母音の違いの概要
おはようございます。英語の歴史の研究者、ヘログ英語史ブログの管理者、 そして英語の謎に答える初めての英語史の著者の堀田隆一です。
10月5日水曜日です。いかがお過ごしでしょうか。 英語の語源が身につくラジオ heldio。本日の話題は
coffee と cafe の母音の違い、です。 どうぞよろしくお願い致します。
今日の話題は、何気ない、本当に取り留めのない話題のように聞こえるかもしれませんが、 coffee っていう時の第一母音ですね。
o という発音ですけれども、それと明らかに関係がある別の語、cafe。 これはえの音なんですよね。つまり、o と a で綴り字をも書き分けられますし、実際に発音も coffee に対して cafe という風に発音されると。
他に関連語としては、caffeine。これカフェインですけどね。英語での発音は caffeine となって、これは cafe と同じように ca, f という風に a が含まれるわけですよね。
この母音の違い、あるいは母音字の違いということなんですが、語源を探るとですね、面白い事情が浮かび上がってきますので、今日はこの話題についてです。
コーヒーというのは茶であるとかビールなどと並んで、世界的な文化語の一つという風に言うことができると思うんですね。
近代になって世界化した、まさに世界中で通じる語ということになったわけなんですが、
飲用としてのコーヒーが文献上初めて現れるのは、イスラムの医学書で10世紀ぐらいのことだって言うんですね。
アラブ世界で飲用され始めて、そして酒を禁じられているイスラム教徒の間で、いわば代替品として愛飲されるようになったということですね。
アラビア語で酒の一種を表すようなんですけれども、カワというような呼び方があって、これをコーヒーという飲料にも適用したということで、カワ辺りから始まっているんですね、言葉としては。
それが16世紀にトルコのエジプト遠征を機に、トルコ語に取り込まれました。カーヴェというような形だったようです。
そして1554年にイスタンブールに華麗なコーヒー店カーヴェカーネという店が開かれたのが最初だっていうことなんですね。
そしてこのトルコからヨーロッパ世界へコーヒーが導入されました。16世紀後半のことのようですね。
17世紀になると大陸に広がります。ベネチアであるとかパリなどに広まり、そしてイギリス、あの島国にもついに1650年オックスフォードでイギリス初のコーヒー店がオープンしました。
それから1652年にはロンドンでもオープンしています。これがいわば後にコーヒーハウス、コーヒーハウスとして知られるある意味文化現象ですね。
政治談義の場でありインテリが集う社交の場となっていくわけですね。このコーヒーハウスが生まれてくることになります。
17世紀18世紀のイギリス文学、これはもうコーヒーハウスから生まれたと言っても過言でないくらい、それぐらいですね。
文人や政治家に愛される場所となったということなんですけれども、こうしてイギリスについにコーヒーがやってきたということなんですけれども、さあその飲み物を表す名前ですね。
語形の話なんですけれども、大元はアラビア語のカワという形、それがトルコ語のカーヴェという形になって入ってきたっていう、そこまで確認先ほどしたんですけれども、この後イタリア語に入ってキャセイという発音になりますね。
言語と文化の関連性
CAFFEということで、アの音ですし、文字としてもエイが使われているっていうことです。ヨーロッパ各地に伝わったのはこのイタリア語のカフェだったんではないかと想像できます。
その後、いくつかの展開を経て各国語に入っていったわけなんですけれども、このままエイの音、そして文字が保たれたのがフランス語のカフェ、スペイン語のカフェ、ポルトガル語カフェ、ドイツ語カフェということであまり変わりませんね。それからデンマーク語、スウェーデン語のカフェということでこの系列があると。
もう一つですね、アではなくてオに変わった形で取り組むっていうのがあるんですね。それがまさに英語のコーヒーであり、オランダ語コフィー。それからドイツとしてはコフェみたいにオの発音もあったようです。それからロシア語コフェですね。このようにオを持つものっていうのが確認されるんですね。
