こんにちは、BIBLIO JAM始まりました。本日のプレゼンターは、首都寺美央です。 こんにちは、本日ナビゲーターを務めますナイトジョンです。
この番組は話題の新刊ノンフィクションをじっくり深掘りしていくポッドキャスト番組です。 今日も日本橋浜町のブックカフェ、浜ハウスからお届けします。
ナイトさん、本を取るきっかけ、一人によっていろいろあると思うんですけど、 クタガー賞とかナオキ賞とか本屋大賞とか、何か大きな賞を受賞したっていうのも、一つきっかけになりませんか?
なりますね。ノンフィクションも、大谷総一ノンフィクション賞とか、高段車ノンフィクション賞とか、あと新潮ドキュメント賞、いろいろ有名な賞ありますよね。
ありますね。今日紹介するのはですね、おそらく今年、そういうノンフィクションの大きな賞のどれかを確実に受賞するんじゃないかなと、
私が考えている作品です。 今から、まだ4月なのに、受賞を予言しちゃいますか。
はい、またずいぶん大きく出ましたね。
さらに調子に乗るとですね、年末に、今年1年振り返った時に、ノンフィクション全体でも、今年の修学の一つに数えられる、おそらく一冊になるんじゃないかと思います。
それは楽しみですね。さて、首相さんがそこまで推したくなる一冊とは、何という本でしょうか。
はい、文芸春秋から出た灰色の鎖、ピーファス汚染劣等という本です。
著者は元朝日新聞記者で、現在はフリーのジャーナリストとして活躍されている諸永雄司さんです。
これあれですね、ウェブメディアのスローニュースで連載してたやつですよね。
そうですね。
スローニュースというのは、フリージャーナリストの調査報道とかを支援しているメディアのことですね。
はい。おととしぐらいだったと思うんですけど、スローニュースのイベントで諸永さんにお目にかかったことがあって、
その時に単行本を早く読みたいですみたいな、またわがままなお願いをしたところ、
実はまだまだ取材にすることがあるんです、というようなことをおっしゃってたんですね。
その言葉通り、この本は凄まじい量のファクトが詰め込まれた一冊になっています。
そうなんですね。これそもそも、PFASでピーファスって読むんですよね。
そうですね。
ピーファスっていうのが、何だったのかっていうのが若干あやふやなんですよね。
有機フッ素化合物だっていうことぐらいはわかってるんですけども、他にもPFORとかPFOSとか、
いろんな似たような名前がいっぱいあるんで、ややこしいんですよね。
僕も諸永さんの方で初めてその辺り整理ついたんですけど、
有機フッ素化合物というのは人工的に作られた化学物質で、
焦げ付き防止加工のフライパンだとか、ハンバーガーの包装紙とか、
化粧品、レインコート、防水スプレー、それから水をはじくカーペットとか、
ありとあらゆるところで使われてきたんですね。
水油をはじく性質があるので、非常に便利に使われてきたっていう物質ですね。
ここでですね、ピーファスの汚染の問題と、
ミナマタ病が繋がるわけです。
ただこれは、住民がたまたまへその王という、
例え話を持ち出したから繋がったわけじゃなくて、
本当にミナマタ病とピーファス汚染の問題って、
地続きなんですよ。
それがこの本を読んでいて、
最も心寒させられたというかですね、
背筋が寒くなったところです。
まさにこの本の核心部分ってことですね。
この本にはたくさんの科学者が登場します。
キープレイヤーとなる科学者、
それぞれの個人紙も書かれていて、
そこもとても読み応えがあるんですよね。
例えば、キビ中央町の住民たちの血液検査をするかどうかをめぐっても、
2人の科学者が出てくるんですけど、
1人はですね、おそらく環境省の意向を受けてだと思うんですけど、
ことさら血液検査をやっても意味がないって説明会で主張する科学者で、
もう1人は住民の側に立って、
血液検査の実証を後押しする科学者ですよね。
飲み水が汚染されていたっていう、
これ揺るぎない事実はありますよね。
