2025-11-23 11:44

#491. 「天の川」と Milky Way --- 「比較語源学」の愉しみ

#heldio #英語史 #英語教育 #英語学習 #hel活 #英語史をお茶の間に #語源 #比較語源学
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サマリー

このエピソードでは、天の川とMilky Wayの語源の違いを探求し、比較語源学の面白さを紹介しています。また、日本語や中国語、英語における天の川の表現の違いを通して、文化的な視点も考察されています。

比較語源学の楽しみ
おはようございます。英語の歴史の研究者、ヘログ英語史ブログの管理者、そして英語のなぜに答える初めての英語史の著者の堀田隆一です。
10月4日火曜日です。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。 英語の語源が身につくラジオheldio。本日の話題は
天の川とMilky Way 比較語源学の楽しみです。 どうぞよろしくお願い致します。
今日の副題に挙げました比較語源学という言葉なんですけれども、これこういう学問分野があるわけではないんですね。
私が勝手に作っている言葉で、ある指示対象を指す単語ですね。
これを様々な言語から集めて、その語源がどういうことになっているのか、どういうイメージでその指示対象を捉えてきたのかということを比較して楽しむ、ある種の
知的余興みたいなものなんですけれどもね。 これいろいろやってみると面白くてですね、今日一つ披露したいと思います。
話題となるのは天の川ですね。 主に夏の夜にくっきりと見えることが多いかと思いますが、
実体は無数の星の集まりですね。 それを日本語では天の川と書くわけですので、川と見立てているっていうことになります。
古語としては天の戸川とも呼ばれたようです。 天照大神の隠れた天の岩戸、あれから天の戸というのが天、天のもう一つの言い方になって、それに川をつけたっていうことですね。
天の戸川という言い方が古語として、画語としてあったわけですけれども、
お隣、中国ではですね、漢字で銀河とか天河、天の川ですね、のように書きますので、やはり川と見立てているっていうことは間違いないですね。
その点は同じっていうことですが、銀河というのは、これは色から名付けたっていうことだと思いますね。
確かに銀白と言いますかね、見え方によって白、銀色、青っぽく見えることなんかもあるかもしれませんけれども、銀という色をとってきたわけですね。
織姫と彦星の悲しくも美しい七夕伝説、これは中国が起源ですし、この辺りのイメージというのは中国、日本共にですね、
共有することになったというわけです。いわば、二人を隔てる川というイメージなわけですね。
さて、一方、西洋なんですけれども、英語では今日話題になっていますが、milky wayというふうに言うわけですね。
theをつけてmとwはそれぞれ大文字で書くというのが普通かと思います。
the milky wayですね。これはmilkという単語が使われているわけですね。その形容詞兼milkyということで、これは父が流れ出てきた道という発想なんですね。
川というわけではない。色としては白に見立てたんですかね。乳白色に見立てて、それが流れてできた道というイメージなわけですよね。
これはこれで非常にですね、情感豊かなイメージが湧いてくるような表現であり、語源だと思いませんか。
英語での初出は14世紀後半の例のジェフリーチョーサーです。
カンタヴェニ物語を書いたチョーサーが最初にですね、この表現を英語において使っているということなんですね。
ただ、これはチョーサー自身のオリジナル化というと、そうではなくてですね、すでにラテン語でwe are lactairという表現。
まさに、父の道ということですから、そのまんま英語に持ってきた、英語に翻訳したっていう形ですね。
こういった形のもの、そのまま英語になぞってくるっていう、元のラテン語の表現を英語になぞってくる、このやり方を翻訳釈用というふうに言語学では呼んでいます。
ローントランスレーションなんて言いますね。あるいはキャルキング、キャルキングなんて言う時もありますが、翻訳釈用ということなんですね。
借りてはいるんだけれども、ラテン語のwe are、道にあたるwe areとかラクテア、父のっていうことですが、
この単語を使っているわけではなく、それぞれ一語一語英語に翻訳するという形で持ってくるんですね。なので、出来上がったthe Milky Wayというのは完全に英語的な見栄えなんですけれども、発想そのもの、
今回、比較語言学、語言の発想について話題にしているわけなんで、発想としては元はラテン語にあるんだっていうことですね。
文化的な違い
