前置詞の増加の背景
おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶應義塾大学の堀田隆一です。 このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも、辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。 今回取り上げる話題は、
英語史を通じて前置詞はどんどん増えてきた、という話題です。 英語の学習にとって、前置詞というのは非常に厄介ですね。
まず数が多いんです。 確かによく使われるものっていうのは、一定の範囲に収まるというか、少数のものですね。
逆に言うと、少数なんだけれども多義、いろんな使い道があるということで、どれを使えばいいのかわからない。
かなりの部分ですね。意味的、用法的に重なっている前置詞というのも多いので、結局のところ暗記しなければいけないということが多いですね。
さらに、よく使われる前置詞の外に、あまり使われないかもしれないけれども、実はこんなにたくさんあるんだよ、というような前置詞の一覧を作ると、実は相当数に上るんですね。
そしてそれぞれがまた多義だったり、どういう意味なのかという点で問題があったりするということで、英語において前置詞というのは
非常に厄介な問題になっているということなんですね。そしてこの問題はですね、歴史的に、英語史的に見るとこういうことになるんです。
つまり、もともとは前置詞という語類はですね、そんなにたくさんあったわけではないんです。
コアなものですね。現代のコアなものにそのままだいたい通じるんですが、コアな比較的少数のものがあった、それだけでやりくりしていたところですね。
主に中英語後期から近代語にかけて、どんどん増えてきたということなんです。これは外から入ってきたということもあります。
まさに英語史の特徴なんですが、外から、よその言語との接触を通じて様々な釈用語が入ってくるということがありましたが、これは一般的な名詞とか動詞だけにとどまらずですね、実は前置詞なんかでも同じなんです。
外からどんどん入ってきてしまったということがあります。数が多くなったということはどういうことかというと、今まで少ないもので、少ないコアな前置詞でカバーしていた様々な意味領域が小分けにされたと。
多くの前置詞が外から入ってきたり、中からも生み出されたりして、前置詞の総数、総種類の数が多くなったので、
それぞれ一つ一つの持つべき役割が専門化されたということなんですかね。
ということで使い方が複雑化してきたという経緯があるんですね。
今日はその全体的な歴史の流れ、そして現状についてざっと見渡したいと思います。
まず現代語の話なんですけれども、現代英語にいくつ前置詞があるのかという話ですね。
これはですね、Quarkらによる、現在の英文法の最高峰とされる参考書ですね。
A Comprehensive Grammar of the English Languageによると、前置詞のリストはですね、意形、バリエーションみたいなのを除くと194個あるっていうんですよ。
これはたまらない数ですね。
で、この194個っていうのは色々と分類があるわけなんですが、まず形から見てですね、
Simple Prepositions、単純形の前置っていうんですかね。つまり1語でそのまま前置詞になるっていうパターンで、これはもちろん
As, At, But, By, Down, For, From, In, Like, Near, Of, Off, On, Out, Past, Per, Pro, Quo, Re, Round, Sans, Since, Then, Through, Till, To, Up, Via, While, With
のように色々あります。
こうしたものの中にはですね、頻度がかなり高いものですね。今読み上げたものの大半はかなり高い方に属すると思うんですが、そうではない、マイナーなと言いますかね。
周辺的なものもあって、皆さんはまだ出会ったことがないというものもしかしたらあるかもしれませんが、例えばBarなんてわかりますかね。
バーリング、エクセプティング、エクスクルーディング、セイブ、この辺はあるかもしれませんが、
フェイリング、ウォンティング、フォローイング、ペンディング、ギヴァン、グランティッド、インクルーディング、のように現在分詞や過去分詞のものも多いですね。
これはもともと、本来的に動詞の現在分詞、過去分詞に単を発するということで、ここから使い方がですね、動詞的な意味合いを失って、極めて全知識的なものに変化していった。
一種のこれ、文法化、グラマティカリゼーションの作用、結果ということができると思うんですが、こんなのもありますね。
一方で、2語以上からなる組み合わせで、事実上一つの全知知っていうのも結構あります。
例えば、as for, but for, except for, apart from, aside from, away from, as from, ahead of, because of, inside of, instead of, irrespective of, according to, close to, contrary to, along with、とですね。
3語以上っていうのも結構ありまして、例えば、in behalf of, in charge of, in consequence of, by dint of, on account of, on behalf of, on the part of, on the strength of, on top of, with the exception of、なんていうのもありますね。
これなどはどこまでが全体として一つの全知知とみなすべきなのか、それとも、例えば、with the exception ofっていうのは、4語かけて一つの全知知に相当するフレーズではあるんですけれども、これを一種の一つの全知知とみなすかどうかっていうのは、微妙な問題はあったりしますけれども、こういうものを含めて194あるというんですね。
外来語の影響と定着
一般に全知知っていうのは、他の、例えば、接続詞であるとか、認証代名詞であるとか、と合わせてですね、機能語、なんて言われます、function wordsですね、これに対して名詞、動詞、形容詞、副詞、みたいな実質的な意味を持つ、語彙的意味を持つもの、content words、内容語、なんて言います。
いわば機能語っていうのは、文法的な語ということで、実質的な内容を持たない、あくまで関係を表すものだっていうことで、リストがだいたい出来上がってるんですね。
そこに新たなものが加わるっていうことは、比較的少ない。
それに対して、content words、内容語っていうのは名詞や動詞ですから、どんどん新しいものがですね、各自体に生まれるし、外からも入ってくるしっていうことで、ある意味、無限に広がり得るっていうことですね。
その意味で、全知詞っていうのはあくまで機能語というふうに分類されることが多いので、それほど多少はですね、増えたり減ったりっていうのがあったとしても、基本的には閉ざされた、閉じた語類であって、一気に全知詞が外から入ってきて、新たに出来たりってことはないもんだという前提になってるんですが、英語詞の場合はですね、実はかなり増えてきてるんですね。
小英語、中英語では、それほどすごく多くはなかった。ところが、中英語後期からですね、少しずつ現れ始めるんです。そして、爆発的に増えたのが、近代英語の初期です。
主にラテン語であるとか、フランス語っていう外の言語からですね、全知詞が入ってきた。
だいたいそれに相当する、英語本来の全知詞が存在したにもかかわらず、フランス語、ラテン語から入ってきて、元々の英語の全知詞が担っていた意味領域を少し狭め、プレッシャーをかけながらですね、英語の語彙の中に定着してきたっていう経緯があります。
こうした全知詞というですね、閉じた語類が外から入ってきた語彙によって埋められるというか、かさましにされるということは、あまり考えにくいんですけれども、普通に使われるものの中に定着しているものがたくさんあります。
例えば、across, around, concerning, considering, despite, during, except, past なんかもそうですし、複合全知でいえば according to, apart from, because of, due to, regardless of など、非常にたくさんあるっていうことですね。
初期近代王家にどうも全知が爆発したっていうのが英語の歴史だっていうことです。
それではまた。