でもその事実を前にね、
どう振る舞うかっていうところで、
科学者の立場が分かれるんですよね。
そうなんですか。
でも血液検査に意味がないっていう主張の根拠って何なんですかね。
一言で言えばですね、
ここからの数値が危険だよっていう、
明確な基準がないっていうことなんですよね。
それにたった500世帯の規模でやっても、
データとして意味がないみたいなことも、
反対する側の科学者は言ってるんですけどね。
いやでも不安な住民の人に言うことではないですよね。
結局血液検査はやったんですか。
はい。
もう日本初となる自治体によるPFASの血液検査が実施されました。
どんな結果だったんでしょう。
これが驚くべき結果でして、
なんと子どもを含む住民709人の血中濃度の平均値は、
国の暫定目標の70倍を超えてたんですよ。
70倍ですか。
はい。
やばいですね。
そうですね。
この血液検査の実施に至るまでも、
長々に国や県から実施しないように、
圧力がかけられていたっていうことが、
この本では明らかにされています。
不都合な結果が出るとやっぱり国も動かなきゃいけなくなりますからね。
さらにこの本では、
国が基準を示すにあたって、
直ちに健康に影響はないっていう結論ありきで、
検討会議でね。
海外の結構有力な論文があるんですけど、
PFASが危ないよっていう。
それを意図的に参考論文から排除して採用しなかったり、
あとは裏会議を結構たびたび開催して議事録を残してなかったり、
目を覆うような小細工をやってたことも明らかにされています。
でも分からないから、
はっきりさせなくていいっていう国の姿勢ってのは、
そもそもちょっと問題ですよね。
言えないですね。
さっきのPFAS汚染とミナマタ病のつながり、
そういう話が出ましたけど、
こういう国の姿勢がミナマタ病と共通してるってことですか?
はい。
ミナマタ病を引き起こしたのは、
窒素っていう企業が工場排出で垂れ流したメチル水位だってことは、
もう今では常識になってますよね。
この関連性をいち早く指摘したのは熊本大学で、
その中心人物が女教授で、
医師の原田雅住さんという方だったんですけど、
今お亡くなりになってますけど、
原田さんはへそ脳が証拠になるってことに気づいて、
胎児性ミナマタ病を証明した方でもあります。
この本の中でですね、
原田さんが残した論文が紹介されてるんですけど、
これを見るとPFAS汚染とミナマタ病の構図が、
驚くほど似てることがわかるんですよ。
例えばどういう点ですか?
ミナマタ病を拡大させてしまった要因としてですね、
経済最優先だったっていうことが挙げられるんですね。
なるほど。
当時窒素はプラスチック原料の製造に不可欠な、
アセドアルデヒットの生産の大手で、
窒素の向上を止めちゃうと、
日本の高度経済制度が止まっちゃうみたいな感じで、
国は動かなかったんですね。
ではPFASはどうかというとですね、
実は半導体の製造工程で欠かせないのがPFASなんですよ。
なるほど。
今半導体戦争って言われるぐらい、
日本も含めて各国が半導体産業っていうのをね、
経済安全保障の柱の一つにしてますよね。
そうですね。
それから関連がよくわかってないと理屈も同じで、
ミナマタ病でも当時向上排出が原因ってされながら、
国はその排出性に含まれる何が病気の原因となった物質が、
科学的に解明されてないっていう非常に細かい理屈を立てにしてですね、
ミナマタ病の認定を遅らせたんですよね。
なるほど。だから科学を都合よく言い訳に利用してるってことですよね。
そうなんです。
ここで科学者の良心とは何かっていうテーマも出てくるわけなんですけど、
ミナマタ病では患者の認定基準について医学的根拠に基づくんじゃなくて、
できるだけ保証金を払いたくないっていう国の意向に基づいて、
専門家基準を決めたことが後の検証で、
これは明らかになってるんですよね。
PFASでもリスク評価を決めるワーキンググループってのがあるんですけど、
