エピソードの紹介
おはようございます。英語の歴史を研究しています堀田隆一です。 このチャンネル、英語の語源が身につくラジオheldioでは、英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
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今日の話題は、リスナーさんからの質問に基づく話題なんですけれども、
モーニング、朝とモーニング、モに複数のモですね。これは語源的に無関係という話題です。
先日、動音異義語の話題を取り上げてお話ししたんですけれども、それと関連するリスナーさんから寄せられた質問です。
唐揚げ好きの直之助さんからです。読み上げさせていただきます。
何かしらのラジオを常に聞いて過ごしていますが、あまりにも興味深い内容なので、他の番組を放っておいて一気に全放送を聞き終えました。
ひえー、これ結構長いですね。今回で384回になりますので。ありがとうございます。続けますが。
さて、ふと思い浮かんだ疑問です。
モーニング、朝とモーニング、悲しみ、モの関係です。
この動音異義語は語源を共有しているのでしょうか。それとも現代英語においては偶然に一致してしまった赤の他人なのでしょうか。
こういった質問になります。
発音は確かに2つの単語完全に一致していますね。
モーニングということで、朝の方はm-o-r-n-i-n-gというスペリング、そしてモの方はm-o-u-r-n-i-n-gということで、有があるかないかということなんですけれども。
まず結論から申しますと、語源的には無関係。たまたま同じ発音に合一してしまったということになります。
これはピンポイントの質問ですので、比較的答えやすいと言いますか、説明もしやすいんですけれども、それぞれ究極の語源、引用、素語に遡りますと、やはり全く異なる語根に由来するんですね。
それが長い歴史を経て、たまたま音が合一してしまったと、そういうケースになります。
簡単にそれぞれの語の語源とその後の発達について見てみたいと思います。
まず朝を意味するモーニングの方なんですけれども、e-o語根はmelという形だったと再現されています。
m-e-rですね。
これがどうもちらちら輝く、明滅するぐらいの、英語で言うとflickerぐらいですかね。
この辺りの意味を持っていたと。
その後ですね、ゲルマン語に入って、オエゴまでにはモルゲンという形になっていました。
もともとは明かりがちらちらし始める夜明けというのが原理のようなんですね。
そこから転じて朝ということになったと考えられます。
この辺りの語形の発達であるとか意味の発達については、このヘルディオでもですね、240回モーニングとトゥモローの語源と題してお話していますので、そちらのリンクも貼っておきます。
合わせて聞いていただければと思います。
その後、中英語記になって初めてingの語尾がついたんですね。
そしてモーニングとなったということで、もともとはモーンだけで朝を意味した。
そこにingというのを付け加えて、少し長い同義語を作ったということなんですね。
このingがなぜ添えられたかという点につきましては、おそらく夕方、晩を意味するevening。
こちらのingに引っ張られて累推でmorningの方にもingをつけてみたということではないかと考えられます。
ということで、現代語のmorningっていうのはmorningの部分がまず先にあって、小英語で使われていた。
その後にingを付け足すことによってmorningができた、こういう流れですね。
中英語記にできた単語ということになります。
モーニングの意味の進化
次に、もを意味するmorningの方なんですけれども、これは語形性はですね、mornの部分。
これが動詞なわけですね。
これに名詞を作る設備字ingがついたということで、語形性は割と単純です。
引用そごにまで語源を遡りますと、この語根はsmerという形態、s-m-e-rですね。
これに遡るとされています。
この語頭のsの部分はですね、あったりなかったりしたようなんですけれども、思い出す、覚えている、rememberあたりの意味を持っていたと考えられています。
今述べたrememberの中にもこの語根が隠れています。
さらにはいずれもラテン語から釈用した英単語なんですけれども、
memoryであるとかcommemorate、memorable、memorandumというときのmeっていう部分ですね。
meの部分、このあたりが引用そごのmerあるいはsmerというこの語根に遡ると。
一方、同じ引用語根がゲルマン系の系列にも流れて、結局小英語のmornを意味する当時の動詞の形はmurnanという形なんですが、このmrという部分に残っているわけですね。
小英語のmurnanというのは、やはりこれも思い出す、ただ悪いこと、嫌なことを思い出す、嫌な思い出ということですね。
