称号と語順の違い
おはようございます。英語の歴史を研究しています堀田隆一です。 7月12日火曜日。
本日の話題は、リスナーさんからの質問にお答えと言いますか、一緒に考えたいと思います。 お題はMr Smith とスミスさん
称号は前後どちらに置くか問題、です。 Mr Smith の場合は、称号である Mr っていうのが先に来て、Smith という名前が後に来ます。
一方、日本語では、スミスという名前が来て、さんという称号が後に来ます。 英語と日本語ではひっくり返っているんですが、これはどのように説明できるか。
そんな話題ですね。 先日7月7日の放送だったんですけれども、402回、称号としてのMr Smith という題でお話ししました。
それを受けてリスナーのヘンちゃんさんからコメントをいただきました。 毎朝楽しみに配置をしております。
7月7日の放送では、Mr との称号についてお話しされていましたが、そちらを聞きながら、ふと疑問が湧きました。
英語ではMr Smith、Professor Smith のように、称号が名前の前につきますが、日本語では佐藤先生と語順が反対です。
この違いはどのように説明できるのでしょうか。 ある特徴を持っている言語は英語型というように、他の要素との関連はあるの
でしょうか。というご質問でした。 まずこの質問に対してなんですけれども、明確に答えることは私にはできないんですけれども、
実は英語史の分野では、この称号が先か名前が先かという問題ですね。 これは名詞句の統合論という話題なんですが、これ小英語から中英語、
近代語、現代語にかけて、実は入れ替わってきたんですね。 という点で、わりとよく知られている問題なんですね。
なので、この話題がよく扱われているというのは知っているんですけれども、なぜということになると、不勉強であまり細かいこと、詳しいことは知らないというか、勉強してないんですね。
ですので、明確にお答えすることはできないんですけれども、いろんなパターンが歴史上あったということ、そして今は兄弟の例で言いますと、メッサスミフのような言い方、語順というのが一般的になっているということなんですね。
これ、なかなか厄介な問題でして、称号と名前ですね。これがどっちの順番なのかという一つ観点がありますよね。それとはまた別軸の観点として、称号、これ一般名詞のことが多いんですね。
ミスターもそうですし、プロフェッサーもそうですよね。この名詞に相当する、称号に相当する部分、これは普通の名詞なので、例えば漢字、座をつけることっていうのができたりするわけです。
そこで座がつくのかつかないのかっていうこっちの観点ですね。
称号と名詞の位置、語順というのが一つの観点。もう一つの観点として、称号のほう、一般名詞のほう、これに座がつくのかつかないのかっていうこと、この2つの観点、パラメーターが組み合わさると、論理的には4つの可能性があるっていうことが分かると思うんですね。
これをキング・アルフレッド、アルフレッド・オーですね。これを例にとって考えたいと思うんですけれども、現代語では普通、キング・アルフレッドと言います。ちょうどMr.Smithっていうのと同じ語順です。つまり、まずキングという称号、一般名詞っていうのがあって、その後にアルフレッドという固有名詞がある。
そして、座は開催していないっていうことで、キング・アルフレッドの形ですね。これは現代語の一番普通の形なんで、これを基準形と考えておきましょう。そうすると分かりやすいので。次にですね、キングっていうのは言ってみれば、ただの名詞、一般名詞、普通名詞ですから、座をつけるっていうことも一般的に言いはあるはずです。
なので、The King Alfredという言い方ですね。これも歴史上ありました。今は普通使わないと思います。これが2番目の言い方ということですね。そして3番目はひっくり返すやり方ですね。つまり、固有名詞が最初で、その次に称号を示す一般名詞が来るということで、つまり、Alfred Kingという言い方。
日本語的にはこれが一番本当は分かりやすいですね。アルフレッド王とか、エリザベス女王というような言い方です。Alfred Kingという言い方ですね。これは3つ目。そして4つ目に、キングの部分に座を開催させて、Alfred The Kingという言い方。これは実は現代語でも可能といえば可能です。
例えば、Alfred The Great、アルフレッド大王っていう時にはAlfred The Greatっていうふうに後ろにThe Greatって付けますね。この場合Greatっていうのは形容詞ですけれども、もちろんその後にKingっていうのが省略されているというふうに考えると、いわば名詞区なんですね。The GreatっていうのはThe Great KingとかThe Great Oneぐらいの意味です。
ですので、今の1、2、3、4、改めて言いますと、King Alfred、これが1。そしてThe King Alfred、これが2。Alfred King、これが3。Alfred The King、これが4というふうに、論理的には4つの言い方があるっていうことになります。あるというか、ありうるっていうことになりますね。