PFASの専門家じゃない人物が実は座長を務めてるんですよ。
この本の中で著者の諸長さんが彼らと対峙する場面が出てくるんですけど、
諸長さんに事実を突きつけられてですね、
逆切れしたりちょっと開き直ったりする彼らの姿ってのは、
読んでて科学者としての良心はないのかってちょっと恥ずかしくなりましたね。
デンマークにフィリップ・グラクシャンっていう科学者がいるんですけど、
この本の中にも出てくるんですけど、
この人はですね、医学生の頃にミナマタ病胎児性患者の少女の姿を見て、
化学物質のもたらす深刻な影響に衝撃を受けてですね、
今ではPFASの研究で世界的に知られてるんです。
こういう、この方みたいな人がやっぱり科学者の良心じゃないかと思うんですよね。
日本にもね、そういう科学者が一人でも多くいて欲しいですよね。
この本では主にキビ中央町が舞台になってると思うんですけども、
気になるのはですね、全国にどれくらい汚染地域があるかってことなんですよね。
そうなんですよね。
もるながさまの朝日新聞の記者次第に、
消された水汚染っていう本を平凡写真書からも出してるんですけど、
この本ではですね、多摩地区の水道汚染が取り上げられてるんですよ。
多摩地区ですか。
はい。アメリカ軍の横田基地で使われてる淡潮化剤に含まれてるPFASによって
地下水が汚染されたってことは原因なんですけど、
この本でもやはり東京都の動きの鈍さが目につくんですよね。
しかも相手がアメリカってなると、何だろう、
国全体としても何かお呼び越しなんじゃないかなって思いますね。
そうですね。大統領の隣でぴょんぴょんはしゃいでる場合じゃないですけど、本当に。
親しくならばいいんですけどね。
本当に親しいんだったら時には厳しいことだって言えるはずだと個人的には思うんですけどね。
室長さんは、PFASを排出してきた工場や基地は全国で少なくとも200箇所下らないと言ってますんで、
これからより大きな社会問題になっていく可能性がありますね。
みなまた病でさえ70年経つのにまだ解決しないわけじゃないですか。
そうですね。
全国200箇所で健康被害が発生したらとんでもないことになっちゃうんじゃないですか。
なんかもう収束するまで正規単位で時間がかかるんじゃないかみたいなね。
アメリカで安くて便利っていうことで、当時農薬や殺虫剤として普及してたDDTの危険性を克服した農機所の古典的名著で、
レイチェル・カーソンの沈黙の春っていうね、大変な大名著ありますけど。
あの本の中でカーソンはこのまま自然環境を守らなければ、未来の世代は我々の世代を許すことはないだろうって言ってるんですよね。
こういう未来から今を見つめるような想像力っていうのが求められてるんじゃないかなと。
確かにそうですね。
はい。
まあ、ミナマタ病でも石森美智子の苦害浄土っていうね。
これもすごい名著ありますけど。
グッときますよね。
そうですね。
作家の池澤夏樹さんが個人編集で話題になった河手消防課で出た世界文学全集でね。
日本代表でこの苦害浄土が選ばれたっていう世界文学レベルの傑作なんですけど。
この苦害浄土も内藤さんもご存じの単なる公害の記録じゃなくて、
結構なんか海と共に暮らしてきた人間のなんか古来から続く営みの姿をね。
神様の目で見つめてるような視点があるじゃないですか。
そうですね。
だから沈黙の春も苦害浄土もどちらも想像力の大切さを教えてくれてるなと思うんで。
これやっぱそのままPファ創生の問題にもつながってるなというふうに思います。
なるほど。
はい、ビビリオジャムの第11回いかがだったでしょうか。
ビビリオジャムでですね。
ノートの方にビビリオジャムマガジンというものがありまして、
過去のアーカイブですとか更新情報をお届けしております。
ぜひご登録ください。
今回のお相手はプレゼンターの首藤潤也でした。
そしてナビゲーターの内藤潤でした。
それではまた次回お目にかかりましょう。