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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしてきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる素朴な疑問は、a lot of の lot とは、という話題です。
このたくさんの多くのを意味する a lot of というフレーズは、非常に頻度が高いですね。
とりわけ交互で使われるということで、many とかあるいは量も表せますので、much なんかの代用として、非常にカジュアルなインフォーマルな雰囲気を持って、非常に多様されるということですね。
もう少しインフォーマルになると、lots of のように複数形、lots of というふうに使うということも多いですね。
あまりによく使われるので、a lot of は3語なわけなんですが、実は3語には聞こえない。
ある意味、many とかmuch を意味する1語のように、ぎゅっと縮約された形で、a lot of people という形で使うということですね。
もはや統合的分析というのはされていないですね。
例えば、a lot of people だと、人々の、lot は多数ぐらいの意味だとすると、人々の1つの塊の多数みたいな分析のされ方はもうなされていないで、a lot of これが many なんだというふうにネイティブの感覚としても当然捉えているわけですよね。
こういった身近な表現というのは、語源を紐解くと結構面白いことが多くてですね。
実はこの使い方、今ではこんなに使われる表現なわけなんですが、歴史としては200年ぐらいなんですね、せいぜい。
この2世紀ぐらいということで、そんなに古い表現ではないんです。
lot というのはそもそも何なのかということですね。
今では多数というぐらいの意味に結局なっているわけなんですけれども、もともとそういう意味があったわけではないんですね。
この表現の由来に今日は迫ってみたいと思います。
さあ、この lot という単語なんですけれども、この単語自体は実は非常に古くて、ゲルマン語から見られるんですね。
そして、古英語の時代には h っていうのを最初に語頭にきてですね。
lot という形で、flot という形で使われていたんですね。
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これはですね、くじ、くじ引きです。
現在もこの意味がありまして、どっちまたで流行っているギャンブルのくじ、lot ってのがありますよね。
あれは lotto ということで、これイタリア語から18世紀に入ってきたんですが、このイタリア語の lotto というのは、もともとゲルマン語からイタリア語に入ってきて、それが英語に再び戻っていった。
日本にもなっているっていう、あの lot なんですね。
もともとしたがって、古英語のこの h, l, o, t で綴られる flot というのも、くじとかくじ引きって意味だったんです。
さらに遡るとですね、どうやら小枝、一本一本のくじですね。
あれを小さい枝でやってたんではないかっていう、そのあたりに綴るんですけれども、もともと小枝だった。
それが古英語の時代にはもうすでにくじ、くじ引きという意味になっていたっていうことなんですね。
さあ、この古英語のくじ、くじ引きという原義、大元の意味からですね、その後少し意味が発展していきます。
で、戦利品であるとか財産、つまりくじによって決められる戦利品や財産の分配っていう意味ですね。
そこからそれぞれの割り当て、一部、配当、配当金みたいなもんですね。
ということで、配当、割り当てるっていう意味が出てくるんですね。
で、そこからさらに発生したのが、例えば駐車場のこと、パーキングロットと言いますが、あのロットっていうのは割り当てです。土地の割り当て。
このスペースの中で、この一角だけを駐車場スペースとして割り当てますよということで、一つ一つのこの場所の割り当てのことで、パーキングロットというわけですよね。
で、このくじ、くじ引きっていうところから分配とかですね、この割り当て、土地の割り当てまで意味が発展しました。
それからギャンブルですから、運とか運命というようなね、こういう意味もどんどん出てきます。
さあ、このようにいろいろと意味が展開する中でですね、近代英語記に入って16世紀半ばぐらいですかね。
ここで、くじ引きの景品の意味が発達したんですね。
くじ引きの景品、くじ引きによって得られる配当ですよね。景品ということになります。
今ではこの意味はもうなくなってしまったんですが、16世紀半ばぐらいにこれが生まれるんですね。
景品といえばですね、今でもそうだと思うんですが、例えばティッシュペーパー1年分とかですね、栄養ドリンク半年分なんていう、
ひと山、商品の同じ商品のひと山が当たるっていうようなケースがありますよね、景品として。
で、これ同じもののつまりひと山とかひと組という意味が出てきます。
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ここからちょっと現代のですね、多くのの意味につながりそうだなという雰囲気が出てきますね。
で、同じものの集団、一群、つまりグループとかセットぐらいの意味になってですね。
例えば、今でもですね、この意味で使うこともあるんです。
多くのというよりは、もともとの集団、ひと山、ひと組ぐらいですね。
例えば、the first lot of visitors has arrived、みたいな。
最初の訪問者のひと山、一群がたった今到着した、みたいないう時ですね。
こんな使い方は今でも残っています。
結局ですね、これがひと山、一群、集団という意味で使われるようになると、a lot of名詞、大体複数形ですね。
という形で用いられることがどんどん多くなったってことです。
このlotの前に様々な意味を込めた形容詞ですね。
例えば、an interesting lot of people、つまり非常に面白い人々の一群といったり、形別的に使うことが多いですね。
a lazy lot of peopleのように使って、怠け者の一群というふうに使われてきたんですね。
1800年前後になりますと、この形容詞が前につくっていうことからですね、greatとかlargeみたいに量を表すっていう形容詞ですね。
これがついて、a great lot of peopleとか、a large lot of peopleのような表現が増えてきた。
こうなると、現代のこのたくさんのっていう雰囲気にだいぶ近くなってきますよね。
おそらくこのgreat lot ofとかlarge lot ofという数量ですね、の大きさを表す表現というのが非常によく使われるようになったので、
この形容詞なしでもですね、結局a lot ofとか複数形のlots ofなんかも含めて、多数の、多量のという今に通じる用法がですね、できてきたと。
つまりこの200年ぐらいの話なんですね。このa lot ofっていうのが多くのという意味で、どうやら確立してよく使われるようになったっていうのは、比較的最近の話だということになります。
この19世紀になってですね、1800年以降にこういった用法が生まれてきたということなので、少しですね、手持ちのコーパスで調べてみました。
この時代のことですね。1800年以前はですね、やはりほとんどないんですね、この用法。a lot of people、たくさんのという用法はないんですが、19世紀に入ると1800年代を過ぎるとちょこちょこと現れ出すんですね。
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そして1850年を過ぎると、多くの例がもうすでにですね、今のたくさんのという意味で使われるようになってきていると。
どうやら19世紀前半から半ばにかけて、この現代につながるa lot ofの使い方が爆発したようなんですね。
このようにいろいろ調べるとわかってくるわけなんですけれども、これほど当たり前のように日々使っている表現が、実は若い表現であると。
200年、爆発してから200年も経っていないっていうぐらいのものだというのは、考えてみると不思議でもありますね。
それではまた。