真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、第204夜を迎えました。
今夜は、私が最近買った本、【波待ち】の本たちについてお話ししたいと思います。
まだ読み始めたばかりだけど、これはもう今年のベストブック入り間違いなしと思っている小説から、メモの取り方のハウツー本まで、
今後貸し出しカードとして紹介するかもしれないですし、しないかもしれない。
ゴールデンウィークに何か読もうかなと思っている方にも、ご参考になればいいなと思ってご紹介します。
さてさて、早速1冊目は、今日はですね、5冊紹介したいと思っています。
1冊目は、松井レナさんの最新作【カットイン・カットアウト】という長編小説です。
ご存知の方も多いと思いますが、松井レナさんは元SKEのトップ人気メンバーの一人で、
今は俳優としてご活躍されていますが、小説家としてもデビュー作【カモフラージュ】2作目の類々ともに、私すごく高く評価してまして、
高く評価してるっていうのは随分と上から言ってしまったな。
なんというか、アイドルが自身の経験も活かして小説も書きましたっていうんじゃなくて、小説家として生まれた人が、物書きとして生まれた人がアイドルもやれてましたみたいな、
そんな感じのする奥行きのある方ですね。松井レナさんという人は。そんな松井さんの楽しみにしていた3作目が【カットイン・カットアウト】です。
舞台に選んだのは演劇の世界なんですね。もちろん松井さんご自身も舞台で活躍されてますし、最初はきっとこうアイドルファン集客目当てのキャスティングの部分もあったんじゃないかとは思いますが、
今は劇団新幹線とか岩井秀人さんとか、舞台にも呼ばれてまして明日ともにという感じでしょうね。そんな彼女が演劇の世界を描く。しかもこの物語はですね、初舞台でヒロインに選ばれた元国民的子役でアイドルの女性と、
実力はあるけど今は早くしか与えられていない中年の舞台女優という2人の女性を描いた小説なんですね。むしろそうでしょう。きっと本人の経験が混ざっているのかななんて想像させることもきっと織り込み済みのメタファーをうまく使っている小説だなと思いました。
松井さんのことをよく知らなくてもお芝居、演劇好きな方はぜひ読んでみてください。幕が開く前の高揚感と終わった後の瞬間、拍手が起こる緊張と緩和みたいな感じとかが、そういうのを再体験できる小説になっています。まだ読み終わっていないので、またきっとどこかでお話しするかもしれません。
さて2冊目は、これはちょっと読み始めてもうベストブック入り間違いなしだと思ってゴールデンウィークにとっておこうとパタッと閉じた小説です。金原ひとみさんの新刊ヤブの中という長編小説になっています。
これは2月10日発売で、先日買ったばっかりなんですけども、なかなかに分厚い長編でして大音になりましたが、読み終えられるかなって思いつつ買ったんですけど、数ページ読んだところでこれはいけるってなっています。
テーマは文芸業界における性被害、性加害の告発を描いています。タイムリーというか何というかですね、文芸史の編集長からかつて性的搾取されていたとある女性がネットで告発をするんですね。
この小説はその被害者の告発で進んでいくのではなくて、加害者とされる元編集長の木戸という男性とその家族、彼が担当していた女性作家、彼の部下の文芸編集者などなど、いろんな立場から別々の視点で書かれていきます。
あ、好み、好みのタイプです。ただかなり重ための小説そうですね。文芸界の性加害を描いた小説といえば井上アレノさんの生川が記憶に新しいですね。
2022年のバタ屋のベストブックにも選ばせていただいてました。やぶの中はまだ読み終わっていないので、結末はまだわかんないんですけれども、やぶの中というタイトルにあるからにはやぶの中なのかもしれないと想像しますが、
井上さんが書くとああいう結末で、ああいう書き方というのと比較して、金原ひとみさんが書くとこうなるんだっていうね、比較も面白いんじゃないかなと思って読んでいます。
すでに第1章、第1章は軌道の独り語りから始まるんですけどね。ああ、こういう文芸のおじさん編集者嫌だなって思わせる。いや誰かを想像しているとかじゃないですよ、もちろん。でもありそうだなって感じですでに嫌悪感を持ってるんですけど、それもまたミスリードかもしれないですね。
