ハラスメントの発音の違い
今回のヘログラジオ版は、みなさんにいきなり質問です。
ハラスメント。これ、日本でも聞かない日はない、見ない日はないというような話題のキーワードになっていますが、このハラスメント、ハラスですね。
これ、英語の単語としては、どこにみなさん強制を置きますか。
ハラスメントでしょうか。それとも、ヘラスメントでしょうか。つまり、第一音節、第二音節、どちらにアクセントを置きますかということですね。
これは実は、両方あります。名詞形、メントを付けた名詞形も、メントのない動詞形も一緒なんですが、第一音節、第二音節、両方の発音があります。
アメリカ英語を見てみましょう。これはですね、ハラスメント、ハラスという発音、第二音節にアクセントが落ちるという発音が、実は87%で圧倒しています。
つまり、アメリカ英語は基本的にハラスメントなんですね。13%の残りがハラスメントになっています。
一方、イギリス英語ですが、逆です。実は、ハラスメントという第一音節にアクセントを置く発音が多いんです。68%です。
それに対して、32%がハラスメントという、アメリカ英語ばりの発音ということですね。
ただ、アメリカ英語は87%と、ハラスが圧倒しているのに対して、イギリス英語の場合は、ハラスが多いとはいえ68%です。
3分の1ぐらいはですね、ハラスメント、ハラスと言っているということで、圧倒とは言えないかもしれません。
さあ、このような分布があるんですが、もっと面白いことにですね、それぞれアメリカ英語、イギリス英語の中で見てみましても、実は年配の方と若年層、若い方とではですね、発音の傾向が違うんですね。
言語変化とアクセントの変化
どちらの英語においても、年配の方ほどですね、ハラスメントと言います。
一方、若い世代は、ハラスメントと言っています。
つまりですね、全体的にどちらの発音をするかというパーセンテージは、アメリカとイギリスで結構は違うにせよ。
共通しているのは、若い世代で、ハラスメント、ハラスという第二音節にアクセントを置くというのがどんどん増えてきているということですね。
それに対して年配の方は、ハラスメントという割合が若年層に比べれば高いということです。
ということは、何を示唆するかというと、どんどんですね、若い世代、これから次の世代にこの発音を引き継いでいくと思われるわけですが、
どんどんとこのハラスメントというアメリカ寄りの発音がですね、これはアメリカ側でもイギリス側でもパーセンテージがどんどん大きくなってきているということなんですね。
このままのペースで進めば、数十年後にはですね、次の世代、そして次の世代には、ハラスメントとかハラスというものがだいぶ幅を利かせて、
ハラスとかハラスメントというのは、だいぶ残るにしても非常に古めかしい発音として残っていくという可能性があります。
これは単に数十年のタイムスパンで見ているのすぎませんが、これも立派な言語変化であって、英語史の歴史は1500年ぐらいありますが、
この数十年だけを見てもですね、実は面白いことが起こっているということなんですね。
この種のアクセントの位置の変化というのは、実は非常に多くの単語で起こっています。
これは単に英米差という問題だけではなくて、この数十年というタイムスパンでですね、変わっているということでもあるんです。
他によく知られているものとしては、論争を意味するcontroversyなのか、それともcontroversyという発音なのかという問題であるとか、
カリブ海の地域ですね、表すCaribbeanなのかCaribbeanなのかというような問題もあります。
このように発音の揺れ、とりわけアクセントの位置の揺れを示す単語というのは、実は皆さんが思っている以上に多いです。
これは単に揺れというのではなくて、英語史上の重要な言語変化の例ということになります。
この問題について関心がある方は、ヘログの342番、321番、366番、そして488番の記事をご覧ください。