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おはようございます。英語の歴史を研究しています、慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題は、シャツとスカートは同語源というびっくりの話題です。
SHIRT、これシャツ、いわゆるシャツですよね。それとSKIRT、スカート、これスカートということなんですが、これが実は同語源だという話です。
スペリングで見てもSHで始まるかSKで始まるかということで、その後はIRTというふうに共通してますよね。
なので確かに比べてみればよく似ているということなんですが、実は全くの同語源だったという話なんですね。
シャツというのは着るものの中でも上半身を覆うものですよね。一方、スカートというのは基本的に下半身を覆うもの。
典型的に女性が履くものということで、むしろ対義語とは言いませんが、だいぶ違った方向性を示すわけなんですが、根っこは一緒、同じ単語であるという話題です。
この単語は、実はSHIRTの方は英語本来語です。本来語と外から借りた釈用語というふうに語彙を大きく区別すると、本来語、釈用語という言い方がありますが、SHIRTは本来の大元の英語ということなんですね。
ところが、このスカートの方は釈用語なんです。何から借りたかと言いますと、古ノルド語という言語です。これは現在の北欧語の祖先ですね。
デンマク語であるとかスウェーデン語、ノルウェー語、アイスランド語という、現代ではいくつか分かれていますが、1000年くらい前まではまだ一つの言語で、これを古ノルド語というふうに呼んでいるんですね。
英語は、8世紀後半から11世紀にかけて、北欧のバイキングの進行にあって、それによって英語の中にもたくさんの北欧語由来の単語というのが流入したという経緯があります。
ちょうどその時に、このスカートが、この北欧語、古ノルド語から英語の方に釈用されたということなんです。
ですが、英語も古ノルド語もですね、大元をたどればゲルマン祖語という共通の言語に遡るんですね。
つまり広い意味では同じゲルマンの仲間で、英語と古ノルド語も一種の方言という関係になります。
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なので非常に古くまで遡ると、ゲルマン祖語と呼ばれる段階では、この2つの単語は実は同じ形だったんですね。
スキルタのような形だったと考えられます。
これがですね、北欧語ではそのままスキルツという形でそのまま伝わったわけなんですが、
英語ではですね、このスクという音がですね、小英語の間にシュッという音に化けてしまうんですね。
スクという音が、のきなみシュッという音になってしまうということです。
その結果、大元は同じ単語でありながら、北欧語ではスキルツですね。
小英語ではシュルツというふうに少し形が変わってしまったということなんですね。
大元のこの単語はどういう意味だったかというと、
そもそもはですね、これショート、短いのショートと同じやはり関係する語源で、
短いとか短く切り詰めたという意味なんです。
もともとの大元は陰陽祖語でいうとこのスケルという語幹ですね。
これは切るということです。
短く切り詰めたということで、ショートもシュルトもスカートも結局は同じ語幹に遡るということになるわけですが、
短く切り詰めた着物ということなんですね。
短く切り詰めて、上半身を覆う方だけに限られると、これはいわゆるシャツということになりますが、
下半身を覆う方に向かうと、これはスカートになるわけですよね。
ややこしいことに、ドイツ語にも実は同系統の単語があって、ショーツとかショーツェなんて言うんですが、これは前掛エプロンということです。
つまり全体を覆うには、身体全体を覆うには短いけれども、そういう意味で短く切り詰めたという語源なんだけれども、
それが上半身の方に特化してシャツとするか、下半身の方に特化してスカートとするかというので、
小英語とコノルド語の方で方向が分かれてしまったということです。
しかし分かれたんですが、先ほど述べたように、北欧語がバイキングの進行とともに、このスカートも英語の方に入ってくるに及んで、
ある意味、1回分かれたはずのシャートとスカートが、改めて英語の中で同居する形になったということです。
大元は一緒で、1回分かれただけれども、再び着用されて共存するようになったということなんですね。
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結果として、シャーツというのが上半身を指すものとして、中英語以降、普通に使われていくようになります。
一方、スカートの方は、1300年ぐらいに初めて英語では現れるのですが、実際にはもう少し前に北欧語から借りられていたものと考えられます。
そして最初に英語でスカートと使われていた、最初の文脈からしても、明らかに今のスカートというか、下半身を覆うものという意味で使われています。
クルソル・ムンディという、1300年ぐらいのテキストに初めて英語では現れるのですが、そこでの文脈は、
彼女は恥ずかしげもなくスカートをまくり上げて、そして川をズブズブと渡っていったみたいな文脈ですので、明らかにこの下半身を覆う今風のスカートを意味する文脈だということがわかると思うんですね。
このように、古英語ではスクという本来あった音がノキナミシュに変わるという変化を経たのです。
なので、ある意味極端なことを言うと、古英語の本来の単語、そこからつながる本来語においてスクという発音は基本的にはないはずなんです、英語には。
スクはノキナミシュに化けてしまったので、スクを持つ単語というのは本来ないはずなんです。
ところが、現代の英語にはたくさんあります。これはどうしてかというと、本来の古英語からつながる単語ではないからです。
今スクという発音を持っている単語があったとしたら、これは十中八九、外からこのスクという発音を持つ単語を借りたということになります。
その多くはコーノルド語です。ただそれだけではなくて、ラテン語とかギリシャ語とか他の言語から借りたものもたくさんあるんですけれども、そういう具合になっているんですね。
例えば、スコア、スキー、スケア、スケン、スカート、スカイなんていうのは、いずれも当たり前の単語ですが、これはいずれもコーノルド語からの釈用語です。
本来の英語であればスクという発音は絶対に持っていないはずだからです。
他に例えばスクール、スクリプトなんていう単語がありますね。これなどはコーノルド語ではなくラテン語からの釈用語なんですが、やはり本来の英単語ではないということになります。
それからギリシャ語から例えばスケルトンですね。こんな単語もありますが、スクと聞いたらですね、これつづりとしてSKであれSCであれですね。
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十中八九本来の英語ではないという、こういう可能性があるということを知っておくと、また英単語の見方が変わってくるのではないかと思います。
それではまた。