そして、現代は改めて言いますが、King Alfredという1番目のタイプが普通で、他にAlfred The King、あるいはAlfred The Greatというふうに言い習わせていますが、この第4のパターンっていうのも一応可能。
だけれども、2、3っていうのは普通言わない。つまり、The King Alfredっていうことはないし、Alfred Kingという日本語ばりの語順ですね。これも現代語的には言わないっていうことになります。現代語は1、4は可能だけれども、2、3はダメということなんですね。
さあ、1000年遡ってみます。すると、今ではダメな、現代語ではダメなAlfred Kingという言い方。つまり、日本語ばりの言い方ですよね。Alfred 王みたいな言い方。これが実は1番普通だったんです。今はあり得ないんですけれども、古英語ではAlfred Kingという語順が一般的だった。
その他、2、4も可能でした。つまり、The King Alfredというのもありましたし、Alfred The Kingっていう4つ目のパターン、これ現代でもあるって言いましたけれども、これも可能だったんですね。
考察と研究の必要性
つまり、番号で言いますと、2、3、4は可能だった。これが古英語。2、3、4が可能だったのが古英語なんですが、それが中英語、近代語、現代語と進むにつれて、OKなものとダメなものっていうのが現れてきて、1、4が可能という状態になったっていうことですね。生き残ってるのは4のタイプだけということになります。
ちょっと厄介になってきましたね。これが何でなのかっていうことを説明しようとすると、さらに厄介になって、なかなか手に負えないんですけれども、主要タイプの変化ということで考えますと、3から1に変化したっていうことが分かります。
つまり、Alfred Kingっていうのが比較的主要だったのが、今ではKing Alfredになった。この際、theのことは考えないことにして、称号と固有名詞の順番ということで考えますと、これだけに絞って考えますと、完全にひっくり返した状態が現在っていうことになります。
Alfred KingだったものがKing Alfredになったということです。なぜこの逆転が起こったのかということについては、ヘンチャーさんがおっしゃるように、他の統合構造ですね。
例えば名詞区内での形容詞と名詞の位置というもの、こうした他の関連する語順関係ということと、ある種連動しているということですね。これはあり得ると思います。ただ、これを実証する、はっきりとそうだというためには、いろいろと調べて研究しなければいけないと思います。ここで結論を出すことはどうもできなさそうということなんですね。
そして、中英語記にこのひっくり返しというのがおよそ起こったんですが、今、例えばの例としてKingという称号でやってみたんですけれども、中にはもちろんMrですね。もともとはMasterということだったというのは、先日の放送で話しましたけれども、
例えば、マスターとか、サーとか、デイムとか、それからメイルというような一般名詞ですね。称号と言ってもいいと思うんですが、この場合には普通、ザがつかなかったというのがあるんですね。特徴的のようなんです。
キングの場合はザがつくっていうことがあっても、例えばマスターのような単語にはザがつかなかった。つまり、中英語のかなり早い段階からMaster Smithの類ですね。これが転じてMr Smithになってくるっていうことなんですけれども、これは割と早い段階、中英語の最初期から見られる語順なんですね。
そしてザがないという、小英語ではなかったタイプ、一番なかったタイプの語順なわけですが、中英語の最初から現れているというところがどうも怪しい。やはり小英語から中英語にかけて何か起こったんだろうなと考えられます。
今日も最後まで放送を聞いていただきましてありがとうございました。
今日の話はちょっと難しかったですかね。私自身も結局きれいに説明できないということが分かっていながらお話したので、まとまりのない話になってしまったかと思うんですけれども。
英語の統合論、今回の場合は名詞区内部の統合論ですね。
称号と固有名詞の順番、ザを伴うかどうかみたいな複数のパラメーターが絡まって、なかなか厄介な問題ということなんですが、このトピック自体は英語史の分野で割と研究されているようですので、調べていけばいくほど事実がいろいろと出てくるのではないかと思います。
あいにく私自身がこの分野は不勉強でしたので、こんなぐらいの話で終わってしまいましたが、質問いただきましてありがとうございました。
私も改めて考えてみることができました。
今回のリスナーさん、へんちゃんさんのように、考えてみたらふと気になったことっていうんですかね。
これは本当に何気ないことで結構ですので、ぜひお寄せいただければと思います。
きれいに説明できることばかりではなくて、今日のように一緒に考えていく。
なぜだろうなということで終わってしまうことも多いんですけれども、これも含めまして英語史の魅力、面白さということだと思っています。
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