2025-05-16 10:00

heldio #300. なぜ Wednesday には読まない d があるの?

#英語史 #英語教育 #英語学習 #綴字と発音の乖離 #黙字
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サマリー

このエピソードでは、英語の曜日名「Wednesday」のつづりと発音の不一致について探求しています。主神オーディンに由来する語源を辿りながら、古英語から中英語への音の変化や、発音に反映されない黙字についても言及しています。

Wednesday の疑問
おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも、辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題は、なぜ Wednesday には読まない d があるの、という素朴な疑問です。
昨日の放送では、曜日名の語源としてですね。
サンデイからサタデイまでの7つの英語での曜日名ですね。この語源についてざっと解説しました。
その中で水曜日ですね。 Wednesday にあたるわけですが、これについて少しコメントしたんですが、今回はこのつづり字と発音に注目したいと思うんですね。
これは皆さん、英語を学び始めの時にですね、引っかかった記憶があるのではないかと思いますし、私自身もですね、なぜこれ d が入るんだと思いながら、つづり字を練習した記憶があるわけなんですが、
Wednesday っていう風に書くんですよね。あたかも Wednesday であるかのようにつづられるのが、この水曜日なわけです。
W-E-D-N-E-S-D-A-Y ということで、これで Wednesday と d がないかのように発音されるっていうことなんですね。
いわば英語にはこの字のですね、読まない文字 Silent Letter これ黙る字ですね。黙字という風に言われるんですが、そのですね、最たるものと言いますが、かなり英語学習の早い段階で出会ってしまう黙字を含む単語の一つだと思うんですね。
これが Wednesday なわけです。なんで英語はこんな風に発音しないのに d みたいなですね、文字があるんだろうと不思議に思いながら、皆さんしょうがないのでこれ暗記するわけです。単語テストとかあるんで。
多くの皆さんが不思議がありながら覚えるんですが、当たり前になってくるとですね、これ問わなくなります。いわば喉元すぎれば暑さ忘れるっていうあれですね。慣れてしまうともうそんなもんだということで問わなくなるんですね。
英語史という文言をですね、実はこのかつては思っていた何でだよっていうツッコミですね。慣れてしまってそのツッコミを忘れてしまった後になって改めて振り返って突っ込むっていうのが実は英語史の面白さなんですね。真面目にこの問題考えてみたいと思います。なぜ Wednesday のように書くのに Wednesday は読まないんだというような話題です。
語源の解明
改めて語源を紐解いてみますね。これは昨日の放送でも述べたことなんですが、これはですね、ゲルマン神話、主に北欧ですが北欧神話のオーディンという主神ですね。
これに由来するんですね。オーディンの日というふうに神話の神の名前ですね。それがそのまま惑星の名前にもなるわけなんですけれども、多くの場合ですね。この神話の神の名前、特に北欧神話でいうところの主神、最も重要な神ですね。これがオーディンというわけですね。
これが同じゲルマンでもですね、西ゲルマンの言語である英語ではちょっとナマってウォーデンというふうになるんですね。 W が含まれてウォーデンということです。
この水曜日というのはこのウォーデンの日というのが語源ですので、ウォーデンズデイとなります。
そうするとウォーデンですから当然 D があるわけですよ。
だからこそ現代のこのウェンズデイにも D があるのかというふうに、つまりつづり字の謎はわかりますね。語源を紐解けばウォーデンの日だからということで、D があるのは当然ということになります。
実際ですね、1000年以上前の古英語という、現在の英語の祖先ですね。そこではウォードネスデイなんて言ってました。
ウォーデンの日ということですね。ウォーデンに、いわゆる現代であればアポストロフィエスに相当する所有格の語尾がつきますね。
