ショップとストアの基本
おはようございます。英語の歴史の研究者、そして英語のなぜに答える初めての英語史の著者の堀田隆一です。
8月29日、月曜日です。新しい週間が始まりました。そして、8月ももう終わりに近づいていますね。
皆さん、いかがこの夏はお過ごしでしたでしょうか。
本日の英語の語源が身につくラジオヘルディオでは、リスナーさんからいただいた疑問にお答えしたいと思います。話題は、ショップとストアの語源についてです。どうぞよろしくお願いいたします。
先日寄せられてきた質問なんですが、リスナーのQさんです。
こんにちは。いつも楽しく聞かせてもらっています。英語に関する気になる話題を見つけたので、堀田先生に質問したくメールを送りました。
私のツイッターのタイムラインに、ショップとストアの違いについてという英語のネタが流れてきたのですが、そこには製造、加工などもやっているお店はショップ、販売のみをやっているのがストアと書かれていたのですが、これって本当でしょうか。
あと、ショップとストアの語源の違いについても、よかったら教えてください。ということで、当該のツイートをリンクを教えていただきまして、見てみました。
Qさん、ありがとうございます。非常に面白い問題ですね。
そしてこの当該のツイートっていうのは、6コマ漫画という形で非常にコンパクトにまとまっていまして、私もうまくできてるなというふうに思いましたので、このチャプターにリンクを貼り付けておきます。皆さんもご覧になりながら聞いていただくと面白いかと思います。
ツイッターのアカウントの方は、コアタン、コアラの学校という名前でアカウントから発信されている方なんですが、6コマ漫画になっていまして、ショップかストア、これどっちを使うか迷ったらということで、そのお店が何をやっているかによって区別するといいよということなんですね。
製造、加工もやっているとなると、これはショップがいい。例えば花屋さん、花を折ったり積んだりいろいろ作業するわけですよね。リハツ店、自転車修理店、コーヒーショップみたいなものはショップということですね。一方、販売のみ、売っているのみというお店はストアであると。本屋であるとかコンビニ、デパート、酒屋なんていうのが例に挙がっているということですね。
なるほど、きれいにまとまっていると、私もとても勉強になりました。
わかりやすいなと思った一方で、私もQさんと同じような反応で、本当なんだろうかということをちょっと疑問に思ったんですね。
普通の店、販売のみをやっている店でショップっていうのも、結構目にしてきた記憶があるなということで、改めて調べてみました。語源等も合わせて調べまして、今回わかったことをお伝えしたいと思います。
一般にショップとストアの違いという時に、英語の英米差ということと一緒に現れる話題なんだと思うんですね。
今回ツイートでロックマ漫画で紹介された使い方っていうのは、いわゆる典型的なアメリカ英語。アメリカ英語でのショップとストアの使い分けということをうまく説明して解説しているっていうものなんだろうと思うんですね。
一方、イギリス英語ではまた違った軸でショップとストアっていうのを使い分けるんですね。イギリス英語の場合は基本的に、我々が日本語で店と呼んでいる類のものは基本的にショップと言うんですね。
そしてストアは大きな店、いわゆる典型がdepartment storeというものですが、あのような大きな店に使われるのがストアということで、単純化して言いますと小さな店と大きな店、大きなって言いますか複合的なということですね。
その違いがイギリス英語では重要で、ショップとストアが使い分けられているっていうことなんですね。
アメリカではサイズというよりは、その中で何が行われているか、販売のみであればストア、そしてその他のことも行われている場合にはショップというふうに使い分けの軸が違うっていうことですね。
ですので、今回の6コマ漫画はですね、これが当てはまるのは基本的にアメリカ英語についてであるということになるかと思うんですね。
一般に日本で学ぶ英語っていうのはアメリカ英語ベースのことが多いですので、現代はですね、その意味では今回の6コマ漫画が教えてくれる通りなわけですが、世界の英語の中ではですね、それがその6コマ漫画通りではないっていうこともあり得るっていうことですね。
そこについて了解していればいいんではないかと思います。
ショップの語源
A、Bの英語でこのように使い分け方が異なるというのはなかなか面白い現象だと思うんですけれども、この問題も含めまして、まず大元の語源から探ってみたいと思うんですね。
実は結構こみ入っていまして、頭を整理しながら説明しなければいけないんですけれども、まずショップから行ってみたいと思うんですね。
これは本来的にはですね、ゲルマン語系の単語です。
いくつか説はあるようなんですけれども、その一説によりますと、藁の束を束ねて作られた屋根というのがスタートのようなんですね。
