本とその研究背景
おはようございます。英語の歴史を研究しています堀田隆一です。 7月18日月曜日です。三連休の最後の日となります。皆さんいかがお過ごしでしょうか。
本日は、ボイシーのハッシュタグ企画
本の話をしように参加したいと思います。 そろそろ夏休みの時期ということで、この読書月間と言いますかね。このような趣旨でおそらくこのお題が選ばれているのではないかと思うわけなんですけれども
このチャンネル、英語の語源が身につくラジオheldioにふさわしい英語の語源の話題ということでお届けしたいと思います。 今日もどうぞよろしくお願い致します。
本の話をしようというお題なわけなんですけれども、私は英語史を研究していまして、英語史っていうのはHistory of the English Language
というわけなんですが、もう一つ言い方として、伝統的なこの分野の名前として英語文献学って言い方があるんですね。文献の学っていうことです。
English Philologyという言い方をします。 まさに文献学っていうことは文献、本を扱うっていうことですので、私は
研究者でもありますので、研究者っていうのは本を相手にするわけです。道具なわけです。 さらにその研究の対象そのものが文献ということになります。
過去に残っている本ですね。実際には、語英語、中英語の時期には今で言うところの本ということではなくて、いわゆる写本というようなことなんですけれども、
実際に写本をめくりながら研究するっていうことはなかなかコストが高くてできないので、その写本を模した形のファクシミであるとか、あるいはそれを冠本化した現代的な本の形にして印刷したもの、これを道具として研究するっていうことが多いですね。
なので当然ながら本とは切って切り離せないというような、そういう分野で研究をしています。さらにもちろん論文集を読んだりですね、専門書を読んだりするっていうことが多いわけですし、辞書であるとかその他の参考文献ですね、参考図書と呼ばれるものも使う必要があるっていうことで、
みんな周りには本が溢れている。最近ではデジタル化したものもだんだん増えてきてはいますけれども、やはり本なしでは仕事にならないというような、そういうところに身を置いているわけですね。一方で、一現代人として普通に本を読むわけですよ。
日本語でも英語でもそうなんですけれども、小説を読んだり新書を読んだりビジネス書を読んだり雑誌を読んだりっていうことで日々過ごしているわけですね。なのでこの点でもやはり活字と言いますか、本に触れる機会が大変多いと思うんですけれども、さらに加えて私自身が本を書くという仕事もしているわけですね。
筆筆ということです。そうしますと作る側、書く側、作る側というそっちの観点からも本と付き合いがあるということで、生活の中本だらけということにはなります。もっと言いますとブログを書いていますね。そしてそのブログに乗っかる形でこのVoiceでも放送することが多いわけなんですけれども、
ブログに書いてあるっていうことも大体のケースはですね、既存の本に書かれている内容を参考にしながら私の意見を加えて書いているっていうことが多いので、すべて日々毎日ブログ書いていますしこの放送もしているんですけれども、
結局のところ、本の話を毎回していると。本に書かれている内容に基づいて話をしたり記事を書いているということなんですね。なので今日のお題、本の話をしようということで、今週のお題ということなんですけれども、今週に限らず常に本の話をしていると言っても過言ではないんですね。
ブナの木とBookの語源
あるいは本に乗っかって話をしているということなのだろうと思います。私自身、こういう生活をしていますので、急に本の話をしましょうと言っても、どこから手をつけてよいやらということになってしまうわけなんですけれども。
ここはこのチャンネルがですね、英語の語源が身につくラジオヘルディオということでやっていますので、今日は本に関する英単語ですね。これを話題にしたいと思います。まず最初に思い浮かぶ英単語は当たり前すぎるんですけれども、これBookっていう本を表す単語ですよね。
これ非常に古い単語で、小英語からあります。さらに遡ってゲルマン語に遡ることができるわけなんですけれども、これがですね、語源的には元々何なのかと言いますと、実はブナなんです。ブナの木です。
ブナですね。これ何でかというと、元々ゲルマン人が持っていた文字であるルーン文字、これをブナの木の皮、樹皮に書いたということですね。ここに起源があるらしいということなんです。
ちなみにブナというこの植物、木の名前は英語ではビーチと言います。B-E-E-C-Hっていうことですね。このBookとビーチっていうのは語源的に同根、同じ語源に遡るっていうことなんです。だいぶ違うように思われるかもしれませんが、B-O-O-K、これBookですね。これに対してビーチ、ブナというのはB-E-E-C-Hということなんですけれども、
同じゲルマン語のドイツ語では、本のことはブーフと言いますね。それに対してブナはブーヘというふうに語尾にEをつけるだけなんです。つまり元々大変よく似ていたということがわかるんですね。
英語ではその後に様々な音の変化によってBook、ビーチというような形になってしまって、直接結びつけるのは難しくなっていますけれども、全く同語源に遡るということなんです。つまりビーチ、ブナの樹皮に書いた文字ですね。これが集まって後の本、概念としては本になるということですね。