で、デイということなんで、ウォードネスデイのように、ちゃんと D がつづり字上ももちろんありましたし、発音上もあったということなんですね。
ではその後どうなったかっていうとですね、古英語の次の時代、中英語と呼ばれている時代ですね。中期英語ということです。
ミドーイングイッシュと言いますが、1100年から1500年ぐらいのことなんですが、そこでではですね、その古英語時代のウォードネスデイっていうのがですね、少し変化した形で現れています。
例えばどういう形があったかというと、このDNですよね。ウォードネスデイ。ウォーデンですから、DNっていう繋がりがあるんですが、これがですね、ひっくり返っちゃうのがあるんですよ。
ひっくり返ると、ウェンデスデイみたいに、DNだったものがNDに、音がひっくり返る。音の位置がひっくり返るということで音位転換という風に呼んでいる現象なんですが、これ結構ありまして、こういう音がひっくり返るということですね。
どうもこの単語に起こったらしい。
そうすると、ウェンデスデイみたいな形になるんですね。ウェンデスデイ。こうすると、ちょっと発音しやすいと言えばしやすいかもしれません。
その後ですね、ウェンデスデイというところでDが、肝心のDが消えてしまうんですね、発音上。
14世紀から17世紀あたりには、このDが消えた綴り字、発音というのが現れて、ウェンズデイ。
我々が知っているあの発音に近づくんですね。ウェンズデイという風になります。
つまり、もともとDNS、ウォーデンスデイですから、DNSみたいな繋がりだったものが、そのDNの部分がひっくり返ってNDSになるんですね。
ンズっていう風になります。ウェンズデイです。
結局ですね、このDも取れてしまって、ウェンズデイ、ウェンズデイとなったというような、どうもこのような音の変化を中英語からその次の近代英語記にかけて、こうした音の変化を経たということのようなんですね。
発音上は、今述べたような変化を経て、ウェンズデイになったんですが、綴り字はまた別世界の話ですので、非常に古い形ですね。
つまりDがあった時代の綴り字、つまりちゃんとDが入っているわけですよ、文字に。
それが現代まで残ってきたということですね。
発音の変化
結果として、綴り字では古いものが残ったんだけれども、発音では音の変化の結果ですね、Dが反映されないことになったので、
結果、綴り字と発音を比べてみると、ちょっとずれてるよねということになるわけです。
あるいは目字、Dが書かれているのに発音しないというような、変な状況に、ちぐわぐな状況になってしまったということなんですね。
これは英語には非常に多く観察されるもので、ウェンズデイというのは典型の一つということになります。
こういうわけで、綴り字にはDがあるんだけど発音はされないという形になったんですが、一つ専門的には問題がありまして、何かというと、
ウォーデンですよね。だからオーという母音があるはずなんですね。
古英語には確かにあった。
ところが今はウェンズデイという意味、イで書くエ、エ、ウェンズデイ、ウェンズデイ、エの音ですよね。
これがなぜ大元はオだったはずなのに、エに変わってしまったのかということについては、いろいろとわからないようでですね、
専門的にも問題になっている、謎のようなんですね。
ただこのエの発音自体はかなり古い段階ですね。
もう古英語の段階からエのバージョンというのも現れていて、でもオがエに変わった、あるいはバリエーションとしてエが存在したという、
このこと自体はかなり古くからわかっている、古英語でもあったし中英語にもあったということで、
このエの母音を持つウェンズデイが現代の標準ということになっていますけれども、
このエの由来というのは必ずしもはっきりとわかっていないようなんですね。
ちなみにですね、今述べてきたような発音の変化っていうのはあくまで標準英語、我々が外国語として勉強する英語ですね、標準英語を勉強するんですが、
そこでの話に過ぎず、イングランドの北部方言であるとか北西部方言では、実はですね、古英語の本来的なウォーズネスデイ、
つまりDがちゃんと発音されていた例の発音ですね、これにかなり近い発音が未だに残っているんです、方言では。
ウェデンスデイ、ウェデンスデイです。
つまりこれ、つづり字をかなりそのまま忠実に再現している発音ですね。
こういうのもあるんだということは知っていていいかもしれません。
ではまた。
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