そしてこの屋根を持つ場所と言いますか屋台みたいなものですね。
ちょっとした小屋っていうことです。
この単語がシェオッパという形で小英語に一度だけ現れてるんですね。
それも翻訳だったりするので、はっきりしたことはよくわからないでですね、本当にそんなに使われていたのかはわからない単語っていうことなんですが、13世紀後半ですね、中英語期になってこの単語が普通に使われるようになってきます。
店商店という意味ですね。
そして今に続くわけなんですけれども、途中でいわゆるものを売る店だけではなくてですね、作業場とか工場というようなものを作るいわゆるワークショップの意味ですよね。
これもできてきたということで、アメリカ英語では典型的に何かそこで売るだけではなくて何かを行われているようなタイプの店のことをショップというわけなんですけれども、
これは現代にまで続いてきているわけですね。
この店であるとか作業場というような意味からどうもつながってきていると。
この単語は小英語にも一例だけあったんだけれども、しっかり使われていたかっていうのはよくわからないところがあって、その次に出てくるのは13世紀の末ぐらいっていうことでしたね。
この13世紀末ぐらいにいわば再登場するわけなんですが、その再登場に一役買っている可能性があるのはフランス語なんですね。
大元はゲルマン語由来なんですが、それが一旦フランス語にも入り、そしてフランス語のプッシュによってまた英語に13世紀末に戻ってきたみたいな、そんな流れになります。
ストアの語源
これだけでもやや複雑なんですけれどもね。
次にストアの方です。
この単語はやはり13世紀末、だいたい同じぐらいの時期なんですが、これがフランス語から入ってきます。
もともとはラテン語のインスタウラーレという、新しく立てると言いますかね、リニューするぐらいの意味で出てきたんですね。
それがフランス語を経由して13世紀末にですね、英語に入ってきました。
その時は動詞として入ってきたっていうことで、新しくするとか供給する、新しく物を補うっていうことですね。
そこから蓄える、貯蓄するというような、貯蔵するっていうような、今に続く動詞の意味になっています。
早くから名詞としても使われたんですが、その場合店ではなくてですね、やはり貯蔵するものですね。
たくわえという意味がスタートです。
そこからその貯蔵物がある場所のこと、つまり倉庫という貯蔵室、そういう意味になるわけですね。
そしてこの倉庫の意味からですね、倉庫にしまってある品物を出してそれを売るということで、意味の発展によって店という意味が出始めたのはですね、なんと18世紀になってからのことなんです。
つまり店の意味でのストアっていうのは、かなり遅い意味の発展ということなんです。
そしてもともとは倉庫っていうことですから、比較的大きめの店のことっていうのが原理、スタートだったようなんですが、それがイギリス英語では受け継がれているっていうことですね。
大型の店、デパートメントストアのようなものに典型的に使われるっていうことで、
実際に1860年代にですね、いわゆる政教のような生活共同組合が多数の店を寄せ集めてコンプレックスにしたというものですね。
これが典型的にストアと呼ばれたっていうことで、イギリス英語ではこれの意味が定着しているっていうことなんですね。
一方、アメリカでは倉庫というところから大きな店ということだったんですが、そのうちアメリカではサイズは特に気にしない。
つまり代償、いずれの商店、店でも使えるというふうに変化して、今ストアが一番普通の商店を表す単語にアメリカ英語ではなっているっていうことですね。
このようになかなか複雑な歴史があるようです。
エンディングです。
今日も最後まで放送を聞いていただきましてありがとうございました。
リスナーのQさんからいただいた非常に面白い話題ですね。
ショップ、ストア、この使い分けというのは、まずアメリカ、イギリスで使い分けの軸が違うっていうことが一つ。
そして語源的に言ってもですね、それぞれショップとストア、だいぶ違うところから現れてですね、現代の店という意味になっていると。
ショップの方はどちらかと言いますと、店のスタイルって言いますかね。
おそらくわらぶきの屋根がある場所ということで、その店の形、スタイル、外見といったものが起源になっているということですね。
一方、ストアの方はもともと蓄える、貯蔵するということで倉庫ですね。
つまり機能と言いますかね。
その機能から発展して商店の意味へ変化したと。
そのような生い立ちを持っているっていうことが分かりました。
私自身も調べる過程でですね、いろいろと新しく知ったことが多かったので大変勉強になりました。
ご質問ありがとうございました。
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それでは今週1週間の始まりですけれども、皆さんにとって良い週となりますように。
ほったりうちがお届けしました。また明日。