これと関連してもう一つ付け加えておくべきことは、小英語ではボークと言ったんですね。このBookに相当するものをボークというふうに、母音が異なっていますが、小英語ではこのように言ったんですね。ボーク。
この複数形なんですけれども、今でこそSをつけてブックスと言いますけれども、小英語ではこれは母音を変化させる複数形だったんですね。ウムラウト複数とかアイミューテーションなんて言ったりするんですけれども、ボークに対してなんとベーチという形が複数形だったんです。まさにビーチですよね。
オーという音がエーという音になり、さらに語末のクっていう音がですね、柔らかい音になる何音かという過程を経てクの音がチになっちゃうんです。なのでボークとビーチですね。
現代までこの複数形が残っていたら、まさにBookビーチというような単数複数の形だったはずなんです。つまりブナと同じ形ですね。ここからも完全に同じ語源だということがわかるかと思うんですけれども。
ただ後に中英語期以降に普通にSつけて済ませようよという発想になりまして、複数形はブックに対してブックスとなった。つまり小英語のベーチという言い方はなくなったんですね。今に残っていればビーチだったはずなんですけれども、これは死に絶えてしまいました。
ドイツ語では今でもですねブーフに対して複数形はビューヒャーという形でですね、いわば小英語のボークベーチにそこそこ相当するような形が未だに残っているんですけれども、英語ではSに乗り換えてしまったので複数形はブックスという当たり前の形になってしまってビーチは残らなかったと。こんな流れなんですね。
古典語と現代の関連
さて、このブナを意味するビーチと本のブックの関係というのは語源的に同じ語言に遡るんだという共通してるんだということがわかったかと思うんですが、実はこのビーチブナという単語は言語学史上結構重要な単語なんですね。
ブナ問題と呼ばれる比較言語学の非常に大きな論争と関わったもので、これについて関心がある方はここでは詳しく踏み込めませんので、ブログの方にリンクを貼っておきたいと思います。このチャプターにリンクを貼りましたので、そちらの方を眺めていただければと思いますが、実はこのビーチブナという問題をめぐってですね。
引用語の祖先、ホームランドですね、故郷がどこにあったのかという大きな論争に発展したそんな歴史があるんですね。
関心がある方はそちらを見ていただければと思います。さて、ブックというのがもともとはビーチと関係するブナと関係する単語で、つまりブナというのはルーン文字を書き記した材料ですね。
ブナの木の樹皮ということ、つまり書くための素材を表したということなんですけれども、他の本を意味するですね、単語も大体この書く素材、その上に書かれるっていうその素材ですね、ここと関連が深いことが多いんですね。
ラテン語では本のことをリベルというふうに言いますね。ここからフランス語ではリーヴなんていう単語になってますけれども、このリベルという単語が語尾をつけた形で英語にもいくつか入っています。
例えばライブレリっていうのが一番わかりやすいですね。図書館ですから図書館の師匠さんライブレリアンと言いますけれども、これまさに本がある場所であるとか本を扱う人というぐらいの意味なんでリベルというラテン語由来の本を意味する単語ですね。
これがフランス語を経由して中英語期に英語に入ってきたということで、本を関係する単語として今でも残っています。このラテン語のリベルもですね、もともとどういう意味だったかというと。
木のない日なんです。木の樹皮です。樹皮の内側の部分。結局そこに文字を書いたよというところがスタートとなって最終的に本という意味になったという意味ではですね、先ほどのビーチに由来するブックとそこそこ似ている素材を利用してそれによって本の意味を表すということなんですね。
さてもう一つ行きたいと思うんですけれども、ライブラリーっていうのはもともとフランス語から直接的には借りたものなんですね。
リブレリということです。そして現代フランス語でこのライブラリーに相当するリブレリっていうと図書館ではなくて本屋さん書店の意味なんですよ。書店になっちゃうんですね。
つまり同じ単語ライブラリーリブレリっていうのが英普通語にあったとしても意味が違うって言うんですね。
英語では図書館、フランス語では書店というふうにこういうのをフォザミって言ったりしますね。
形はそっくり、基本的に語源が同じ単語にも関わらず英普通の各言語側で意味は異なっているので要注意っていうようなそういう単語のペアのことをフォースフレンス誤った友達っていうことですかね。
これをフランス語でフォザミって言うんですが、要注意、ペアというふうに言われたりしますね。これなんですけれども、ではフランス語では図書館のことをなんというかというとビブリオテイクという言い方をするんですね。
本の語源とその影響
この単語の前半要素ビブリオというのが本のことで、英語にもだいたいラテン語からフランス語を経て英語に入ってきた中英語期に入ってきたものっていうのが多いわけなんですが、まず典型的にはバイブルがそうですよね。
