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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
showの意義と歴史的変遷
今回取り上げる話題は、show の意味、発音、綴字の謎、という話題です。
このshowという非常に頻度の高い日常語といって良い動詞なわけですね。
見せる、示すということで日々使う当たり前の単語なんですが、実はいろんな点で謎が多い単語なんです。
これは本来の英語なんですね。古英語からあります。さらに遡れば、ゲルマン語に遡りますね。
なので周辺のゲルマン語には大体関連する単語があるわけなんですけれども、古英語ではシェアウィアンというような発音でした。
シェアウィアン。これが発音変化でですね、showという現在のこのshowになっているわけなんですが、古英語の段階ではシェアウィアンという形の動詞だったんですね。
そしてその古英語、約1000年前の英語ですけれども、その頃の意味はですね、実は見せるではなくて、見るなんです。
つまりlook、see、behold、observeといったような、見せるんではなくて、人に何々を見せるんではなくて、見るですね。
そのまま自動詞、見るというのが原理なんです。lookとかseeの意味なんですね。
当時から実はshow、現在の見せるという意味もなくはなかったんですけれども、まず基本的にですね、このシェアウィアンという古英語の動詞は、見るというlook、seeの意味だったというのがポイントです。
語源を遡りますと、ゲルマン語にあると言いましたが、これすべて他のゲルマン語でもですね、やはり見るというものが原理で、現在もそれを保っているんですね。つまり見るという意味です。
ところがなぜか英語でのみですね、中英語記以降に、見るという原理と並んで、見せるという意味ですね、現代に繋がる意味を発生させて、
そしてむしろそちらの方がメインになってしまったのが、現代のこのshowということなんですね。英語でだけこういった妙な意味変化が起こっている。
これなぜかよくわかってないんです。よくわかっていないということなんで、これ以上なかなか説明はできないんですけれども、起こったこと、メカニズムとしてはですね、一種の刺激的な意味になったということですね。
人が何々を見るということですね。見る、それに対して人に何々を見せるということで、cause to see, cause someone to see, cause someone to look atぐらいの刺激の意味になったということなんですね。
何がどう変わったかというと、刺激じゃなかった普通の意味から刺激に変わったんだというふうに、起こったことを説明はできるんですけれども、記述はできるんですけれども、じゃあなんでこの刺激化と呼ばれるような意味変化が起こったのかとなると、これについてよくわからないということなんですね。今のところ謎というほかないということです。
これが中英語でですね、起こったとされて、初期中英語ぐらいからですね、この意味が新しい意味ですね。この見せるという、示すという意味が出てきて、だんだんと勢力を得てきて、一般の見るという意味、これをですね、駆逐して押しのけていったということで、現在は見せるという刺激的な意味、示すという意味になったということなわけですね。
発音と綴り字の謎
意味については、これ以上よくわかっていないということで、ここまでにしておきたいんですね。この意味についてすらですね、謎が多いわけなんですが、もう一つ、発音についても、さらに綴り字についても、この非常によく使われる章という単語なんですが、いろいろと謎が多いっていうんですね。
この発音の問題と綴り字の問題っていうのはリンクしていますので、一緒に扱いたいと思うんですけれども、小英語では先ほど述べたように、share we anというような形だったんですね。share we anということですね。
第1音節に、エイヤという二重母音、超二重母音っていうんですかね。エイヤという母音があったということがポイントです。現在このエイヤなんていう繋がり、母音の繋がりっていうのは存在しないんですね。
小英語にあったこのエイヤのような超二重母音はですね、何らかの形で普通の二重母音になったり、あるいは超母音になったりっていうふうに発展を遂げたんですね。エイヤという繋がりは、かつてはあったけれども今はない。
かつてのこのエイヤはどういう形で発音上変化してきたかというとですね、これ2通りあったんです。このエイという長い母音とアという母音ですね。この2つが合わさってエイヤだったんですが、この2つ目のアがですね、後に中英語期ぐらいにオになるんですね。
つまりエイヤだったものがエイオのような超二重母音になると。エイオという段階で、さあ次は何が起こったかというと、どっちかの母音が取られるっていうことが起こったんですね。
つまりエイとオというのが今繋がっているわけなんですが、エイの方がメインであるということでこっちが取られたケースと、オこれがメインであるということでこっちが取られたということで2つ分かれます。
いずれの場合にもですね、もともとこの問題となっている母音の後にWの音、後英語でシェアウィアンですね。ウィっていうこのWの音があったっていうことを念頭においてください。
まず最初のエイの方がメインであるという風になって、こっちが取られるとですね、エイウつまりシェアウっていう形になり、最終的にこれがシュウになっちゃうんですね。
なのでこれまかり間違っていれば現代ですね、この見せる示すという意味の単語はシュウという発音であった可能性があるわけです。
靴のシュウ、シューズのシューズですね、これと全く同じ発音になっていた可能性がある。
2つ目はエイオという組み合わせのこの後半部分つまりオの部分が取られた場合ですね、これがメインであってその後にWが続くわけなんですが、これがショウという現代の発音につながる。
この2つに分かれたんですね。そして結果は分かってますね、我々。シュウかショウかどっちかになるはずだったのが後者ですね。
オにWが続くショウという形が一般的になって、現在のショウという発音に至るということなんですが、まかり間違っていればですね、前半部分の要素が取られればこれはシュウになってたという可能性があるわけです。
では、なんでこのショウの方になったのか、最終的に選ばれたのかというのは、これはなかなか難しい問題なんですが、実は両者の間で長い間揺れてました。
その証拠としてですね、スペリングです、つづり字。シュウとなる系列ですね、これのつづり字は典型的にSHEWとつづられました。
これでシュウと読ませているわけですね。一方、現代に続くので分かると思いますがOWでつづられるものですね、これはもちろんショウということで、この2つがつづり字上もずっと平存して、実は近代までずっと平存していたんです。
SHEWだったらシュウ、SHOWだったらショウというのが一応理屈上つづり字と発音の関係ではそういうことなんですが、これがクロスしたりしてですね、めちゃくちゃになります。
つまりSHEWとシュウのようなつづり字でありながら発音上はショウというようなことが起こった。そしてこれはですね、実に本当に最近の近代までSHEWのつづりというのは使われたんです。
今でも下手するとですね、辞書にこのつづりに載っていると思います。SHEWと書いておきながら発音はだけど今風のショウということですね。
現代の使われ方と謎
そしてコーパスで調べる限りですね、1800年前後あるいはもう少し前かなと思いますが、そのぐらいまでSHEWの方がメイン、そっちの方が主流だったんですが、この1800年ぐらいを境にですね、一気に今風のSHOWのつづり字に変わっていきます。
今では何ともなく日常的に使っているSHEWですが、意味、発音、つづりともに謎の多い語なんですね。ではまた。