス語であるとかちゃんとあったということなんですね。
じゃあ何でなくなったかということが問題になりますね。
これはですね、一言で言うとですね、語尾、語尾の音説であるとか、これが音声的に弱まってしまってですね、区別がつかなくなったということが最大の理由です。
実は名詞であったり、そしてその前によく現れる漢詞ですね、「だ」の形なんですが、これが連携してですね、ある語尾を取ることによって、
これは男性名詞だよとか、女性名詞だよ、中性名詞だよというふうに区別される仕組みが整っていたんですね。
古英語であるとか、現代のフランス語、ドイツ語もある程度そういうことが言えますね。
ところがですね、英語の場合、古英語ぐらいまではまだその語尾がきっちりと、これが男性、中性、女性みたいにそれなりに分かれていたんですけれども、語尾の音がですね、曖昧になってくるんですね。
例えば母音で言うと、ア、オ、エのようにはっきりと区別ついていたものが、現代の英語でもそうですが、シュワーと呼ばれる曖昧母音、すべてが弱まって曖昧母音になっていくんですね。
そうすると、このア、オ、エみたいなものがすべてでウ、ウ、ウっていう音になってしまう。
他の言語ではこれは英語ほど起こっていないんですが、英語ではですね、この古英語から中英語に至る段階で、この母音の弱化と言いますかね、が起こって区別ができなくなってしまった。
それによって形上、男性、中性、女性みたいなものが区別ができなくなったということがまず根本的な理由にあります。
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