英語の単語の起源
おはようございます。英語の歴史の研究者、ヘログ英語史ブログの管理者、英語のなぜに答える初めての英語史の著者、そして6月18日に研究者から刊行された英語語源ハンドブックの著者の堀田隆一です。
加えて10月15日に夏目社より新刊書が出ました。 同僚の井上一平さんとお届けしている youtube チャンネル
イノホタ言語学チャンネルから生まれた本です。 井上一平・堀田隆一著。言語学ですっきり解決英語のなぜ。
ハッシュタグひらがな6文字でイノホタなぜとしてご意見やご感想をお寄せください。 特設ホームページも概要欄のリンクからどうぞ。
11月25日には電子書籍版も出ております。 まだ来る12月18日夜
大阪梅田ラテラルにて こちらのイノホタなぜ
新刊記念イベントとして イノホタトーク
繰り広げる予定ですのでご関心のある方はそちらもどうぞ。 英語の語源が身につくラジオヘルディオ。英語誌をお茶の間にをもとに英語の歴史の面白さを
伝え、裾野を広げるべく毎朝6時に配信しています。 本日は12月6日土曜日。皆さんいかがお過ごしでしょうか。
今日はいつもと少し異なる環境で収録しておりましてちょっと大きい部屋なんですけれども 逆にですね音が響いてしまっているかもしれませんがよろしくお願い致します。
今日はですね NAMとNIMBO
テイクに駆逐された2万の化石的生き残りです。 どうぞお聴きください。
ナムとその発展
ちょうど1週間前のことになりますが朝日カルチャーセンター新宿教室に行って私が毎月 開いている講座の中でですね
テイクに注目したんですね。 英語史的には非常に面白い単語でテイクという一単語一動詞だけで90分
みっちりお話しすることができるほどなんですね。 そしてオリシモですね。ちょうどやはり1週間ほど前のことだったんですけれども
このヘルディオでも緊急配信などでお知らせしました。 take an umbrella with you のwith you ってなぜ必要なの?
という問答に寄せられた質問に回答したところそれがバズったということでですね どうもこの1週間はですね私テイク付けになっていたというところがあるんですね
今日の話もその余韻でテイク絡みの話なんですけれどもテイクそのものではないんですね 実はテイクというのは
古英語末期から中英語期にかけて 古ノルド語バイキングの母語ですねから借りられた釈用語なんですね
英語本来の単語ではないということなんです トルという基本的な意味を表す動詞ですから
もちろんそれ以前にも古英語にちゃんとトルを意味する単語あったんですね それがニマンという単語なんです
これが古英語本来語のトルを意味する単語ですニマン こんな基本的な単語が古ノルド語から入ってきたテイクに駆逐されてしまったという
そんな歴史を持つんですね 今私たちが英語使用の際に頻繁に使っているこのテイクという単語は
従って英語史的には新山ものということになります では元のニマンこれはどうなってしまったのかというとですね
完全に駆逐されたということで今は使用されていないんですね ただですね
ニマンと関連する単語 これは残っているんですね
つまりニマンの化石的生き残りに近いもの 今日はこれをご紹介したいと思います
まず注目したいのがナムという単語です 皆さんこの単語を知っていますかね
ナムという発音ですがスペリングはNUMB というふうにBが入ってきます
この単語は通常形容詞で使うことが多いと思うんですけれども 寒さでかじかんだとか無感覚になった
痺れた麻痺した こんな意味を表すんですね
動詞としても用いられまして無感覚にする麻痺させるということなんですね これが古英語でトルを意味した動詞ニマンとどういう関係があるのか
と言いますと実はその過去分詞形なんですよ
当時の活用はニマンナムノーモンヌメン というふうに活用しまして最後に読み上げたヌメン
これですねNUというMEですね NUMEと書いてヌメンと読ませたんですがこれなんですね
語尾のNあたりが落ちてさらに語尾の母音も落ちてNUMだけが残ったという形です
母音はNUMから後にナムというふうに変わりましたけれども これ直形なんですね
ニマンの過去分詞形なんです ということで今でいうところのテイクンに近いということになりますね
ニンブルの語源
これはですねテイクンにそれこそいろいろな意味がありますが 捉えるやっつけるぐらいに理解しますと
テイクンということはやられちゃったということなんですね これはいろんなやられちゃったがありますが
無感覚になったかじかんだということでですね 圧倒されてしまったと寒さであるとか
なんでしょうね感覚をつかみ取られたという感じでしょうか テイクンと言ってるに過ぎないんですね
ではなぜ現代のNUMのスペリングに最後Bがついているか これはですねちょうど昨日ラムの話をしました
ラム子羊に捧げるレクイエムということで 1650回お届けしたんですがそこでもMBの話しましたよね
昨日のラムに関してはもともと実はBの音があったんだ つまりランブだったんだと
ところが発音上Bがなくなった スペリングはそのまま残ってしまったので今チグハグ状態になっているっていう話でしたが
今回のNUMはですねある意味で逆なんです
今見たようにもともとNUMENということですから Bが入る余地はないんですね
ところがむしろですねラムのような単語をモデルとして つまり音としてはBがないのにBスペリングで書かれているじゃないかというこの発見をですね
NUMの方にも 適応させたっていうことなんですね
それによってNUMっていうのは本来的にBなど持っていなかったのに スペリング上このBが挿入されたというややこしいことになっています
こういう事例をReverse Spellingなんて言うんですけれども 他にはですね親指を表すTHUMB
これもですね 実はラムタイプではなく
NUMタイプの方なんですね Reverse Spellingということになります さあこのNUMという単語を起点にしてさらに接頭字BEを付けたもの
