2025-06-16 09:58

heldio #331. 長い間英語には標準語がなかったって本当!?

#英語史 #英語教育 #英語学習 #標準英語 #方言 #標準化
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サマリー

このエピソードでは、英語の歴史において、長い間標準語が存在しなかったことについて詳しく掘り下げています。ノルマン征服などの歴史的出来事が、英語の地位や標準化にどのように影響を与えたのかが解説されています。

英語の標準語の歴史
おはようございます。英語の歴史を研究しています堀田隆一です。 このチャンネル英語の語源が身につくラジオheldioでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして新しい英語の見方を養っていただければと思います。 今回取り上げる話題は
長い間英語には標準語がなかったって本当? という驚きの話題です。
現代の英語を勉強している我々からすると、学ぶべき英語、様々な英語があります。
基本的にはアメリカ英語、あるいはイギリス英語というブランド名のついた古くから標準として固まってきたと信じられている世界標準っぽい
体裁をしている英語ですね。これを勉強するわけです。 そしてなんとなくそれを標準英語、標準語とみなしていて、実はどこからどこまでがですね
標準英語で、どこからが非標準になるかっていうのはカチッと決められたものではないんですけれども、なんとなく標準的に
語らされている、書かれているものっていうのをスタンダードとみなして、それをターゲットにして多くの英語学習者はですね、勉強しているんだと思います。
とすると現在でそんな状況ですから、これは昔からあったんだと。 こういう英語の標準というものは昔からなんとなくではあるんですね。
決まっていたに違いないと思うかもしれませんが、英語の1500年以上の歴史の中でですね
この標準語というものが定まったのは、この近代のことなんですね。 ざっと500年ぐらいと言っておきましょうかね。
もちろん500年っていうのは長い年月ではありますけれども、全体として1500年以上の歴史を持つ英語という言語ですね。
歴史全体から見ますと、本当に最近の3分の1の時代ということですね。 直近数百年の間にしか標準語がなかったということになるんですね。
そうすると、これを知らないとですね、多くの人が驚くんですね。 標準がないっていうことは、お互い異なる地方の出身者であるとか、お互い通じなかった、すべて方言ということだったの?
ということになるんですが、そうなんです。 その通りなんです。
そして現代の英語であれ日本語であれですね、多くの近代国家の近代語はですね、標準語というものを持っています。
日本の場合それを共通語と言ったりすることもありますが、働きとしてはだいたい一緒ですね。
様々な方言が地方にあるっていうのはわかっているけれども、それを束ねると言いますかね、全体のいわゆる扇の要となるような、一つのお互いに理解可能な標準語というものがあると、これ社会的にとっても便利なわけですよね。
なので、こういう標準、扇の要のようなものっていうのはあるもんだと、我々現代に生まれ育っている人間としてはですね、思い込むわけなんですが、このような標準語というものが定着するのはですね、これどの国でもですね、日本だけではなくイギリスだけではなくですね、主に近代国家においては近代期を迎えてからのことなんですね。
それ以前には、いわゆる標準というものは、むしろないことの方が普通だったっていうことなんです。
さて、英語の場合どうだったのかということを少し詳しく見てみたいと思いますが、まず古英語の時代、449年から1100年ぐらいまでということになってますが、この時代ですね、後期にかけて、10世紀、11世紀にかけて、
一種の古英語の標準みたいなものができていたと、一般にはされています。
ただですね、これもですね、いわゆる今我々が考えるような標準、つまり全国に広く通じるという意味での標準ではなくて、もっとですね、かなり制限された形の標準語、そういう意味では標準語と言っていいのかどうかというような議論が実はあるくらいなんですね。
当時のものを書いたり読んだりできる非常に上流階級ですよね、知識人階級が、その小さいサークルの中で同じようなスペリング、統一的なスペリングを用いていたであるとか、そのレベルでの比較的小さな社会階級のサークルの中でそれなりに統一感があったということだけであって、
国民一般、英語をしゃべる人々ですね、一般にとって何か現代に言うところの標準に相当するものがあったかというと、ちょっと疑問というような議論が持ち上がっています。
ですので、少なくとも現代的な我々が想像する意味での標準というのは、小英語あるいは小英語後期にあったとされるんですけれども、実のところ大したものではなかったなというのが実態なんではないかと私は思っています。
ノルマン征服の影響
さて、1066年という年にノルマン征服という大事件が起こりました。これはですね、フランス北西部のノルマン人たちにイングランドが征服されてしまったという事件ですね。
これ以降、イングランドの公用語はですね、表向きにフランス語になります。
そしてしもじもの言語ということで英語はですね、その地位を落としていきます。
実態としては9割以上のイングランド人が今まで通りですね、普通に英語をしゃべっていたわけで、あくまで少数のノルマン人がロンドンに乗り込んできてですね、そこでいわば植民地支配していたということなんです。
ということで英語の国であることは実態としては変わってないんですけれども、立場上ですね、社会的な立場としてはフランス語が上で、そして英語が下っ端の言語という格付けに変わったわけです。
ガクンと国家語、国語の地位から非国語の地位に落ちたということになりますね。
そうすると標準語もヘッタクレもありません。そもそもこの国の標準的な言語はフランス語なんだと、少なくとも公的に標準な言語はフランス語なんだというのが建前になりますから、その下の言語である英語ですね。
これは後英語、後期に一応仮の標準という名前がもしあったとしてもですね、1066年以降この標準語という看板は下ろされることになるわけですよね。
英語はそもそも標準かとか標準ということを語るにも値しない底辺の言語ということですね。
癒やしい言語ということになりましたので、各地でやはり英語の方言が話されていましたが、それを束ねてまとめ上げようという、つまり標準語になろうとするような力がですね、完全に失われたということです。
すべてが底辺の言語たち、方言たちという扱いになって、そこから一つ抜けた標準語、標準英語なんていうものが現れる、新たに作り出される、そういった機運は全くなかったということです。
この時代が3世紀ぐらい続きましたね。そして14世紀後半あたりから少しずつ英語が復元してくるんですね。フランス語に追いついて、そしてフランス語を抜いて、再び国語、国家語の地位に帰り座こうとしていた。
ところが3世紀ぐらいずっと標準がない状態で英語というのはやってきましたので、じゃあいきなり標準を作ろうといっても簡単に作り上げることができないんですね。今までバラバラだったものを急にまとめようといっても難しかった。
そこで少しずつこのロンドンの宮廷であるとか官僚たちが使っていたスペリングであるとか語法のようなものが緩やかに標準的なものとして見なされるようになってきたんですが、このスピードは非常に緩やかなものであって、14世紀後半、そして15世紀ぐらいを通じて少しずつ固まっていきますが、
16世紀になってもまだまだだしというような形で標準化の動きはとってもゆっくりだったんですね。
例えば標準化でも発音とかスペリングいろいろありますけれども、スペリングに関する限り本当の意味で一つの形として定着した様々なスペリングがあったところを同じ単語にですね。
それが一つのズバッという形に定まったと言えるのは17世紀半ばぐらい、あるいは本当の意味で現代的な形で固定化したのは18世紀半ばですから、今から250年ほど前ということになります。
こうしてようやく現代の我々が知っている標準語、標準英語というものがおよそ定まったということなんですが、英語の歴史の大半の時代、実は標準語なんてものはなかったということになります。
それではまた。
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