2025-10-15 11:35

#452. 協調の原理 ー 会話を成り立たせている暗黙のルール

#heldio #英語史 #英語教育 #英語学習 #hel活 #英語史をお茶の間に #協調の原理 #語用論
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サマリー

協調の原理についてのエピソードでは、会話が成立するためには暗黙のルールを守ることが重要であると説明されています。この原理は哲学者ポール・グライスが提唱し、会話における貢献の仕方やその規則が取り上げられています。

協調の原理の導入
英語史の著者の堀田隆一です。8月26日、金曜日。いかがお過ごしでしょうか。
英語の語源が身につくラジオヘルディオ。本日お届けする話題は、協調の原理 ー 会話を成り立たせている暗黙のルール、です。
本日もどうぞよろしくお願いいたします。
今週は英語学weekということで、英語の語源であるとか英語史から少し離れてですね、より一般的な英語学の分野の導入を図っています。
5日目となる今日はですね、語用論という領域ですね。プラグマティックスと言いますけれども、これは意味を扱う領域なんですけれども、意味論とは少し雰囲気が異なるんですね。
意味論、セマンティックスというのは、いわゆる辞書的な意味と言いますかね、単語の意味であるとか、文の意味も扱いますけれども、言葉そのものの意味ということですね。
一方、プラグマティックス、語用論というのはですね、語を用いると書くわけなんですけれども、実際に話者が言葉を使っているその現場で立ち現れてくる意味ということですね。
話者の意味、speakers meaningなんていうこともありますけれども、意味というよりも意図ということが関わってくるケースも多いんですね。
このような使われている現場でライブで立ち現れてくる意味、これを扱うのが語用論という分野です。
言語学の中でも比較的新しい分野で、20世紀後半から盛り上がってきたということで、現在では非常に研究が深まってきていますね。
語用論を扱うわけなんですけれども、その中の基本中の基本と言われるものにですね、会話というものがいかにして成立するかという問題、これを探る分野があるわけなんですけれども、この分野でよく知られているのが協調の原理、cooperative principleと言われますが、この協調の原理というのがよく言われるんですね。
これはもともとは哲学者のポール・グライスという人によって提案された会話分析の用語なんですね。
会話が成立するためには、2人の間、ここでは2人に限りたいと思うんですが、2人ともが守っていなければならない暗黙のルールというものがある。
これが協調の原理であるということなんですね。
グライスによりますと、こういうことです。
会話のそれぞれの段階で、自分が参加している会話のやり取りが目指している目的、方向によって必要とされるような貢献をしなさいという原理です。
もう一度言いますね。
会話のそれぞれの段階で、自分が参加している会話のやり取りが目指している目的、方向によって必要とされるような貢献をしなさい。
つまり、相手と作り上げている今の会話の流れ、これに沿うような形で協力して会話を成立させるように頑張ってくださいという、そういう原理原則ですね。
これをCooperative Principleと呼んでいるわけなんですが、具体的に言うと、この中で4つに細分化されます。
この4つは会話の効率と言われたり、会話の確率と呼ばれたりするものですね。
英語ではMaximに相当します。
効率というのは公の断りですね。
確率と言われることもありますが、確率というのは資格の格に法律の率ということですね。
4つの小規則があるということなんですね。
これもそれぞれ紹介していきたいと思います。
まずはですね、質の効率、質量の質の方ですね。
The Maxim of Qualityと言います。
この質の効率が言っていることはこういうことです。
会話に対する自分の貢献を真実のものたらしめること。
特に嘘と信じていることを言わないこと。
十分な証拠のないことを言わないこととなります。
つまり会話の内容の質、これをしっかり担保しなければならない。
誠実で嘘、偽りのないものにしなければならないというようなルールですね。
2つ目は量の効率です。質量の量の方ですね。
今度はThe Maxim of Quantityということですけれども、
これが言わんとすることはこういうことです。
会話のやりとりで当面の目的となっていることに
必要とされるだけの情報を提供するように心がけること。