わかんないですね。これはゴールデンウィークにゆっくりとっておいて、一気に読もうって思ってます。
ということで、人間の言語能力がAIが成長するにしたがって失われていくとは私はあまり思っていなくて、むしろそういう自分に思いつかなかった自分の感覚にはなかった言葉遣いでさえ他人の言語能力とか思考回路でさえ知ることができるって今のところは思ってます。
これもゴールデンウィークにゆっくり読もうと思っている本です。
さて最後5冊目はエッセイ、ノンフィクションのジャンルからご紹介します。
美人までの階段千段あってもう潰れそうだけどこのシートマスクを信じてるっていう長いタイトルの本を買いました。
これはアメリカのジャーナリストでポッドキャスターのエリースヒューさんが美の帝国韓国に滞在をしまして、韓国の美容業界、美容整形、コスメ、韓国コスメ業界を取材をして、著者自身も自分の改善にハマっていくというレポートになってます。
タイトルからするとちょっとポップでシニカルな韓国レポ、韓国の美意識の高さをいじってる本なのかなって想像しますよね。しかしは読み始めてみると思ったより重厚なるポルタージュでした。
さらっと読むエッセイって感じではなかったので、これもゆっくりちょびちょび読もうと思って撮っています。
表紙もポップだし、文体もポップなんですけど、K-POPはアイドル史上から、過不調性とかジェンダー、フェミニズム的な発想、それから上昇思考の資本主義の生み出す競争意識とかですかね、非常に深い考察を含んだ本でした。
ご興味がある方はぜひ一緒に読みませんか。さて今日は冒頭に紹介した松井玲奈さんの新刊小説カットイン・カットアウトから紙フレーズを紹介して終わりたいと思います。
幕が降りれば解き放たれたかのように割れんばかりの拍手が鳴り響き、先ほどまでの静寂は一気にかき消される。重苦しい話であるにもかかわらず、観客の表情は非常に晴れやかなのだ。とあります。
これを読んで、ああ、しばらくお芝居を見ていないなぁと思ったりしました。でもあの感覚を思い出したんですよね。
お芝居が終わって、最後のセリフが終わって、静寂が訪れて、誰が最初に拍手をするのか、特に非常に重いラストシーンになった時に、シーンインテナーってパラパラと始まる場合もあるし、誰かがパッて拍手を大きくしたらワーってそれに続いて起こる時もあるし、一斉にワーって起こる時もあるし、
同じお芝居を何回か見に行くことも私もあるんですけど、本当その日によって反応は違ったりするんで、お芝居って本当にお客さんを含めた生き物だなぁと思います。私は特に重いやつが、絶望的な終わり方が結構好きなんですね。救いがないところでバツッと終わるやつが好きです。
シェイクスピアの悲劇ものも結構そういう感じですかね。何で好きなんだろうってずっと思ってたんですけど、この松井レナさんの小説のくだりを読んで初めてわかった。あの、え?ってなった。これで終わんの?ってなった一瞬の静寂の後の開放感みたいなのがめっちゃあるんですよね。
例えるならこうギュッと腕をつかんで、あるいはバンドで止めたのを外した時に血流がバーって流れるみたいな開放感があります。それは映画ともまた違うし、家でネットフリックスを見るとかとも全然違うスポーツの後みたいな心地いい疲労感と達成感があるんですよね。またお芝居見に行きたいなぁという気持ちにさせられました。
さて、あ、そうそう、前回放送会で投票機能っていうのを使って待ち合わせに早く着く派ですかっていう質問をしたんですよ。答えてくださった方もいらっしゃるでしょうか。私はなんとなく前床を聞いている方は早く着く派が多いんじゃないかなって勝手に想像してて聞いたんですけど、そしたらやっぱり早く着く派が6割ぐらいで多かったんですけど、
遅れ気味派ですっていう方が3割ぐらいいらっしゃって、いや正直だなぁってすごい愛おしい気持ちになりました。またちょっと投票機能は時々使ってみたいなと思います。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
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お届けしたのは講談社のバタヤンこと河童理恵でした。
また水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。
おやすみ。