これがですねVENUMという単語も存在しまして これは動詞ですね無感覚にする麻痺させるっていうことで
通常はですねVENUMDという風にこれ自体を 過去分詞にして使うっていうことなんですが
NUM自体が実は過去分詞から来ていると知っていると妙な感覚になりますね さあNUMとVENUMを見た後なんですがもう一語注目したい単語があります
これはですねNIMBLEという単語なんです N-I-M-B-L-E
ということでこれは素早い 敏性なという意味で使われる形容詞ですね これ今も普通に使われています
NIMBLE この最初のNIMこれもですね実はNIMANと関係するんですね
これは語形性的にはですねNIMANの語幹であるNIM これにLEという語尾
これはちょっとした形容詞を作る語尾なんですけれども これを加えてNIMELとしたのが始まりですね
最初の母音は古くはNUMELとかNEMELとか いろいろな形になったようなんですけれども
結果的に落ち着いたのは今私たちが知っているNIMBLEのiの音になったということなんですね
これはですね quick at taking 取るのに素早いぐらいの意味を持っていた
NIMANから発生した形容詞と言っていいと思うんですが 古英語では利口なとかそして物理的に動きが素早い
便称ななど意味が発展してきたようなんですけれどもね 取るに悟いというところでしょうか
NIMBLEの語源を探る
こんな形容詞が少し形を変えたり 母音を変異させながらも最終的にはNIMBLEに落ち着いたということなんですね
ここにもですね 実はBが出てくるんですね NIMBLEですから これは先ほどのNUM、BENUMと異なって
Bは発音もされるし だからスペリングにも書いてあるっていうストレートなので 分かりやすいと言えば分かりやすいんですね
ただ語源考えるとですね このBどこから出てきたのっていうことなんですよ
古英語の形では先ほど述べた通り NIMELとかNUMELとかですね こんな形なのでB入ってないんですよね
これはですねまた別の理由でBが入っているっていう厄介な話なんですけれども Mの音とLの音が隣接するとですね
今回の場合NIMELのようにMとLの間に母音があるんですが このように弱い音説では母音が落ちてしまうことしばしばあります
そうするとMとLが隣接するんですね そうするとそこに渡り音という言い方をするんですけれども
MからLの長音、発音する際にですね Bが挿入されてしまうという例があるんですね
これはまさに長音の口の都合なんですね MとLの音はムルムルという時に小さなBあるいはそれに類似する音というのが出ることがあるんですね
つまりある音から次の音に渡っていく際にどうしても経由せざるを得ない音 あるいは経由する方が言いやすい音の連続というのがあるんですね
この場合Bが生じる、起韻が生じるということになるわけですね こういう形で渡り音として挿入されてしまったBっていうのは結構ありましてね
例えばブランボーという単語があります これはキイチ語ですかね それからマンボー
これはブツブツ言う それからシャンボー
ヨロヨロ歩く そしてシンボー これは指抜きですかね 裁縫で使う指抜き
こんな単語もありますがその一つの例が今回のニンボー このBというわけなんですね
どうもこのニマンあたりの単語はですね Bの挿入とかあるいは目字とかですね これが関わるケースがたまたまなんでしょうけれどもね
言葉の歴史と変化
多いですね このようにニマンそのものは捨たれてしまったんですけれども
過去分詞の形で あるいは派生語の形でナム、ビナム、ニンボー
このあたりが現代まで残っているっていうことなんですね
いや 本体のニマン本当に残っていないかというと実は大きな辞書を引くと載ってます
ニムという形です NIMですね
ほとんどの方聞いたことないかと思いますが 英語語源辞典などを引きますとちゃんと載っておりまして
ニマンの直形も直形と言っていいんですね つまり完全にやられてはいないではないかと言いたくなるんですが
いやいややはりほぼ完全に 駆逐されてはしまったと思うんですよね
小英語以降そして中英語期にテイクに押されてどんどん使われなくなったんですが 初期近代英語くらいまではギリギリですね
取るという意味で使われる例があった ただその場合にも俗語をとして使われるということで標準的ではなかったんですね
そして16世紀中あたりにほぼ完全に死に絶えたかと思われるところで 実はですね17世紀に一時的に
復活されて多様されるまでに至ったんですよ この辺の歴史も追いかけると面白いと思うんですが
そして現代はというとですね 大きい辞書では古語としてあるいは俗語として つまりですね標準的ではない使われ方で
一応残っていますという言い方もできるんですね そして悲しいかなその意味はと言いますと
盗むくすめるということなんですね もともと取るですから分かると言えば分かるんですが
いやここまで落ちぶれてしまったかというのは ちょっとかわいそうになってくるほどなんですけれども
皆さんこの2万系列の生き残り 大切にしてあげてください
エンディングです 今日も最後まで放送を聞いていただきましてありがとうございました
いかがでしょうか 古英語以降を死に絶えてしまった単語というのは数多く存在するんですが
いろいろ探るとその関連語とか派生語という形で 化石的に残っている例っていうのがあって
これを発見するとですね ちょっと嬉しい気持ちになりますね
歴史のロマンを感じると言いますかね 今回の
NUM, BE NUM, NIMBLE そしてNIM
これですね しっかりと覚えておいていただければと思います
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それでは今日も皆さんにとって良い1日になりますように 英語史研究者のほったり打ちがお届けしました
また明日