かつ、必要以上に多くの情報を提供しないことです。
つまり会話に提出する情報ですね。
情報の量について多すぎてもいけないし、少なすぎてもいけない。
必要、十分なものをしっかりと与えなさいというルールですね。
例えば質問されているのに言葉足らずで十分に答えていないというようなケースですね。
これこのルールを破っているということになりますし、
逆に求めてもいないのにひたすらですね、余分な情報を出してくるっていう
いわゆる一言多いタイプの人っていると思うんですけれども、
これはこの合理を破っているのではないかと疑われるわけですよね。
量の合理ということでした。
3つ目は関連性の合理。
The maxim of relationということですね。
これは自分の貢献を関連性のあるものにすることということです。
つまり会話の流れを途切らせて別の会話に急に別の話題に移ってしまうであるとか、
前からの流れを無視しているというような場合ですね。
これはこの関連性の合理に反しているということになるわけです。
なめらかにスムーズに会話を続いていくには、
やはりお互い関連のあることで話を紡いでいくということですね。
これが重要だというのが関連性の合理です。
最後4つ目ですけれども、これは様態の合理ですね。
The maxim of mannerということで、会話の仕方、様態ということなんですけれども、こういうことです。
はっきりと明確に言うこと。
特に不明瞭な表現を避ける。
かつ曖昧さ、二重性多義性のことですね。
曖昧さを避ける。
かつ短く言う。
かつ順序よく言う。
ということですね。
言い方、話し方をはっきりと明瞭にお願いしますという、そういう合理です。
以上が強調の原理、およびそれを構成する具体的な4つの会話の合理ということになるわけなんですけれども、
協調の原理の観察と反則
これを聞いてですね、多くの皆さんが、これは会話のテクニックじゃないかというふうに聞いていたんではないかと思うんですね。
あるいはプレゼンテーションのテクニックではないかみたいなことですね。
ただ、グライスが言っているのはそういうことではないんですね。
テクニックとして、これみんな守りましょうというふうに呼びかけている、いわゆる規範的なことではなくてですね、
会話を眺めていると、人々の会話、自然に行われている会話を観察していると、
どうもみんな暗黙のうちにこのルールに、基本はですよ、原則ですから、
基本はのっとっているという観察結果に基づく記述なんですね。会話の仕方の記述、規範ではなくて、
つまりテクニックですからこれ守りましょうねという上から教育するような規範ではなくて、
あくまで下から叩き上げ、会話の現場を観察したら、どうも暗黙のうちにですね、
そんなことを申し合わせていないのに、みんな基本的にはこの協調の原理であるとか会話の合理というものを守っていると原則として。
こういう発見なわけです。
もちろんこれらの原理であるとか合理がですね、破られることっていうのも決して珍しくはありません。
ただ、暗黙の原則があるからこそ、逆に破られたときはそれとわかるという仕組みになっているんですね。
万弱な原理がある。
そしてそれを暗黙のうちに会話に参加する人々はみんな了解している。
だからこそたまに破られたときに、それは何かあるなと、何か違うことを伝えようとこの人はしているなということを鍵取ることができるということなんですね。
ここがポイントなんだと思います。
ここに照らして、例えば嘘とか騙し、はったり、喋りすぎ、話を反らしている、皮肉、お世辞、ジョーク、こういったものがですね、わかってしまうということなんですね。
ずらしがわかる。ずらしがわかるためには基本形がわかっていないといけないわけなんですが、人間は基本的にこれをわかっていると。
およそこれが強調の原理のポイントだと思います。
エンディングです。
今日も最後まで放送を聞いていただきましてありがとうございました。
英語学の夏季スクーリングも残すところあと1日ということになりまして、短期集中で一気にですね、誤用論までやってきたわけなんですけれども。
そのスクーリングと並走する形で、このヘルディオでも英語学の導入ということを試みてきました。
お付き合いありがとうございました。
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それでは今日も良い1日になりますよう、おったりうちがお届けしました。
また明日。
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