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おはようございます。英語の歴史の研究者、ヘログ英語史ブログの管理者、英語の謎に応える初めての英語史の著者、そして6月18日に研究者から刊行された英語語源ハンドブックの著者の堀田隆一です。
加えて10月15日に夏目社より新刊書が出ました。同僚の井上一平さんとお届けしている youtube チャンネル
井上言語学チャンネルから生まれた本です。 井上一平堀田隆一著言語学ですっきり解決英語のなぜ
ハッシュタグひらがな6文字で井上なぜとしてご意見やご感想を寄せください。 特設ホームページも概要欄のリンクからどうぞ
また先月末に電子版が出てますね 井上なぜの電子書籍も出ております。そちらもぜひお入手いただければと思います。
また関連して井上なぜの観光記念イベントとして来る12月18日に大阪梅田ラテラルにてトークイベントを開催いたします。
井上さんはそちら会場で参加、私はニュージーランドからリモートで繋いで参加ということになりますが、この井上なぜとその制作舞台裏その他ですね
いろいろお話ししたいと思っております。 ご関心のある方は是非
詳細チェックしてみてください。 英語の語源が身につくラジオヘルディオ
英語誌お茶の間におもっとうに英語の歴史の面白さを伝え 裾野を広げるべく毎朝6時に配信しています。本日は12月5日金曜日
皆さんいかがお過ごしでしょうか 今日はですね
ラム肉とその文化
ラム、子羊に捧げるレクイエムです
何のことだと思いますか どうぞよろしくお願い致します
今日はラム L A M Bと書いてラムですね
ラム肉 これはあの子羊の肉ということで先日
1644回でですね ラム肩肉赤ワイン煮込みパスタと題する
配信会をですねお届けしましてこれはヘルディオ史上初めてですね 英語誌のネタ関係なくただのレシピ番組みたいになったという記念すべき会だったんですけれども
そのようにですねあのニュージーランド来てからラムが手に入りやすいということでですね よく食べております
日本だとですね例えばジンギスカンという料理がありますよね
ジンギスカンのお店で食べるものですね特に北海道と札幌で食べるものは本当に臭みがなくて美味しいので
こういうものかと 子羊の肉ですね思っていたところですねこっち来るとやっぱり臭いんですね
臭みがかなりあります いろいろハーブとかワインとかで味を消そうとするんですけれども
多少弱まるんですけれどもやっぱりもともとがですね臭みがある だから美味しいということはあるんですけれどもね
日本で食べる日本用のと言いますかね 羊の肉とはまた一味も二味も異なっていてですね
ワイルドだなぁとこれがまた美味しいということになるわけなんですが
そんな感動も込めてですね先日ラム肩肉肩ワイン 赤ワイン煮込みパスタこれをお届けしたということでですね
その後もですねよくスーパーで買って食しているということで
子羊さんへのレクイエムという ふざけた話ではないんですね今日は
今日はですねこのラムという単語をめぐってですね
まあよもやま話に近いんですけれども いくつかですね話題を英語史の観点から提供したいと思います
まずですね 英語史の鉄板ネタというものがありまして
これは本来語とノルマン征服語に入ってきたフランス釈用語との関係でよく話題に上がります
動物とその肉の関係というところでですね
例えばオックスカウに対してビーフ これは牛に対して牛肉っていうことですね
ピグスワインに対してポークベイコン 生きている豚に対して肉となってきたポークベイコンということですね
それから子牛となりますとキャフに対してヴィール 子牛の肉ですね
それからヴィールに対してヴェニスンというものがあります
そしてシープに対してはマトンというのがありますね
このシープというのは大人の羊なんですが やはり柔らかい子供の羊の肉っていうのが美味しいということで
これがラムと呼ばれているんですが
これはなんとですね 生きている子羊もそれからそれが肉になって出てきたものも両方ともラムと呼ぶんですね
つまりですね動物と肉というペアが 古英語本来語とフランス語釈用語という関係になっていないということなんですね
こういうのもちゃんとあるんですよ
他にもっと必要なところではチキン これは生きている鶏もチキンですし
肉となってきた場合もこれもチキンということですね
それからフィッシュもそうですし 探すと意外と多くあると言いますか
いっぱいあげるとですね 結局肉も動物も同じ単語になることが多いんではないかということで
あの英語詞の鉄板ネタである動物と肉の名前が異なるというですね
あれは実は神話だったと言いますかね
ちょっとした盛り込みすぎのデマとまでは言いませんけれども
神話に近いものだったということになってですね
ある意味チキンと並んでこのラムっていうのはこの神話を強ザメさせてくれる典型例の一つなんですよね
ということでラムはチキンとともにちょっとですね
場を冷ましてしまうという意味でレクイエムを捧げようということです
これ1点目ですね
古英語の複数形
2点目
古英語でこのラムっていう単語ですね
これあったんですけれども
これですね
中性名詞だったんですね
