1. 真夜中の読書会〜おしゃべりな図書室〜
  2. EP.232 試練のときを救ってく..
2025-12-17 14:54

EP.232 試練のときを救ってくれるのは。自分への信頼を取り戻す

「伴侶が大病を患い、平常心でいられないときに」というリクエストに。川上未映子さんと穂村弘さんのトークショーで聞いた「エクストリームなときは文学が救いになるか」という話から。

<今夜の勝手に貸出カード>

若松英輔さん『あなたが言わなかったこと』(亜紀書房) https://amzn.to/45bb6JM 


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サマリー

このエピソードでは、試練の時に自分を支えるために必要な信頼感や自己理解について話されています。他者の体験や著作を通じて、困難な状況での心の持ち方や文学の役割が考察されています。また、若松英介さんの言葉を通じて、自信を失う原因や自分を信頼することの重要性が語られています。特に、他者との比較ではなく、自分自身の信頼が幸せと強さに繋がることが強調されています。

困難な時期の体験
真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
今晩は第232話を迎えました。今夜のお便りをご紹介します。ペンネームハイネさんから頂きました。
初めまして、61歳主婦です。老眼になってからは好きだった読書から遠ざかっていますが、このポッドキャストを聞いてまた再会しようかと思いました。
主人が胃の全摘出手術を受けて約10ヶ月が経ち、ようやく胃のない生活に慣れてきました。
術後は胃がなくなったことで、食生活や体調の変化に心がついていけず、楽観的な主人もうつになってしまうのではと恐れる日々が続いていましたが、
最近になってようやく体調が安定してきました。しかし今後も胃がないことでまだまだ体に変化が起こるとはわかっています。
他への転移が今のところないことは不幸中の幸いなのですが、もともと悲観的な自分はちょっとした変化に落ち込むことが多くあります。
胃があった頃の過去や不調が起こる未来に目を向けず、今に感謝して生活していけるようになれる本がありましたら教えてください。よろしくお願いします。」といただきました。
リクエストありがとうございます。
ご主人の大きな手術大変でしたね。
つきそわれているハイネさんの方が喪失感や日々の変化に戸惑いや落ち込みを感じられるわけですね。
そんなこんなポッドキャストを見つけて聞いてくださってありがとうございます。
今日の勝手に貸し出しカードを出しする前に、先日作家の川上美恵子さんと歌人の本村博さんの対談を聞きに行った話からさせてください。
川上美恵子さんのこのポッドキャストでもご紹介した黄色い家がですね、文庫になったという記念に、キノクニアホールでトークショーが開催されたんですね。
シュワスの仲間の平日の夜だったんですけど、会場も超満員で、私もすごいお二人のファンなので、チケットを発売、
初日とかに入手して、もう売り切れたらしいんですけど、早めに買えていい席をゲットできたんですよ。
もう熱気もみちみちって感じで、早めに着いたつもりだったんですけど、隣の人も隣の人も始まる前からノートをバックから出していて、
あ、そうか、メモを取るのかって思って、私も愛用のノートをご紹介するぐらいメモマなのに、その日に限ってノートを持って出てきてなくて、すごい自分にがっかりしちゃったんですけど、
そうだ、こんな時こそね、ノートがいいですよね。そのくらいメモする言葉がいっぱいある会でしたね。
いわゆる主欲のってやつです。もう私は編集者じゃなくなっちゃったんですけど、もし記事にするならってことをすごい考えながら聞いちゃって、見出しにしたいような言葉がいっぱいいっぱいありました。
前置きが長くなってしまったんですけど、なんでこの話からしたかと言いますと、川上美恵子さんが最近お母さんも亡くされたと、
さらにご自身もちょっと大きい病気が見つかって、それ退治されて、いろいろ大変で不安な気持ちがいっぱいでっていうことがあって、そんな時は全然小説が読めなかったんですと、
こんな仕事をしているのに物語というものが頭に入ってこないというようなことをおっしゃってたんですね。
小説とか本を読むっていうのは、余裕のある人の楽しみであって、時間にも金にも心にも余裕のあるたしなみなんじゃないかと、ちょっと言い方がうろ覚えなんで、あくまで私の解釈と思って聞いてくださいね。
つまり優雅な特権階級の遊びなんじゃないかってことを自覚しないといけないみたいなことをおっしゃったんですよ。
それがすごく胸に響いていて、川上美恵子さんは貧富の差というとちょっと言い方がストレートすぎるんですけど、階級、クラスを結構描いていらっしゃるでしょう。
本当に本当にしんどい状況にある人とか、しんどい人にこそ届いてほしいけど、結局お金があって余裕がある人にしか届かないみたいなもどかしさがあるのかなと聞きながら思ったんですよね。
普段は余裕があった人だとしても、自分がすごいピンチの時とかつらい時、ご両親が亡くなったりとか病気が見つかったりとかね、そういう時は、
ほむらさんはどう?って本とか読める?と、エクストリームな時は文学は必要なのかっていうことを聞いたんですよ。その美恵子の問いもすごいなと思いましたけど、それに対するほむらさんの返しがすごくて、ほむらさんはエンタメが救えるのはある程度のところまでだと、最悪な状態は芸術にしか救えないんじゃないかとおっしゃったんですよ。
心のケアと書籍紹介
なんかどなたかの詩を紹介された記憶なんですけど、ちょっとそこはちゃんとメモが取れてなくて、そういうエクストリームな時は、詩とか歌とか抽象化されたものしか入ってこないっていうのはあるかもなぁと私も思いまして、
すごくリアリティのある物語とかストーリーが強い展開がある、起承転結がある、展開が早い小説とかドラマとかもって、なんかそういう時は入ってこないっていうのはあるかもですよね。
皆さんはどうでしょうか。