翻訳釈用が面白いのは、見栄えはですね、完全に英語側の言語、受け入れた側の言語にしか見えないんだけれども、中身、意味、発想というものは実は外から借りたものであるっていうケースですね。
ですから、翻訳でありながら釈用でもあるっていうことで、翻訳釈用という名前がついているわけですね。
さて、この天の川は無数の星から構成されている銀河なわけですけれども、この銀河系、我々が生きている、その中で生きている銀河系というのはMilky Way Galaxyというふうに呼ばれるんですね。
銀河系です。Milky Way Galaxy。このGalaxyっていうのが銀河とか星雲という意味になるんですが、これは天文学用語ですね。
いわば学術用語ですので、これはラテン語よりもさらに高い、威信のあるギリシア語。これに起源を持つんですね。
そしてなんとですね、このGalaxyのGALAっていう部分ですね。これはギリシア語でまさに父なんですよ。母乳なんですよ。
そして、ここからGALACTという語幹が生まれました。ここからまさにGALAXYも生まれてくるわけなんですが、結局ですね、ギリシア語に遡っても父、母乳なんですよ。
西洋の言語文化の源といっていいギリシア語、この段階からすでにですね、天の川とか銀河のことを父と結びつけていたということがわかるわけですね。
ちなみに、このGALACTからですね、頭の部分、GAのGAの部分が落ちてしまったのはLACTということなんですが、LACTというとこれはですね、ラテン語でまさに父を表すわけですね。すべて繋がってるってことです。
先ほどのWE ARE LACTAIRといったラテン語のLACTAIRというのとGALAXYのGALACTっていう部分が一緒だっていうことなんですね。
LACTからはですね、他に、例えば、授乳のことをLACTATIONって言いますね。これ英語に入ってきてますね。それからLACTIC ACIDって言うと乳酸ということになりますね。
フランス語ではこのLACTの部分のシンクの部分が落ちて、母音も変わりましてレとなります。つまり、カフェオレのレですね。
カフェオレというのはコーヒーwithミルクということです。イタリア語ではカフェラテですが、ラテというのもやはり同じラテン語の語幹に遡ります。
身近に結構あるっていうことがわかったと思うんですね。他にもいろいろな言語を比べてみると本当は面白いんでしょうが、全体としてですね、
洋の東西っていうふうに大雑把にくくりますと、日本語と中国語では川のイメージなわけですね。
天の川とか銀河ということです。一方、西洋の方は全体として、
父。父が流れ出てできた道というイメージ。このように古代人、中世人は空を見上げながら空想していたっていうことになりますかね。
また、日本語と中国語の間には柔らかさ、硬さっていう違いも感じられませんか。
天の川っていうと、すべて和語で構成されているっていうことで、非常に温かい懐かしい、史上豊か。
そして中国語は銀河という漢字2文字なんで、ごっつい漢字がしますね。硬い漢字がします。
同じように英語でもですね、the milky way っていうとミルクもウェイも
もともとの本来語ですから、非常に優しく温かくやはり情感豊かな響きを持っていると言えると思うんですね。
一方、学術用語から来たということだったので、そのイメージなんですが、ギャラクシーというのは古代ギリシャ語、古典のギリシャ語から来たですね、非常に威信の高い言葉ということでギャラクシー。
なんとなく硬い風に感じられる。
このあたりですね、洋の東西でパラレルになっているところが面白いですね。
天の川というとやっぱり英語ではthe milky way なんでしょうね。
そして銀河と言ったらやはりギャラクシーなのだろうと思います。
それではまた。
エンディングです。本日も最後まで放送を聞いていただきましてありがとうございました。
比較語言学という、いわば物の見方、言葉の見方ということで実際の学問分野名ではないわけなんですが、あるものを指す言葉が複数の言語、異なる言語感でどのような語源の点で違いがあるかということですね。
比べてみるといろいろと発想の違いが見られてですね、面白いと思うんですね。
皆さんも身近なものについてですね、比較語言学してみると面白いと思います。
このヘルディオでもまたですね、何か思いつきましたら取り上げていきたいなというふうに思います。
さてこのチャンネル、英語の語源が身につくラジオヘルディオでは、あなたからのご質問、ご意見、ご感想をお待ちしています。
Voicyのコメント機能を通じてお寄せください。
それでは本日も良い1日になりますように。ほったるいちはお届けしました。また明日!
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