古英語には男性名詞女性名詞中性名詞というふうに分かれていまして
LAMBとそのままですね書いてランブと発音していました
この発音と綴りの関係については次にまた触れますけれども
ランブだったんですね
これはですね今こそ複数の子羊がいたらこれラムズという風にSをつけることになっていますが
当時古英語ではですね
単語名詞によっていろいろな複数形の作り方がありまして
このランブという単語ですね
これは中性名詞で複数形の四角対角の形にですね
RUという語尾が出たんですね
これで複数形になったんです
つまりランブにRUですからランブルというような複数形の作り方をしたんですね
これはですね当時でもものすごく多いわけではないので
ちょっとしたイレギュラー感はあったかなというところなんですが
他にもですね日常的な単語として
例えば卵を意味するエイに対してエイルという風に
ルをつけてやはり複数形を作ったんですね
今でこそ北欧形のエッグというものが入ってきて
この元々の古英語のエイっていうのはなくなってしまったんですけれども
元はエイでその複数形はエイルという風にルをつけたんですね
RUです
そしてもう一つ有名なのがチルド
これ今のチャイルドです
子供を意味するチルドがなんとRUをつけて
チルドルとなったんですね
このようにルをつけて複数形を作るものっていうのがいくつかあったんですが
その中でほぼ唯一と言っていいですね
残っているのがチャイルドチルドレンのこのレの部分ですね
ラムの音声学的変化
REの部分ですね
もともとはRUだったんですが
また別の事情で最後のNはですねつけたんですね
もう一回複数形であることを示すのに
当時有数の複数形語尾の一つだったNっていうのを
さらにつけてしまったという経緯があったわけですけれども
今残っているのはですね
チルドレンのルぐらい
ラムからは失われてしまいましたし
エイエッグですね
これからも失われてしまったということで
ラムはこのRUとは無縁になってしまった
RUとはお別れということになってしまったということで
2つ目のレクイエム
最後にですね
つづりと発音の関係なんですが
ランブと書いて
今ラムって読むんですね
先ほどからお話ししている通り
英語ではちゃんとランブという風に
Bも読まれていたんですね
ところが中英語記以降に
このMBという繋がり
特に語尾につく場合ですね
このBが消えていくという音変化が起こりました
そしてラムになったわけなんですが
つづりの方はそのBがまだ
発音されていた時代のつづりが
未だに残っているっていうことなんですね
発音はどんどん変わっていくけれども
つづり字は保守的なので
昔の状態に据え置かれる
これは英語のつづり字詞の中で
何遍も起こってきているということなんですね
他に類例を挙げますと
よく知られているところでは
クライム
登るを意味するあの動詞です
あれもクリンブというに
B4なんですね
後英語の場合には
後ろに不定詞語尾がついて
クリンバンなどとなったので
Bがよく響いたんですけれども
このアンという語尾も消え
そしてこのMBという繋がりのBも消えたんで
今ではこれでクライムと読ませるってわけですね
他にはクシを意味するコウム
COMBと書きますね
それから押しだまった
喋らないという意味のダム
これはDUMBですね
それからお墓を意味するトゥーム
TOMB
これはレクイエムにふさわしい英語ですね
それからウーム
子宮ですね
WOMB
これいずれもちゃんとムブという風に
語尾は読まれていたんですね
ところが中英語にかけて
MBの繋がりから
Bが落ちてしまったということです
音声学的にはですね
MとBというのは
同期生死因と呼ばれておりまして
調音位置発音する時の口構えと言いますか
簡単に言えば両唇が閉じてるんですね
MもBも同じような音だということで
これがですね
いわば同化しながら消えていくと
一方が消えていく
この場合このMBと繋がる二音のうち
後者の方ですね
Bの方が消えていくということが起こったんですね
このあたりですね
Bの音がどうなってしまったのか
あるいはなぜBの綴りが残っているのか
というあたりにつきましては
ヘルディオの232回
なぜTHUMB
これ親指のTHUMBですね
THUMB
なぜTHUMBには発音されないBがあるの
ここでたっぷりと語っておりますので
ぜひそちらお聞きいただければと思います
RUMはですね
もともとBがあったのに
このBを失ってしまったという意味で
残念な単語なんですかね
わかりませんが
ということで
レクイエム第3弾ということです
英語の語源と魅力
エンディングです
今日も最後まで放送を聞いていただきまして
ありがとうございました
RUM子羊に捧げるレクイエム
結局はふざけた話になったかもしれませんが
RUM一つでもですね
これだけ英語詞を語ることができる
英語詞の深さ魅力
改めて感じていただければと思います
このチャンネル
英語の語源が身につくラジオヘルディオでは
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それでは今日も皆さんにとって
良い1日になりますように
英語詞研究者のほったり打ちがお届けしました
また明日