2025-04-29 10:01

heldio #283. please 「どうか」の語源

#英語史 #英語教育 #英語学習 #ポライトネス #動詞
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サマリー

英語の「please」という言葉の語源について、フランス語やラテン語との関係を考察しています。最初の動詞としての意味は「喜ばせる」で、段階を経て現在の「どうか、お願いします」という感動詞に発展した背景を解説しています。

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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を癒やしなっていただければと思います。
「please」の基本的な意味
今回取り上げる話題は、please 「どうぞ」の語源、についてです。
昨日、同僚の井上一平さんと一緒にやっております、英語学言語学チャンネルというYouTubeのチャンネルにて、第4回目となる話題がアップされました。
please の使い方は危険。コミュニケーションの社会言語学と題して話したんですけれども、最後のにこのplease の話題が出てくるんですね。
日本人はこのpleaseが好きである、どうぞどうかお願いしますという意味で、文の最初につけたり後につけたりということですね。
これがあると、日本語の感覚で非常に座りがいいと言いますか、使いやすい感じがするんですね。
ただ英語の感覚としては、使いすぎというふうに見られる可能性もあるんですね。
しかも微妙に使い方が違うということです。
please sit down というのもあれば、to coffee is please のように、いろんなシチュエーションで使える表現として、確かに出てしまうというのはわからないでもないですね。
このどうかどうぞお願いしますあたりを意味する、please、感動詞としてのpleaseですね。
これがどこから来たのか、この語源についてはYouTubeでは触れていませんので、このボイシンの方で詳しく見ていきたいと思います。
よく考えてみればですね、このpleaseというのは、もともとこのどうかどうぞという意味の感動詞だったわけではありません。
先にあったのは動詞としてのpleaseですね。
動詞としては、楽しませる、喜ばせる、満足させるという意味で、語源的にはフランス語の単語です。
さらに遡ればラテン語ということになります。
プラケーレというふうに、人を喜ばせるという意味の動詞ですね。
これがフランス語でプレーゼールという形になり、これが14世紀初頭にですね、ほぼそのまま英語に入ってきたということです。
これがプレーゼンという形で、これがプリーズになったわけですね。
現代のフランス語ではプレーグという形で存在しますけれども、これなんですね。
ですので700年ほど前に入ってきた比較的古いフランス語からの釈用語ということになりますね。
そしてその時から今まで動詞としての意味は基本的には喜ばせる、誰々を満足させるという意味で、
例えばですね、he is a difficult man to please。
喜ばせるのが難しい男だということで、気の難しい男だなんて訳したりしますよね。
それから満足させる、喜ばせる、ですから受け身にすることで満足するという意味になりますね。
あなたに会えて喜んでいますということですね。
Please to meet youなんていうのはイギリス英語でよく言われますね。
いわゆる glad to meet you, happy to see you ぐらいの意味なわけですが、
このpleaseというのはしたがって、現代まで変わらず動詞としては喜ばせる、
満足させるという意味でずっと使われてきたということになります。
「please」の変遷
そしてですね、こういう言い方がありました。
If it please you もし状況があなたを喜ばせるのであればということですね。
もしこのことが喜ばせるようであれば、例えばopen the doorとかsit downみたいな命令系が付いたりするわけですね。
つまりよろしければというぐらいの意味になります。
If it please you ということですね。
この際に、If it pleases you のように3単元のsがつかないことに注目したいと思うんですね。
If it pleases you これもちろんifは条件のifですね。
Itが状況を表す主語で、pleaseが喜ばせるという動詞です。
そしてyouはあくまで喜ばせる相手ということで、あなたを喜ばせる、あなたを満足させるということで、あくまで目的語ですよね。
なので、ifの中の主語はitのはずです。つまり三人称単数です。
しかも現在ですので、本来であればIf it pleases you というふうに3単元が付きそうなものなんですが、
フレーズとしてはIf it pleases you というふうにsが付きません。
これは実際には直接法ではないからなんですね。仮定法だからです。
仮定法現在という形で、事実上原型と同じことになるんですが、
ですからこれは文法的に破格ではなくて、むしろ古い英語の規則にのっとった形なんですね。
むしろsがない方が普通と言いますか、標準的です。
If it pleases you ということですね。もしよろしければという意味です。
これが頻繁に使われるようになると、If it pleases you のように4語を使っていちいち言ってるわけにはいかないということで省略されて、
この動詞の部分のpleaseだけが残ったということです。
ですので、このpleaseというのは本来仮定法現在の三人称単数の形ですね。
事実上は原型と同じなわけですが、だからこそ他のものが削ぎ取られて、
pleaseだけが残って、今のどうぞどうかお願いしますという意味の感動詞になったというのが一つの説ですね。
つまりIf it pleases you であるとか、あるいはIfの文は主語と動詞、中にある主語と動詞をひっくり返すことでIfの意味を表すという文法がありますね。
なので、Please it you のような言い方もありました。
If it pleases you あるいはPlease it you のような形ですね。
このplease以外の部分が削ぎ落とされて、よく使うのでですね、pleaseだけに省略された、これが感動詞pleaseの起こりだというのが一つの説です。
もう一つはですね、似てるんですけれども根本的に違うものです。
もう一つの説はですね、If you please が縮まったんだということです。
これ先ほどのと似てる気がしますが、考えてみるとですね、If you please って、よく考えると意味がわからない。
なぜならば、pleaseっていうのは本来多動詞で、誰々を満足させる喜ばせるっていうことでしたよね。
ところがIf you please においては、youっていうのがこれ明らかに主語っぽいわけですよ。
その後に動詞のpleaseが来てるっていうことで、あなたが誰かを書かれてない目的語の誰かを喜ばせるならばということになって、
どうやってもどうぞどうかの意味には発展しないんですよ。
もしあなたが人を喜ばせるのであれば、これはやはりどうかどうぞに発展しないんですよね。
どうやって発展し得るかというと、これは喜ばせるじゃなくて、喜ぶという自動詞であるというふうに考えると、
いわばIf you likeとかIf you wantっていうのと同じ意味になります。
もしあなたが喜ぶんであれば、ぜひ何々してくださいっていう意味になってスムーズにいきます。
したがってこのIf you pleaseという言い方ですね。
これ本来のpleaseが満足させる喜ばせるという意味で考えると、どうしても出てこないんですが、
そこから自動詞化して喜ぶ満足するという意味が発展してIf you please。
ここからIfというが省略されてpleaseになったんだということですね。
なのでIf it please youというのとIf you pleaseというのは、当然形はなんとなく似ているということになりますが、
If you pleaseの意味が他動詞と自動詞、喜ばせると喜ぶということで反転してしまっているということがポイントですね。
起源としてはIf it please youのような言い方、あるいはIfを省略して主語と動詞をひっくり返したPlease it youのような形ですね。
これのほうが早いですね。16世紀前半には出ています。
その後If you pleaseのような表現が出たんですが、このいずれかが省略されて、
このどうかどうぞという現代最も普通に使われる反動詞が現れるのが実は1771年というように結構遅いんですね。
省略されずに使われていた時代が長くて、省略されたこのpleaseはせいぜい今から250年ほど前ということです。
ちなみに現在のフランス語ではs'il vous plaît、いわゆるIf it please youのような言い方をしますね。
ということでpleaseの語源でした。ではまた。
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