ちょっとした母音の違いといえば、そうなんですけれども、オなのかアなのかということで、どうも二分されたっていうことなんですね。では本当の本当に英語の最初から最初にこの単語が取り込まれた段階からオだったのかっていうと、どうもそうでもないと。
オックスフォードイングリッシュディクショナリーによりますと、英語でのこの名詞の書類はですね、1598年のチャウワと読むんですかね。CHAOUAという綴り字で表れているんです。
ですので、これをどう読んだかっていうのは微妙で、そのままでしたらチャウワあたりなんですかね。いずれにせよアを持ってるんですね。そしてこの直後17世紀入ってからもですね、チラホラとではあるんですが、最初の母音にアを持つ形というのが参見されるわけですね。それほど多くはないんですが確認はされます。
17世紀の早い段階でどうもオを持つ語形に既に切り替わりつつあったっていうことなんですね。
多少はアが残っていたけれども、そして最初例は本当にアだったわけなんですが、早い段階からどういうわけかオに切り替わっていったっていうことです。そして同じ17世紀の後半にはすでに現代に続くコフィーの形が主要形として定着しているっていうことなんですね。
入ってきてから数十年のうちにですね、一気にオを取るようになったのが英語だということになります。
一方、フランス語ではカフェイがですね、コーヒーという飲み物のみならずコーヒー店、いわゆるカフェのことを表すようになって、この意味、校舎のカフェの意味でフランス語から英語に入ってきたのが1802年という少し遅れてということですね。
今では英語では飲み物としてのコーヒーというオを持つ形と、カフェイというフランス語から取り込まれたエイを持つ形が、こちらはカフェの意味ですけどね、異なる意味で共存しているっていうことになります。
そしてこの状態がそのまま日本にも日本語にもコピーされた形でコーヒーとカフェというふうに並ばしているっていうことなんですね。
最後に、いわゆるカフェインと言っていますが、英語での発音はキャフィンという発音です。
これは1830年にフランス語のキャフェインから入ってきたものっていうことで、やはりフランス語らしくエイを持つ単語だということになります。
この飲み物の名前の母音がですね、最初の母音がアなのかオなのかという非常に小さな話題です。
そしてこのニ音というのはですね、2つの母音はそこそこ音声学的には似ている音ですので、ひっくり返ったりするっていうこと自体はですね、決して珍しくもありません。
ただヨーロッパの多くの言語が綺麗に二分されているっていうことですね。
そしてこの分布が何を意味するのかっていうのは分からないんですけれども、単に各言語の発音の癖、母音の傾向ということに過ぎないかもしれませんし、あるいはコーヒーという後に世界的に重要となる飲料、これの経路みたいなことも暗示しているのか、このあたりはなかなか文化史的にも面白い問題なんではないかと思う次第なんですね。
しかも歴史を振り返りますと、当初は英語でもあだった。それがおに切り替わったということもありますし、ドイツ語なども現在ではキャッフィーっていうふうにあを持ちますが、古くはコーヒーのようにおを持っていたというところあたりもですね、単なる母音の変化という話題なのか、
あるいはそれ以上の文化史的な意義みたいなものを読み取ることができるのか、これは詳しく各言語の語形であるとか、語形の移り変わりみたいなものを調べてですね、付き合わせていくという、そういうことが必要なのかなというふうに思います。
なんとなく抱いた疑問について調べてみたらこんなことでしたという、そういう報告になります。エンディングです。今日も最後まで放送を聞いていただきましてありがとうございました。コーヒーという非常に身近な話題なんですけれども、その語源を探ることでですね、もしかしたらですけれども文化史的な意義が読み取れるかもしれないという語形変化、もっと言いますと母音の変異ですね。
違いというところに焦点を当ててみました。いかがでしたでしょうか。このチャンネル、英語の語源が身につくラジオヘルディオでは、あなたからのご質問、ご意見、ご感想をお待ちしています。Voicyのコメント機能を通じてお寄せください。それでは今日も良い1日になりますように。ほったりうちがお届けしました。また明日。