はいねさんのお便りに戻るんですけれども、何かこう強い物語とか具体的なメンタルや自分をチェアアップしてくれるようなケア的な本をご紹介するっていうよりは、
もっと抽象度の高い詩とか芸術性の高い文章を味わえるような本がいいかもしれないなっていうのを、その時すごく思ったんですね。
それで今夜の勝手に貸し出しカードは、若松英介さんのあなたが言わなかったことという本にしました。
はい、こちらの本は批評家で随筆家の若松英介さんのエッセイをまとめた本になってます。詩もいくつか掲載されています。
元はですね、神宗大谷派って、浄土神宗の仏教の宗派のある新聞に掲載されていたものをまとめた本のようなんですね。
だからちょっとお好みは別れるところあるかなとも思いますし、信じている宗教が違ったらあれなんですけど、
お坊さんの言葉をお話を聞いているような、聞く人によって聞く時の状態によって響くところが違う、受け止め方が変わるような、そんな語り口の本なんです。
若松さんご自身が奥様を病気で亡くされていて、タイトルにあるあなたが言わなかったことっていうのは、奥様のことを指しているんだなと思ったんですね。
だからちょっと不吉なお話に感じられたら読むのをやめてほしいんですけど、深い愛の話だなぁと思いまして、そう読みました。
ハイネさんの歌よりも深い愛のお話だなと読みました。この本の中で風立ちぬから引用されていて、幸福の思い出ほど幸福を妨げるものはないという言葉が引用されていました。
前後の文脈で言うと、身近な人、大切な人が試練に遭うっていうのは、とても苦しくて切ないことだけど、その切なさというものの先に利己、自分の利益の利己ですね、利己とか自分の幸せだけを願うとは違う幸せが探せるんじゃないかみたいなことが書かれていたんですよ。
でもこれは私の解釈で、非常に抽象化された言葉とそれから名著からの引用っていうのがサンドイッチのように紡がれているので、そこからどう受け止めるかっていうのは非常にこちらに委ねられているような書き方をしているので、私も今言ったような解釈は今の私はそう受け止めたっていう感じで、
自信と比較の関係
もし自分がまたちょっと違うエクストリームな状態と言いますか、何か病気を抱えているとか、すごい悲しいことがあった後だったら違う解釈の仕方をしたかもしれませんというような、非常に余白が多い本なんです。
それが先ほどの穂村さんの言葉とつながって、エンタメには救えないエクストリームな状態の時は芸術だけが心に入ってくるみたいな感覚はそういうことなのかなって思いました。
賛美歌が胸を打つとかっていうのも似たようなことかもしれないですね。
さて今日はあなたが言わなかったことから紙フレーズをご紹介したいと思います。
この本すごくたくさん中に本が、いろんな本が紹介されていて、いろんな人の言葉が引用されているので、若松さんがピックアップした紙フレーズの集まりみたいな本なんですね。
だから芋づるしきにまた読んでみたいなという本が増えちゃう本でした。
そんな中で私が選んだ若松さんの言葉の紙フレーズをご紹介して終わりたいと思います。
自信とは誰かと自分を比べて優位であることを確認するところに生まれるものではなく、文字通り自分を信頼することにほかならないとありました。
誰かに批判されたり気持ちが落ち込むと自信がなくなるし、気が大きくなると自信過剰になる。
劣等感とか自信が過剰になるとかっていうのは誰かと比べて発生するものであると。
結果的に自信過剰になると誰かを見下しちゃうし、自信がなくなると劣等感で誰かが羨ましくなったりするということなんですけれども、
自信をなくすっていうのは何かと比較していることが多いと思うんですよ。
誰かと比べてとか過去の自分と比べてっていうのも結構あるかなと私は思っていて、
そうじゃなくて、まず今の自分を信頼するっていう、とにかくそこからなんだなというのが響きました。
若松さんは大学の先生をやってらしたんだけど、辞めた理由として大学が優れた人材を排出するって言い出して、
その人材人材言い出して、それが違うなって思ったらしいんですね。
人間を育てたい、人間を教育する場だと思ったんだけど、人材を育てるって言われて、
その人材を育てたいわけじゃないと思ったっていう、確かにと思って、
私も人材という言葉はよく使う、よく出てくるんですけど、あんまりどうにも好きになれないなと思っていて、
人材の材を、財産の材、財務の材って書き換えたりするのも嫌いなんですね。
適材適所とかも、人を木材みたいに言って嫌だなってちょっと思ってたんですけど、だからすっきりしました。
これを読んで、優れてたり悲でたりっていうことを競うんじゃなくて、競う必要はなくて、
自分の魂を信頼するっていう人がいいですよね。
自分の魂を信頼できるっていうことが幸せであり強さなのかなと思ったりしました。
エピソードの締めくくり
さて今日は若松英介さんのあなたが言わなかったことをご紹介させていただきました。
愛音さんの心に何か灯る言葉があるといいなと思います。
さて、もう今年の水曜日の夜はあと2回になってしまったというびっくりですね。
ちょっと来週はですね、最後の面接なんかもあったりして収録できるかなって感じなので、もしかしたらちょっとお休みしちゃうかもなんですけど、
年内あと1回なんとか配信できるといいなと思っています。
皆さんも気づかしくなってきているかなと思いますが、どうぞ温かくしてお過ごしください。
愛音さんリクエストありがとうございました。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室では、リスナーの方からのお便りをもとにおすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介しています。
リクエストはインスタグラムのアカウントバタヨムからお寄せください。
お届けしたのは講談社のバタヤンこと川端理恵でした。
また水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。
おやすみ。
14:54

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