by and largeの疑問
おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも、辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
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今回取り上げる素朴な疑問は、なぜ by and large が概して一般のを意味するの、という熟語、イディオムに関する話題です。
by も large も非常に簡単な基本的な単語なんですが、これが組み合わさって、どうして概して一般のという意味になるのか。
しかも by というのは前置詞で、large というのは普通形容詞なわけですよね。
これが and で結ばれるというのはどういうことか。
いろいろとこれ突っ込みがいがある話題なんですけれども、まずこのイディオムに直接迫る前にですね、large この単語について見ておきたいと思うんですね。
この large そのものが非常に多義で、実は簡単そうに見えて難しい単語なんですね。
現代、普通の意味はですね、大きい広いというところだと思うんですね。
実際ですね、これ日常語ではあるんですけれども、本来の英語ではなくてフランス語からの釈用語なんですね。
大元はラテン語、large という豊富な豊かなという意味です。
これがフランス語を経て、かなり英語史の早い段階で入ったことが入ったんですね。
古英語の末期です。比較的早い段階でこれがフランス語から入ってきて、今の large に繋がるわけですね。
当時の意味は、やはりですね、寛大なとか大きい広いというところからの派生ですね。
そうした意味が一発的でした。寛大なであるとか広い、それから現役である豊富ななんて意味もありますね。
そうすると、広いですから広々としたということで自由だ、自由の意味が出てくるんですね。
これ抑制されてないという感じです。
ところが、これがちょっと悪い方に転じると抑制が効かない、本邦だ、自由本邦、思うままやりたい放題というようなちょっと悪い意味にも広がっていくんですね。
なので、そもそもが基本的な意味を持っていたからこそ、そこから派生して多義的になっていたということで、
一つ、at large っていうイディオムがありますね。
これが実に多義なんですね。
例えばですね、こんな使い方、the rubber is still at large というと、これ強盗はまだ深まっていない、逃走中だっていうことですよね。
理由でいる、自由本邦な状態でいるっていうことで、at large が捕まらないでいる、自由でいるという意味で使われたりしますね。
それから、he told me the story at large なんていうと、彼は私にその話を出まかせに語った、自由本邦に、言いたい放題に、という悪い方の意味がここでも出てますね。
それから、I'll discuss the matter at large なんていうと、その問題について詳細に論じましょうということで、
at large が広々と、たくさん、長々と、細々と、というようなニュアンスですね。
こんな風にも使われるっていうことです。なかなか難しい。
そして最後に、the people at large という言い方ですね。
これ一般国民ぐらいを意味しますが、in general ぐらいですね、at large で、広々とというところから、広く一般にというニュアンスが出るわけですね。
なので、the people at large というと、一般国民。
さあ、large 自体も多義なんですが、それと at と組み合わせた idiom、at large も同じように多義だった、ということを見てきました。
最後のところで、the people at large が一般の国民ということは、広いから一般に、広さと一般というのは通じやすいですよね。
なので、今日の冒頭に掲げた問題のイディアム、by and large これも概して一般的に、全般的にということで、
by and largeの語源
この広いの large と関係があるんだろうと思われるかもしれませんが、これはまた別なんですね。
ちょっとずれてるんです。
なので難しいところなんですが、ではこの by and large の話に移ります。
いくつかまず例文を挙げてみましょうかね。
by and large, I enjoyed my time at school.
というように、全般的に言って、概して、私は学校時代を楽しんでいました、というような言い方ですね。
他には、there are a few small things that I don't like about my job, but by and large, it's very enjoyable.
自分の仕事に嫌いなところも多少はあるけれども、全般的に言えばとても楽しいよ、というような言い方で、
文と節とにして、一般的に言えば、というふうに使うことが多いようですね。
by and large です。
さあ、by から行きたいと思うんですが、
この by はですね、確かに、あの前置の by と同一物なんですが、ここでは副詞的に使われてるんですね。
by the wind ほどを意味する前置詞の the wind の部分が省略されたと考えてもいいと思うんですが、
これどういうことかというと、これ風に向かってという意味なんですね。
風に向かって。
これ航海用語です。
船乗りの用語と言ってもいいですね。
by the wind これは縮まってと言いますが、副詞的に使って by だけで、これ風に向かってという意味なんですね。
この by っていうのは普通、何々に寄ってとかですね、何々の側にというふうなイメージで捉えられていると思いますが、
実は by には何々に向かって towards ぐらいの意味があるんですね。
例えばですね、do well by a friend 友達によくしてやる。
友達に対してよくしてやるということですね。
do well by a friend であるとか
do one's duty by one's parents これ両親に対して本分を尽くすということですね。
それからこんなことわざありますね。
do to others as you would be done by 人にしてもらいたいように人にしなさい、尽くしなさいということで
do to others as you would be done by
この by はこの do to others の to と似たような役割を果たしているということなんですね。
それから north by east これ東寄りの北っていうことで、つまり東の方に向かった北というような言い方ですね。
ここから向かってと意味があるってことがわかったと思います。
by ですね。
これ by 単体で風に向かってということになります。
さあ問題の large なんですが、これもですね、副詞的に使われていまして、実はこれは
風に向かってじゃなくて逆に風から離れて、つまり風の抵抗から自由になってという、あの自由、自由奔放の large がどうやら元にあって、そこからですね、出てきた語彙のようなんですね。
風から離れて、つまり by は風に向かって。
その反対語としてですね、公開用語で large 風から離れているということで、実際の現在の large 公開用語として純風のという意味がありますけれども、これが2つ合わさって by and large ということですね。
さあこの by は本来の英語なので、小英語からありますし、large は先ほど述べたようにかなり早い段階で英語に入ってきています。
なので単語としてはずっとあったんですが、今述べた公開用語としての、つまり風に向かって風から離れてという公開用語としては、17世紀初頭に初めて出てるんですね。この意味は17世紀初頭のことであると。
そしてこの2つを結びつけた by and large という idiom ももう少し遅れてですね、17世紀の半ばぐらいには出ています。
当初はもちろん公開用語ですから、船が風に向かったり離れたりしてというぐらいの意味ですね。
それがあちこちにとか全般にわたってという意味になり、それが外して一般的にと。
現在に通ずるこの idiom の意味が出来上がったと。これは19世紀の前半のことですね、この外しての意味が出たのは。
もともとは公開用語という、ある種の専門分野の専門用語だったものが広く一般に使われるようになった idiom ということです。
なので本来が専門用語ですから普通に考えてわかるわけはないんですね。
by と large でなぜこれが一般になのか。
idiom の中にはですね、こういったふうになかなか奥が深い、深いところに語源があるというものは決して少なくありません。
by and large 外して一般に、この起源を覚えておいてもらえればと思います。それではまた。