これザブックっていうことです。まさに科の本っていう感じですよね。それからビブリオグラフィー、書詞学なんていうのがありますし、ビブリオマニア、書物マニアっていうことです。それからビブリオファイルっていうと愛書家、蔵書家というような言い方もあって、ビブリオっていうのは本来的に本のことだっていうのがわかると思うんですね。
これは遡りますと、実はビブロスというフェニキアの港町の名前なんです。
ギリシア人がエジプトのパピルスを輸入するのに、このビブロスという港町を経由してそこからパピルスを取り入れていったっていうことなんですね。
そこから結局この港町の名前ですよ。こういう名詞ですよ。これがそのままパピルスの意味になり、転じて本という意味になったということで、ギリシアではこのビブロスという単語が本のことを意味するようになったっていうことです。
ここでもつまり究極的にはパピルスを想起させる港町の名前っていうことですね。ここに由来しているという点ではやはり素材なんですよね。ポイントは。
ギリシア語でこのビブロスというのが本の意味になったんですが、いわゆるザブックぐらいの意味ですね。そしてホーリーをつけてタビブリアタハギアといったのが聖書ということですね。これ文字通りにはザホーリーブックスということです。
新訳旧訳に刺さりますので複数形ということですね。ここから本の中の本つまりバイブル聖書という意味が生まれて、後の西洋社会に伝わったということになります。
最後にあまり使われない単語かもしれませんが、コーデックスっていう単語もありますね。コーデックスっていうのは、いわゆる巻物ではなくて、閉じ本というですね。巻物に対するところのつまりスクロールに対するところのコーデックスというような言い方で、こうした本であるとか閉じ本のことをコーデックスって言いますね。
これはラテン語に遡る単語なんですけれども、その意味はですね、木の板っていうことなんです。つまりやはりこれもですね、各素材に目をつけて、後に本、閉じ本という意味に発展してきたということなんですね。
としますと、今日挙げた4つの単語ですね。英単語にすべてなっていますけれども、あるいはその一部に含まれていますけれども、Book、LibraryのLibreの部分ですね。それからBibleであるとかBibliographyっていう時のBiblioの部分。そしてコーデックス。
これらの単語あるいは要素はですね、すべて英語に入ってきたルートというのは異なるかもしれませんが、最終的には文字を書く素材にすべて行き着くということなんですね。
本の文化と未来
西洋の古代中世ではですね、この木の皮に書いてみたり、そしてその後、用紙、パーチメントになったり、そして最後には今に続く紙になったりしたわけです。そして20世紀後半以降はですね、現代に至るまでデジタルで文字が書かれるという時代になってきました。
素材はいろいろ変わってきましたけれども、本という媒体あるいは本という概念そのものは未だに生き続けて、我々に知識、知恵を与えてくれているということですね。私も本の読み手でもあり書き手でもあるということで、この本の文化、これからも携帯はデジタルになるのかもしれませんが、守っていきたいとそのように考えます。
ということで、Voicyの今週のハッシュタグ企画、本の話をしようというお題を受けまして、本を表す英単語の語源についてでした。今日も最後まで放送を聞いていただきまして誠にありがとうございました。このチャンネル、英語の語源が身につくラジオヘルディオでは、ご意見ご感想ご質問、そしてチャンネルで取り上げてほしいトピックなどをお寄せいただいています。
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番組の最後に講座のお知らせです。8月6日土曜日の午後3時半から6時45分、朝日カルチャーセンター新宿教室にて、全4回のシリーズ、英語の歴史と世界英語の第2回講座を開くことになっております。タイトルは、いかにして英語は拡大したのかです。
方法としましては対面オンラインのハイブリッド講座ということになっておりますので、ご都合の良い方法でご参加いただけます。
第1回講座は世界英語入門と題しまして、6月11日土曜日に開講したんですけれども、非常に多くの方にお集まりいただきまして、楽しく世界英語の話題について議論することができました。
シリーズではありますけれども、各界独立しておりますので、第2回から参加されるということでも全く問題ありません。
このチャプターに詳細な情報が記されているホームページへのリンクを貼っておきますので、そちらよりご関心の方はアクセス情報を得ていただければと思います。
今度のこの第2回はですね、いかにして英語は拡大したのかということで、近現代史ということです。
およそ18世紀以降ということが中心になると思うんですけれども、英語、現代的には世界語というふうに言われているわけなんですが、これが真の意味で世界進出を始めたのは、せいぜい18世紀以降なんですね。
その歴史は決して古いわけではないということです。
単なる島国の一言語がいかにしてこのように世界化してきたのか、リンガフランカへと成長してきたのか、この辺りの世界的拡大の道筋をたどるということが主なテーマとなってきます。
この話題に関心を持たれた方は、ぜひご出席を検討していただければと思います。
それでは、月曜日の休日をお元気でお過ごしください。
本田隆一がお届けしました。