不規則な複数形の説明
英語に関する素朴な疑問。 なぜchildの複数形はchildrenなのですか。
これ非常に多く寄せられる素朴な疑問ですが、英語の名詞には複数形としてですね、基本的にはsをつければいいわけですが、少数の不規則な複数形というのがあります。
例えばですね、このchild、childrenというのが最たる例ですけれども、他にも例えばfootに対してfeet、manに対してmenというように母音を変えるタイプというのがある。
他にはsheep、sheepのように無変化の複数形というものもある。 他にはphenomenonに対してphenomenaというようなタイプもあります。
さらに妙なものとしてはoxに対してoxenというようなものすらあります。 これらは不規則で数も少ないのに暗記しなければならないということになります。
なぜこのような不規則な複数形があるのか。 しかもchildに対してrenをつけるchildrenなんていうものは他に例がないわけですね。
これはどういうことなのかということになります。 これは歴史を振り返ることによっていろいろと説明することができます。
1300年ほど前、英語の歴史を遡って、古英語という時代なんですが、この時代には実は様々な複数形が存在していました。
ざっと見て7種類ぐらいありました。 そして名詞によってどのタイプの複数形の作り方をとるかということが厳格に決まっていたんですね。
現在のS、規則複数であるこのSに相当するものも当時からありました。 ASと続いてASと言ったんですが、これ実際確かに多かったんです。
当時から比較的ですね。 ですが他の語尾も今ほど例が少ないわけではなく、例えばNをつけるタイプですね。
現代には実はoxen、あのENですが、あそこに痕跡を留めていますが、当時はANですね。 このAN語尾をつけて複数形にするというものは実はかなりあったんです。
Sほどではありませんが相当の生産性を持っていて十分に規則的と言っていいほどだったんですね。 他には母音の語尾、Uという語尾をつけたり、Aという語尾をつけたり、それから非常に重要なのがRUと綴られるRUというのをつけて複数形を作るという単語も非常にわずかですがあったんです。
これが実はチャイルドなんですね。 それから母音を変えることによって作るMAN、MENのタイプは昔から多くはありませんが当時からありました。
さらにムゴビ、シープみたいなものも当時からありました。 それぞれが多い少ないはありますが、それぞれのグループとしてある程度存在感を持っていて、今ほど不規則という感覚はなかったんですね。
単語によっていくつかのタイプはあるけれども、それぞれはまあまあ好頻度で現れているという形だったわけです。
チャイルドに関しましては当時から比較的マイナーな複数形の作り方でしたが、RUをつけました。 当時の発音はCHILDと言ったんですね。チャイルドはCHILD。これにRUをつけてCHILDRというと、これ複数形になったわけです。子供たちという意味になりました。
したがってこれが現在までもし生き残っていたら、多少の音の変化はあるとしても、おそらくCHILDに対してCHILDRというような複数形になっていたはずなんです。
例えば他に同じ仲間としては、子羊を表すラムというのがあります。LAMBと書くラムですね。これもCHILDと同じ仲間でRUというのをつけたんですね。ラムに対してラムルという風に発音して、おそらく現在まで生き残っていたらラムに対して複数形ランバーになっていた可能性が高いです。
ところが他のS以外の複数形についてもそうなんですが、後英語の次の中英語の時代に、軒並みですね、最も優勢であったSの複数形にほとんどの単語が乗り換えていくということが起こりました。
例えばネイムという単語は、今ネイムズという複数Nをつけてですね、ネイムに対してネイムンみたいなNをつけて複数形を作るタイプだったんですが、これがですね、こうした単語がこぞってSに乗り換えたんです。主要な複数形語尾だったということもありますが、ネイムズになっていくんですね。
同じようにラムもラムズになりました。しかしとりわけ好頻度の妙な単語、変わった単語に関してはですね、その昔ながらの複数形が結構残ったんですね。それが今のマン、メンでありフット、フィートでありシープ、シープでありこのようないわゆる不規則な複数形と言われているものは、
昔、小英語時代にはそこそこ規則的といってよかったものが残ってしまった結果ですね、今不規則と言われるわけです。他の単語が全てSに乗り換えてしまったんで、昔の状態を続けているだけで不規則と見られるようになったということです。
このチャイルドなんですが、やはり好頻度語だということがやはりポイントだと思うんですが、このRで複数形を作る、チルズルというRが残る形で伝わってきたんですね。ところがですね、ラムもRをやめてしまった。Sに乗り換えてラムズとなってしまった。
もともとRで複数を作るというものは少なかったこともあって、チャイルドが浮く形になってしまったんですね。チャイルダーみたいなチルズルみたいなRがある形、残りこそしましたが、やはりかなりマイナー感は拭えなかったと。
そこでこのRが複数形を表しているという感覚が、話し手の間にも希薄になっていった結果ですね。別の方法で改めて複数形を表さなければいけないという感覚になってきた。
チャイルドの変遷
その場合、中英語の時代にはまだですね、S完全に一変となったわけではなく、先ほども述べましたN、オックス、オックスンですね。Nというのもそこそこ幅を利かせていた、第2位の位置にある有力な複数形だったんです。
このチャイルドはこれを採用したことになります。つまり、チャイルドでチャイルダー、チルズルというRも存続させつつ、だけどこれでは頼りないと思ったのか、もう一つの有力な複数形の作り方であるNというのも添えてしまったということなんですね。これがチルドゥレンです。
つまり、いわばRもこれだけで本当は複数形を表せる。だけどそれでは足りないとばかりにEN、さらに複数形であることを明示しようとした。こういうものを二重複数、形態的には2つの複数形マーカーがついている形なんですが、これが慣用として定まって現代に至っていると。そういう次第です。
この話題につきましては、146番、そして218番のヘログの記事もご覧ください。