こんな感じで意味的に否定的、負の方向へとどうも舵を切ってですね、このmurnanが辛い思いをするとか嫌な思いをする、
嘆く、悲しむといったような負の感情を表す動詞に意味変化していったというふうに考えられます。
これがmurnanという動詞ですね。小英語の動詞です。
小英語では動詞を名詞化するのにですね、しばしばungという語尾をつけたんですね。ingというのもあったんですが、一方でungというのもなかなかメジャーでした。
これがmurnungという形で、このungがついてmurnung。これが名詞形の嘆きとか悲しみという意味になったんですね。
後に中英語記にこのungが同じくらいよく使われたingに置き換えられて、結局murning、現代のこの単語の直接の起源となります。
面白いのは意味の発達の方ですね。小英語では動詞も名詞も辛い思いをする、嘆く、悲しむということでですね、
必ずしも現代帯びているような意味、つまり死、人の死と関連付けられた嘆き悲しみということはですね、必ずしも強い概念は持っていなかったんですね。
一般的に嘆く、悲しむ、辛い思いをするというふうに使われていたんです。対応する名詞形も同じような意味を持っていました。
ところが中英語くらいから意味がやや限定されるようになってくるんですね。同じ嘆く、悲しむでも何を理由としてかというと、人の死を理由として悲しむというような、現代の意味に連なるような系列がですね、芽生えたのが意味的に中英語時代からということなんですね。
語彙語でもそのように読めないことはないっていう、そういう例はあるんですけれども、基本的には人の死を嘆く、それ故にもにふくすというような意味合いですね。これが発生してくるのは少し遅れて中英語の時代からということになります。
結果的に現代英語でもmornとかmorningっていうのは悲嘆、悲しみということで一般的な悲嘆、悲しみを表すことも不可能ではないわけですが、最も普通にはですね、人の死を悲しむ、もにふくするというような、死と関連づけられた意味っていうのが前面に出てきていると思うんですね。
つまり、引用遅後の時代から見ると意味が一点、二点してきたっていうことがわかると思うんですね。そもそもはスメルということで、これが覚えている、記憶にあるということだったんですが、悪いことを覚えている、嫌なことを記憶しているという感じで、まずですね、意味が悪化って言うんですかね。
否定の方向、負の方向へと触れたと、その状態で小英語に入っていたわけですね。そして小英語では一般的に悲しむ、嘆くということだったんですが、中英語ぐらいになって原因を限定させて、人の死ゆえに悲しむ、嘆くということで意味が限定された、これ意味の特殊化という言い方をしますけどね。
この結果、現代には死を悲しむ、もに復すというような意味で伝わってきているということで、この単語は意味変化の観点からなかなか調べてみたら面白い単語だったなということがわかりました。
ちなみに形容詞形のmournfulですね、fulを付けたmournfulは広い意味、意味の狭めが起こる前の一般的な嘆き悲しみという意味の方が濃厚で、意味的には非常に悲しがっている、very sadぐらいの意味ですので、もともとの原義と言いますかね、小英語時代の広く嘆く、悲しむという原義がまだ残っていると。
そういう単語、形容詞ということになります。
エンディングです。
今日も最後まで放送を聞いていただきましてありがとうございました。
今回はリスナーの直之助さんからのピンポイントの語源話題ということでしたので、具体的に引用祖母の語根から解き起こしてですね、小英語の形、中英語以降の形、そして現代まで形、そして意味を追ってくることができました。
なるべく正確にお答えしたいので、私も調べるわけなんですけれども、その過程でいろいろなことがわかってですね、引用語根のことであるとか、今日の場合はものほうのモーニングの意味的発展、これなかなか面白い事例だなと思った次第です。
質問いただいたからこそ調べる気になったということですので、私にとっても非常に大きなインスピレーションいただけたと思います。ありがとうございました。
直之助さんからのコメントの最後に付け加えがありまして、また語源や単語の成り立ちを調べるのに役立つ辞書や書籍の中からお勧めのものを教えいただければ嬉しいです。
ということなんですが、お勧めしたいものがですね、たくさんありすぎて困ってしまうんですが、語源を利用して単語を学習したり語源の面白さをですね、味わうためのいくつか関連する記事をヘログのほうに書いてきましたので、そちらへのリンクをこのチャプターに貼り付けておきたいと思います。そちらをご参照いただければと思います。
というわけで、リスナーの皆さんにはご意見、ご感想、ご質問等ぜひお寄せいただければと思います。チャンネルで取り上げてほしいトピックなどもお待ちしております。
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それではまた明日。