00:01
おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学のほったりうちです。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
queanの意味と発音の違い
今回取り上げる話題は、quean 「女王」と quean 「あばずれ女」という話題です。
これ、音で聞いていると、何のことかと思うかもしれませんが、quean これ、q-u-e-e-n と綴って、女王という意味ですね。よく知られている単語です。
もう一つ、よく知られていない方の単語として、q-u-e-a-n これで、発音上は queen というふうに、全く同じ発音になるのですが、これがなんと、あばずれ女、インバイフという、ある意味では全くの反対語になってしまうという話題なんですね。
確かに、綴り字では違う。なので、スペリングで見れば、文字で見れば、これは違うことなんだと思うわけですが、例えば、発音上、the queen と言ったときに、どっちかわからない。
普通に使われるのは、女王の意味なので、じゅっちゅうはっく、そっちなわけなんですが、理屈上、この q-u-e-a-n と綴られる、the queen かもしれないわけです。文脈によって判断できることが、当然多いとは思います。
ですが、このように、一つの同じ発音の単語、綴りは違っても、同じ発音の単語に、ある意味では、反対の意味が同居してしまうということがあるんですね。これまでも、この英語の語源が身につくラジオでは、このような反対っぽい意味が、同居してしまうという、controlling と言いますね。
コントローリーのコントローです。反対のという。ニムというのは、名前ということで、語のことですね。反対の意味を持つ単語が、同じ単語、あるいは今回の場合は同じ発音ですね。同じ発音の語の中に、同居してしまうということは、非常に多いわけではないですが、実はままあることなんですね。
今回も、そのタイプの語の例として、クイーン女王とクイーンアバズレ女と、この話題です。
さあ、この2つの、一応異なる単語ですね。発音は一緒ですけれども、スペリングが違うということですし、辞書にも2つの異なる見出しとして挙げられているわけなんですが、共通項は、女性ということですね。
実際、これ、語源が全く一緒なんです。究極的には。
小英語のレベルですね。1000年ぐらい前の小英語のレベルでは、すでに少し形が異なっていまして、具体的に言いますと、クイーン女王の方はですね、クウェーンという発音だったんです。クウェーンですね。超母音を持っています。
一方、このアバズレ女、インバイフの方のQEANで今綴られる単語ですね。これ元の形、小英語の形はですね、クエネ、クエネということで、最初のクエという部分は確かに似てるかもしれませんが、短い母音でクエネと2音節なんです。
女王の方はクウェーン、長い母音を持って1音節ということで、似ていると言えば似ている。実際、語源が一緒なんで似ているんですが、一応ですね、1音節と2音節とか、長い母音を持つか短い母音を持つかということで、音声的には区別されていたということがポイントですね。
これはこんがらがる機械というのは基本的にない。はっきりと分かれていた2語であるということになるんですね。
さあ、大元をたどるとですね、実はこれは女性を意味する引用語根に遡ります。
このCWというふうに英語では綴った、このクウッという音ですね。KにWみたいな音。現在、だいたいこの音の繋がりは、綴り次第はQUで表されることが多いわけですね。クイーン、現在のあれのようですね。
当時はCWだった。ただ発音は一緒です。これはですね、大元をたどると引用語の女性を表すクの部分が濁ってですね、グっていう音だったんですね。
これはグリムの法則という音の変化によってグがクになったのが英語なんです。とか他のゲルマン語なんですけどね。
実は例えばラテン語なんかではこのグの音がちゃんと残っていました。ギリシャ語なんかもそうですね。
そこから入ってきたのが実は英語に、ずっと後の時代に釈用されてきたのが、例えばガイネコロジーという単語ですね。GYNECOLOGYと書きますが、これ婦人科、医学の病院の婦人科ですね。
これガイネコロジーと言いますが、ガイネの部分がGYNEなんて綴りますが、これは実はクイーンのココと語根が一緒っていうことですね。これ女性学というのが本来の意味です。
女性の学問、とりわけ医学なわけですが、婦人科と。それから女性嫌い、女嫌いっていうのでミソジェニーってのがありますね。これミソっていうのが嫌うっていうことで、ジェニーっていうのがGYNYっていうことで、このGYNの部分が実はクイーンと同じ語源ってことです。
女性嫌いという形で、GYN的な綴り字で入ってきているものは、だいたいギリシャ語由来のものが多いわけですが、一方グリムの法則という音の変化を経て、CWと綴るようになった。現代ではQUと綴りますが、QUとあるのが、これは女、女性という意味なんですね。
意味の変遷
ですから、今では女王を意味するクイーンであれ、あわずれ女を意味するクイーンであれ、もともとは女性という意味から出発している。
その女性がどちらかというと上品な位の高い女性というふうに発展したのが、いわゆる女王のクイーンであり、むしろ悪い方にあわずれ女、インバイフという低い方に今発展したのがQUENに相当するクイーンということなんですね。
同じ単語で、同じ発音の単語で、だけれども意味はある意味では逆。上品なものと下品なものというふうに、これ分かりにくいじゃないかと。まさにその通りです。非常に分かりにくい言い訳ですね。
小英語までは良かったんです。小英語までは一応微妙ですが、発音上の区別はついていた。女王の方はクウェーンですし、あわずれ女の方はクウェネということで、はっきりと違っていたわけですよね。
ところが、これが中英語以降に合一してしまうんです。発音が。これ、合一したくてなったわけではなくて、発音の一般的な傾向に乗った結果、特にクウェネの方は語尾のEに相当する部分が消えてしまって、一音節になっちゃいます。
二音節が一音節になるということの代償として、せめて一音節、第一音節の母音は長くしようというふうに、二音節が一音節になったという、短くなったということの代償として、全体として長さを保つために第一音節の母音は伸ばそうというような、こういうのを代償超過。
Compensatory Lengtheningなんていうんですね。他のところが短くなったら、別のところで長くして長尻を合わせようというような力が働くんですね。この結果、このあわずれ女のクウェネがですね、一音節になった結果クウェーンと代償超過で長い母音になってしまったということで、限りなくこの上を意味するクウェーンっていうのと発音が近くなったということです。
細かく言うと、ここにもう一つ別の発音変化ですね。大母音推移として知られている発音変化なんかがあって、結果的に近代動きまでにはですね、通り字は違うままに保たれましたが、発音上は完全に同じ形に合一してしまったと。
結果的に一緒になってしまったっていうのがポイントなんですね。狙ったわけじゃない。狙って一つの同じ発音クウェーンに反対の意味が同居するようになったっていうことではなくて、たまたま違った意味のものが発音上同化したので、こんな状況になってしまったという結果論なんですね。
ただ結果論といっても、やはりコンテクスト上ですね、両方に取れるという場合があって、やはり不便であるということもきっと関係するんでしょう。アバズレオンなインバイフという悪い方の意味の単語はあまり使われなくなって、現在でもあくまで古語古風として残っているに過ぎないというわけなんですね。それではまた。